中高生のネット利用のトラブルと問題点


5.子ども達を脅かすネット上の犯罪・トラブル

法的知識がないのは非常に危険

 

ネット依存というのはインターネット上のさまざまなトラブルと関係しています。しかも、依存度が高くなるほどトラブルに巻き込まれやすく、また起こしやすい。これはインドア型もモバイル型も変わりません。

具体的には「不正アクセス禁止法」「青少年保護条例」「出会い系サイト禁止法」「名誉毀損」「プライバシーの侵害」「著作権」「ワンクリック詐欺」「フィッシング詐欺」「ウイルス」「スパイウェア」「ファイル交換」「IPアドレス」「デジタル万引き」「サイバー犯罪」「迷惑メール」…などの法律や条例です。私が子ども達に講演する際には、これらのネットを一覧にしてPowerPointで見せながら、「ネットって楽しいだけじゃない。法律とかネット上の犯罪とかそういうものについて何も知らないまま使うのは危険なんだよ。だから、もしネットやスマホをするなら、一応こうしたことを知っていなければいけないよ」という話をします。たとえば不正アクセス禁止法などは、これに違反して補導された小学生も実際にいますから、子ども達にとっても無縁ではありません。

 

この事件は、小中学生の子どもが、ネット上で知り合った人に「アイテムを増やすよ」などと上手いことを言って、あるソーシャルサービスのIDとパスワードを聞き出した。で、その他人のIDとパスワードを使ってサービスにログインした後、パスワードを変えてしまって被害者がアクセスできないようにして、いろいろなものを盗んだ、というものです。補導された子達は、自分のやっていることが不正アクセス禁止法に触れる違法行為とは全く知らずに、犯罪の加害者になってしまったわけです。こういう事例を見聞きするたびに、ネットに関する知識がないのは非常に危険だと思います。それほど詳しいものでなくても、あらかじめ知識があるのとないのとでは、その後トラブルに遭う可能性が大きく違ってきます。

 

ネット上には多くのリスクがある

 

学生がネットを使う上で直面しうるトラブルやリスクをざっと挙げてみると、「犯罪」「いじめ」「出会い系」「成績の低下」「通信費用などの課金の問題」「間違った情報」「心的被害」「依存」「視力低下」「うつ症状」といったものがあります。

 

このうち、犯罪は被害者・加害者のどちらにもなりうる危険があります。先ほどお話しした不正アクセス禁止法を例に取ると、平成24年に逮捕者のうち、なんと約4割が未成年でした。

 

出会い系は、以前から非常に大きな問題でしたが、最近は特にSNSを通じて子どもに接触してくる大人が多くなっていて、アプリを通じて性犯罪に巻き込まれる子どもの数が急激に増えています。

 

「間違った情報」というのは、情報の取捨選択に関わるリスクです。ネットを長時間利用する人ほど、新聞やテレビのニュースを見ずに情報を得るのはネットだけというケースが多いのですが、そのときに何が正しいのか・正しくないかの判別を誤ると、嘘やデマなどに支配されてしまう恐れがあるということです。

 

そして「心的被害」は、誹謗中傷を受けて精神的に傷つく危険です。これには、心の準備なしに恐ろしい映像を見てしまって精神にダメージを受けたというケースも含まれます。困ったことに、そういうものをいたずらでネットの掲示板に貼り付けたり、動画サイトにアップしたりする人がいるのです。 

リスクには、このほかに「アダルトな情報」もあります。アダルトな情報というのは、勉強が全く手につかなくなってしまうくらい強力に子どもを支配しますから、ネット上のリスクとしてはとても大きなものです。簡単に無修正のものを見ることができるような状況は、座視していてはならないと思います。 繰り返しになりますが、こうしたトラブルやリスクについての知識を全然持たないまま子どもがネットに触れるのは、本当によくないことだと私は考えています。

 

プロフィール

遠藤 美季(えんどう みき)

 

任意団体エンジェルズアイズを主宰。アニメーションカメラマン、PCインストラクターを経て、保護者・学校関係者に対し子どものネット依存の問題の啓発活動を展開するため、2002年にエンジェルズアイズを立ち上げる。PCインストラクターをしていた頃、生徒やインストラクター仲間のなかに、インターネットをしているときに人格が普段と一変してしまう人を見たのがきっかけ。2005年からはWeb上での普及啓発活動を、2006年からは保護者、子どもからのメールによる相談の受け付け、助言も行っている。ネット依存は予防こそが決め手であるが、当然ながら、相談者にはすでにネット依存に苦しんでいる人たちや家族からのものも多い。
講座内容のひとつ「情報モラル講座」ではトラブルを避け快適なネット利用についてアドバイスも行っている。またアンケートによる意識調査や取材などを通じ、現場の声から未成年のネット利用についての問題点を探り、ネットとの快適な距離・関係の在り方について提案している。
※情報教育アドバイザー