連載! 緊急interview

今、なぜ情報入試か

10月26日 秋のジョーシン(@早稲田大学)を前に

今の高1生から、既に始まっている!! 教育の新時代(第2回)

~「受験中心ではなく、社会につながる、人を育てる教育」が

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部/研究科 情報理工学専攻 教授、

情報入試研究会共同代表、情報処理学会 情報処理教育委員会委員長

筧 捷彦先生


筧 捷彦先生
筧 捷彦先生

今、なぜ教科「情報」入試なのか。社会を動かし、仕事でも生活でも不可欠な「情報」の知識やスキル。高校の必修科目となっているにもかかわらず、受験教科の知識と比べて、その知識・スキルは、劣っているようです。


情報入試研究会が2013年5月から実施した「第1回大学情報入試全国問題#002」を解説する、情報処理学会主催のシンポジウム「高校教科『情報』シンポジウム2013秋」(通称ジョーシン)が、2013年10月26日早稲田大学で開催されます。次回の学習指導要領への展望をも持つ、日本の情報系分野の中心的な有識者として、早稲田大学の筧 捷彦先生に、「なぜ今、情報入試なのか」を中心に教育改革への強い思いを語っていただきました。

 

第2回 2013年5月18日の第1回模擬試験の状況は?

新学習指導要領の目玉は「情報」。入試実現を目指す

 

情報入試研究会では、高校以下の教育への影響力の強い大学入試に絞って、具体的には、情報入試の実施が活発に行われるようになるための環境整備としての支援活動を行っていこうと考えています。


それは、ちようど今年度から新学習指導要領が施行され、同じく今年度から明治大学が、そして2016年から慶應義塾大学が入試出題することなどもあるので、3か年である程度、その環境を整えようと考えています。そして昨年、試行試験問題を作り、そして2013年5月18日に、実際の受験者を集めた模擬試験を実施し、実際に問題作成が妥当だったのか、問題制作者・受験者それぞれの立場からの視点で分析し始めました。


これを来年、再来年と進めることができれば、出題方法や内容も、的確なものができてくると思われます。そしてそれを元に各大学が、工夫を凝らして大学入試を実施していけるようにもっていきたいと考えているのです。

 

 

2回目は、反省点も踏まえ2014年2月実施へ

 

今回は、東京、名古屋、大阪、福岡の4会場で実施しましたが、受験者総数は30人台でした。受験者資格は特に設けなかったので、高校生だけでなく、大学院生、高校や専門学校の教員とさまざまな方が受験しました。教員で受験された方は、授業で教えていることが大学の教育とどうつながるか、ということに関心があったようです。


この会場とは別に、5つの高校で約60人の高校生が受験しました。高校会場の場合は、学校で採点し、結果を私達に送ってもらう、ということにしています。協力してくださった高校には、解答をすべてレビューして正解や採点基準と共に返していきます。今後も、協力してくださる高校を募集しています。レビューでは成績分布もつけて戻せるので、学校単位で参加していただくと、ありがたいですし、生徒の指導にも生きると思います。

 

今後は、より多くの人に受験してもらえるように、受験の方法を柔軟にしていくことも検討しています。例えば、「情報の科学」の部分だけもの受験も可、というふうにです。試験時間も、本来は90分ですが、授業時間内で実施するために60分でもよい、あるいは個別に相談し対応していく、などもできるように検討いたします。来年2014年2月を予定している次回は、最低限まずは、高校でも受験しやすいように45分×2にしたいと考えています。

 

このようにして、どのくらいの正解率か、間違えやすいところはどこかなど、問題の内容やレベルの情報を蓄積していきたいと思っています。そのためにも、フィードバックしていただく際には、「どの問題が難しかった、どの問題が簡単だった」などのコメントもいただいています。それらの紹介は、まとめてサイトでも、行っていくようにしたいと思います。

 

なお、問題と解答、およびそのような情報も含めた分析結果は、まず10月26日の情報処理学会の「高校教科『情報』シンポジウム2013秋」(@早稲田大学)で詳しく解説したいと思います。

 

 

入試問題だけでなく、検定試験としても検討

 

次回は、参加校も増やして、できましたら受験者も1000人を目指したいと思います。そして、各大学が入試問題を作る際に、この模擬問題をひな形にしていただき、それぞれに合わせた工夫をし、よりよいものを作っていただければと思います。


既に、複数の大学で、情報入試についての検討を教授会レベルにまで上げ行っていると聞いています。この模試を、英検やTOEICのように、ある種、検定のように位置付け、AO入試のサーティフィケイト(受験証明)とすることも検討していただいている大学もあるようです。

 

将来は、そのような活用方法も含めて、高大接続の文脈で、高校の卒業試験や、大学の新入生全員に受けさせるプレイスメントテストでの使用も可能だとも思っております。TOEICにはIP( Institutional Program)テストがありますが、学校全体で受験して、各人のスコア判定ができるようにするのもよいと思います。

 

さらに、情報の試験ですから、当然のことながらPCを使うことも視野に入れていかなければならないと思います。それができれば、実際のデータの取り出し方や処理の仕方、WEBの仕組みなど、より実際の場面に即したおもしろい問題が作れると思いますが、そのような環境も視野にして進めていければと考えております。

 

3回目では、5月18日に行った模試の問題はどのようなものであったのかお話します。

 

【連載】

◆高校教科「情報」シンポジウム2013秋(ジョーシン)が開催されました
【主催】情報処理学会情報処理教育委員会・初等中等教育委員会
【日程】2013年10月26日(土)東京都新宿区 早稲田大学西早稲田キャンパス
【内容】「第1回大学情報入試全国模擬試験」の解説、パネルディスカッション 「情報教育の重要性と情報入試」、萩谷昌己(東京大学)、辰己丈夫(早稲田大学)先生方の講演も。
 

→シンポジウムの詳細はこちら:高校教科「情報」シンポジウム2013秋

→関連する記事はこちらから:ジョーシン特集