緊急企画! 来春スタート 慶應義塾大 新「情報」入試特集

直前対策講座  参考試験徹底分析・解説編    

「ITパスポート試験」とセンター試験の「情報関係基礎」で短期間でも対策可能! 

あとは問題をしっかり理解し、数学Aの確率の知識で

〜高2生の挑戦から慶應「情報」入試の突破の鍵を探る〜

 

神奈川県立柏陽高等学校 間辺広樹先生

間辺広樹先生による14年度版の参考試験解説はこちら

14年・15年の参考試験・全問題・解説動画はこちら

  情報処理学会(情報処理教育委員会)・情報入試研究会協力 対策動画

   ミスiD2015近藤那央さんによる「『情報』科目で慶應SFCを目指そう!」

   その他、文系大学生が挑戦! 記事など、直前対策に。

 

■新課程入試としての「情報」 

〜試験会場で、情報と数学の選択ができる

2013年から新たに始まった、高校の「情報」。ITを避けては通れない社会の現実を表す「情報の科学」と「社会と情報」の2科目による必修の教育は、その履修者の卒業する今春16年以降の大学進学者においてこそ、その成果も現れてきます。その先駆けとなるのが、この2月に実施される慶應義塾大学(総合政策・環境情報の各学部)が行う入学者選抜試験。その試験は、高校の「情報」を、今後さらに盛り上げてくれる存在になるでしょう。ですから、関心のある受験生には、ぜひ知って欲しいし、挑戦しても欲しいと考えます。

 

そこで、2015年7月に行われた参考試験に対する、高2生の試行結果も参考にしつつ、解説を行い、そこから予想とこれからの学習方法についてまとめてみました。数学(範囲はⅠ・Ⅱ・A・B)で受験しようとしているものの、今ひとつ不安な受験生には、試験会場で選択できる問題なので、今からでも参考にしていただき、対応できるようにしていただくのも一法です。

 

 

■特別な勉強なくても解ける! 〜「理系の7割が選択したい」

 

神奈川県立柏陽高校は、毎年多くの卒業生が、慶應義塾大学へ志望、合格し(13年56人、14年58人、15年36人)、入学していくことから、今回試行した生徒は実際の受験生と近い学力層にあると言えるでしょう。ただし、情報系を志望している生徒はその一部であり、2年生を対象に実施したことを考えると、情報系の知識は、当然劣ります。したがって、ここで示す結果はこれまで情報(「情報の科学」<1年1単位、2年1単位>)の授業で学んできた知識と、常識的な判断や文脈を読み取って解けた結果になります。つまり、特別な勉強をしなくても、この程度は解けそうだ、ということにもなるのですが、このラインと実際の合格ラインとの差分をいかに埋めるかが、入試対策になると考えてください。

(これからの対策については、最後にまとめました。)

 

なお、授業で、この慶應の参考試験の問題に生徒に臨んでもらうことは、情報の入試の普及につながるのみならず、情報教育の充実にも貢献できると考え、柏陽高校では、昨年度14年の参考試験も、一部、1年生(120名)に、情報の授業で挑戦してもらいました。その際、受けた高校生の感想では、1年生でもあり、また準備なくても正答率が高かったこともあり、理系志向の生徒は7割、文系志向でも5割が、入試科目として選択したいとの意見でした。またその試験問題の意味はわかり易く、また情報は「将来、社会に出て役に立つ教科」として、英語に続いて2番目に上げる生徒がいました。

 

「参考試験は難しかったですか?」

「問題の意味がわからない箇所がありましたか?」

「将来、社会に出て役に立つ教科はどれだと思うか? (3つを選択)」

14年参考入試の詳細解説(3問分)と、柏陽高校での高校生アンケートの詳細分析はこちら  

 第3問:待ち行列やプロジェクト管理などの題材を含んだ統計的なグラフの問題

 第4問:2進数とグラフ理論の問題

 第6問:プログラミングの問題

上記3問も含めて、14年参考試験全6問の解説はこちら

 

今回は、2015年度の参考試験を解いてくれた2年生(35名)の結果をもとにしたものですが、昨年14年の解説・分析も合わせて読んでいただき、どうか学習対策に活かしていただきたく思います。

 

 

■問題の内容 〜落ち着いて問題を読めるかも鍵

 

2015年にSFCで実施された参考試験は、第1・2問と第3・4問に分けられ、それぞれを100点満点として40分以内で解くことを想定されていました。各問題の概要は以下の通りです。

 

第1問:情報セキュリティ、SNS、知的財産権保護など情報モラルを扱った問題

第2問:集合、論理、2進数等を扱った数学的な問題

第3問:インターネットのパケット送受信に関する問題

第4問:プログラミングを用いたシミュレーションの問題

 

一般入試「情報」参考試験(2015年7月30日実施)の問題・解答・受験生の得点分布はこちら

 

 

一言全体の特色を述べると、レベル的には第1・2問は主に知識が試される基本的な問題で、第3・4問は主に論理的な考え方が試される応用的な問題と言えます。

 

また、知識や論理的思考力の差が結果に表れるような問題がある一方で、文脈から正答が判断できてしまう問題もあるため、落ち着いて問題を読めるかという能力も試されていると思われました。

 

 

■全体の傾向 

〜セキュリティと2進数問題で押え、ネットワークとプログラミングに挑戦を!

 

試験の試行は4つの問題を柏陽高校の授業時間である65分で実施しました。実際の参考試験では、第1問(セキュリティ)と第2問(2進数等の数学的問題)を40分、第3問(ネットワーク)と第4問(プログラミング)を40分で併せて、80分が想定されていますから、15分程短い時間での実施になりました。それでも多くの生徒は、解けたかどうかは別にして、時間内に終えていました。

 

第1・2問と第3・4問を別々に100点満点として採点した結果の平均と標準偏差は表1の通りです。

 

表1 第1・2問と第3・4問の結果

  平均 標準偏差(※)
 第1・2問  53.7点 13.0点
 第3・4問  31.3点 17.4点

※偏差値10ポイント分に相当

 

また、その際の分布を10点刻みで表すと以下の図1と図2のようになりました。

図1 第1・2問の合計点分布
図1 第1・2問の合計点分布
図2 第3・4問の合計点分布
図2 第3・4問の合計点分布

この結果から、やはり、第1〜2問は比較的得点しやすく差も出にくいが、第3〜4問は得点しづらく、できる生徒とできない生徒との差が出やすいことがわかります。同様の傾向は、実際にSFCが行った実施結果[3]からも見てとれますが、その分布から柏陽高校の結果の方が、平均が高いことと、第3・4問ではSFCの結果が右に歪んでいる(つまり得点を取れている生徒が少ない)のに対し、柏陽高校では一様に分布していることが違いとして特徴的でした。

 

第1・2問と第3・4問の相関図を調べると図3のようになりました。相関係数は0.45でしたので、強い相関があるとは言えません。特に、下位7人の層を除けば、ほぼ相関は無いと言えます。

 

これらのことから、基本問題中心である第1・2問で着実に点を取ることを前提として、応用問題中心である第3・4問で高得点を取れるかどうかが合否の分かれ目になると予想されます。例えば、柏陽高校の上位10名を合格と仮定するならば、合計点で100点以上、少なくとも第1・2問は65点以上、第3・4問は35点以上が必要である、と言えると思われます。

 

図3 第1・2問と第3・4問の合計点分布
図3 第1・2問と第3・4問の合計点分布

■問題毎の解答傾向・解法解説 〜差がつく「プログラミング」を中心に

 

ここでは、問題別に、解答傾向、注意点、学習対策、そしてとりわけ差がつくと見られ、今年度も出題が予想される第4問の「プログラミングによるシミュレーション」の問題を中心にその解法を解説したいと思います。

 

 

【第1問】情報セキュリティ、SNS、知的財産権保護など情報モラルを扱った問題

〜知識を問う選択式問題は日常用語も多い

 

第1問は用語や説明文を選択肢の中から選ぶ知識問題で、小問9問で構成されていました。日常的に使っている用語や概念を扱った問題は正答率が高く、そうでない問題は正答率が低い傾向があるようです。正答率を図4に示します。 

図4 第1問の小問別正答率
図4 第1問の小問別正答率

例えば、「SNS」「コンピュータ・ウィルス」「著作権」は高校生にとっても馴染みある内容で、常識的な判断や文脈から正答がわかるでしょう。実際にそれを扱った5,6,7は正答率が高くなっています。一方で、「標的型攻撃」「ソーシャル・エンジニアリング」は高校生にとって馴染みある用語とは言えず、それを扱った1,2は正答率が低くなっています。

 

この結果からもわかるように、知識問題に対しては情報モラルや情報セキュリティでよく使われる用語を押さえておくことが大切です。まずは、教科書に太字で書かれている用語とその意味を押さえましょう。また、問題の中には総務省の情報通信白書[※]や国民のための情報セキュリティサイト[※]から一部を引用して使われたものもありました。従って、これらを一読し、使われている用語をチェックしておくだけでも効果があると考えられます。

[※]総務省: 情報通信白書

[※]総務省: 国民のための情報セキュリティサイト

 

 

8の知的財産権に関する問題は正答率が低いですが、「著作権は登録制ではない」という基本(または常識)を押さえておけば解けた問題です。著作権法を含めた知的財産権に関わる法律や、個人情報保護法、不正アクセス禁止法など法律とその解釈に関わる問題も、過去の参考試験から基本的な問題が出題されると予想されます。従って、法律関連も教科書を中心に基本を見直すことが大切です。

 

 

【第2問】集合、論理、2進数等を扱った数学的な問題 

〜ド・モルガンの法則、補数、暗号

 

第2問は情報技術の基礎となる数学的な問題を扱っています。解答番号は10〜50と多いですが、そのいくつかがセットになって1つの答えとなる形式で、(ア)論理演算(10〜15)、(イ)2の補数(16〜33)、(ウ)共通鍵暗号(34〜50)の3つの小問で構成されていました。正答率を図5に示します。

 

図5 第2問の小問別正答率
図5 第2問の小問別正答率

論理演算を扱った(ア)の10-15はド・モルガンの法則という数学の授業でも学ぶ内容を扱っているため、情報や数学で繰り返し学んできていれば容易な問題です。また、不等号を用いて大小関係を聞いているために答えを予測しやすい問題でした。正答率も高くなっています。

 

(イ)の16から33は2進数の計算問題です。ビット数と表現できるパターン数との対応や、2進数と10進数の変換などは、基本中の基本と考えてしっかりと理解しましょう。問題の中では補数を扱った問題(19-33)の正答率が低くなっていて、補数の理解が容易ではないことを物語っています。このことは補数が「差がつくポイント」であると意識して、しっかりと理解しましょう。補数とは何か、どうやって求めるか(ビットを反転して1を足す)、補数を用いるメリット(加算回路を使って減算ができる)などを押さえましょう。変換や計算の方法はパターン化されているので、「ITパスポート試験」の過去問などを利用して問題に慣れることが効果的です。また、14年の参考試験では、2進数による小数の表現が出題されています。合わせて確認しておきましょう。

 

(ウ)の34から50は排他的論理和を用いた共通鍵暗号の問題です。計算自体は容易ですが、そもそも暗号通信とは何か、なぜ排他的論理和をとることで暗号が作れるのか、など暗号技術の仕組みを押さえておかないと問題の意味が理解できず、誤ってしまうでしょう。42-49は問題文に示されている2進数同士で排他的論理和(0111000+10101010)をとればいい「だけ」ですが、正答率が31%と低くなったのは、暗号の仕組みを十分に理解していなかったことが原因と考えられます。暗号の方式には共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式があります。今回出題されなかった公開鍵暗号についても、公開鍵と秘密鍵の使い方や、鍵を共有しなくても暗号通信ができる仕組み、その技術を実現する数学的な背景(大きな素数の積は容易に分解できない)などを押さえておくことが必要です。

 

 

【第3問】インターネットのパケット送受信に関する問題 

〜難問だがパターン化された問題も多い

 

第3問は、インターネットのプロトコルやパケットに関する問題です。問題文と共に、サーバーとクライアント間で送受信されるパケットの仕組みが状態遷移図で示されていて、問題文とその図を照らし合わせながら進めていくことが想定されています。問題文が長く、また、始めて目にするであろう言葉も多いため「難問」でした。解答番号は1〜9で、(ア)用語を聞く知識問題(1〜3)、(イ)流れを読み解く問題(4〜5)、(ウ)流れを読み解く問題(6〜9)の3つの小問で構成されていました。問題が進むごとに正答率が低くなったことが特徴的でした。正答率を図6に示します。

 

図6 第3問の小問別正答率
図6 第3問の小問別正答率

(ア)では、IPやIPVer4、IPVer6といった知識の有無を聞いています。これ自体は難しいものではありません。しかし、この問題の中で「SYN,SCKという情報を1つのパケットとして送信する」や「相手からの返答が受信できない場合は、状態を変えずに直前の送信パケットを再び送信する」といった記述があります。この意味が理解できなければ、(イ)や(ウ)が解けない流れになっています。また、問題文の中に「知らなくても解ける」ための種が撒かれている訳ですが、「E/A」「SYN」「ACK」などは多くの生徒にとって始めて目にする文字列でしょう。これらがサーバーとクライアントの間で送受信されている様子が状態遷移図に示されている訳ですが、そこには「CLOSED」「LISTEN」など更に言葉が追加され、ややこしさが増していきます。

 

(ア)で示された仕組みを踏まえて、(イ)→(ウ)と進んでいくわけですが、おそらくは多くの生徒が問題の意味をあまり理解できなかったと思われます。正答率は、4-5が25.7%、6-7が17.1%、8-9が8.6%と問題が進むにつれて低くなりました。

 

実際にこのような問題が出たら、解けない受験生が続出すると想像しますが、逆にこのレベルの問題を解けるようにすることで、合格に大きく近づくでしょう。ネットワークの知識は必須です。14年度もIPアドレスとサブネットマスクから利用可能なアドレスを割り出す問題や、通信速度と通信量の問題が出題されました。計算の仕組みは独特なものが多いですが、パターン化された問題が多いので、後でも紹介しますが、「ITパスポート試験」や「基本情報技術者試験」の過去問からネットワークに関する問題を拾って解いてみると良いでしょう。

 

問題は解けるように作られています。焦らずじっくりと問題文を読んで考え方を整理し、1問でも多く解答するようにしましょう。

 

 

【第4問】プログラミングを用いたシミュレーションの問題 

〜差がつきやすいが、変数に注目し、大きな流れで捉える

 

第4問は期待値を求める数学的な問題と、それをコンピュータで計算させるためのプログラミングの問題を扱っています。解答番号は10〜39で、(ア)期待値(10〜13)、(イ)プログラミング(14〜39)の2つの小問で構成されていました。14年に比べると数学的な背景も、アルゴリズムも難度を増した「難問」と言えます。生徒の正答率も全体的に低く、改めてプログラミングが難しいことを示す結果となりましたが、合否を分けるのはここでどれだけ加点できるかに関わっているのではないか、と思われます。正答率を図7に示します。

 

図7 第4問の小問別正答率
図7 第4問の小問別正答率

(ア)は期待値の問題です。点の移動する法則が始めに定義され、原点との距離を絶対値を使って求めます。1年時の数学で学んだ内容で解けるはずですが、定義が複雑なため期待値(10-13)の正答率は25.7%と低くなりました。

 

(イ)ではこの期待値をシミュレーションによって近似的に求めることを想定したプログラムを作成します。プログラムは日本語で作られていて、流れを読んで穴の空いた箇所に適切な値や数式などを埋め込む形式になっています。5割を越えた正答率の問題がなかったことから、難しさが伺えます。ただし、設問毎に採点されるので、1つでも多く正答するように、部分毎にでも構わないので、解答していくことが必要です。例えば最初の(ア)ができなかったとしても、諦めずにできそうなところから埋めていくべきでしょう。

 

ここで必要なプログラミングの概念は、「変数」「反復」「条件分岐」「乱数」「加算」「除算」です。一度に色々なことを考えてしまうと混乱するので、問題を切り分けて易しい問題へと整理していくことが大切です。考え方の一例をお示しします。

 

全体的な処理としては以下のように、繰り返しを繰り返すという「入れ子」の状態になっています。

 

『「乱数による処理」×100回という試行』×無限回

 

まずは「変数」に注目しましょう。プログラムを見ると、無限回繰り返す試行の回数を n、試行毎に算出される d(100) の合計値を s、点Pの現在位置を表す変数を x として定義しています。これらが「定義されている場所」と「初期化された値」が大切です。変数 n と変数 s は永久に繰り返される処理を通して使われるので、最初にそれぞれ0と初期化されますが、変数xはそれぞれの試行の中で使われるので、それぞれの試行の最初に0と初期化します。(図8の上部)

 

次に、各試行が終わったら、次の試行を行う前に必要なことを検討します。それが、試行回数を増やすこと(変数 n に1を加える)と、点 P の位置を計算し直すこと(変数 s に x を加える)、平均値を表示すること(s/n を計算して表示する)になります(図8の下部)。

 

図8 プログラミング問題の考え方1
図8 プログラミング問題の考え方1

外枠ができたら、内側である各試行の処理を検討しましょう。まず、乱数の処理を100回繰り返す処理をします。次に、どこかで乱数の処理をしなければいけません。変数aの値で処理が分かれているのですから、aに乱数をセットする必要があります。乱数の処理は「{0,1,2}からランダムに選んだ値」しか選択肢にありません。そしてaの値によって処理を分けるのですが、2:1の割合で+と-を分けなければいけないことと、プログラムに「もし変数aの値が〜より大きければ、変数〜に〜を加える」とありますから、 もし変数aの値が0より大きければ、変数xに1を加える」とすればバッチリ目的とする処理ができることになります。このとき、「以上」ではなく「より大きい」とプログラムにありますから、aを1としないようにしなければいけません(図9)。

図9 プログラミング問題の考え方2
図9 プログラミング問題の考え方2

以上、簡単ですが第4問について、変数に着目することと、大きな流れから捉える、という考え方を示しました。プログラミングは他の問題以上に慣れが必要です。ブロック単位で何をしているか検討したり、変数の値がどのように変化して行くかを捉えることも必要です。足し算ひとつとっても人間が行う考え方とは異なる場合があります。その違いを意識して、解くように心掛けてください。

 

 

■ 傾向分析と予想と学習対策

◆ 14年と15年の問題から出題を予想

 

以上、SFC一般入試「情報」参考試験(2015年版)について、解説してきました。大学入試問題ですから一筋縄ではいかない問題もありますが、常識的な判断や数学的な知識を使って解ける問題も多く出題されると予測します。じっくりと問題を読んで理解することが大切でしょう。

 

最後に、2014年版の参考試験も合わせて出題の傾向を分析し、その対策を考えてみます。

 

2014年は以下の6問が参考試験として出題されました。

第1問:スマートフォンの利用、情報セキュリティ、知的財産権など情報モラルを扱った問題

第2問:ネットワークの構成とデータ量や通信速度を扱った計算問題

第3問:待ち行列やプロジェクト管理などの題材を含んだ統計的なグラフの問題

第4問:2進数とグラフ理論の問題

第5問:確率及び統計的推測の問題

第6問:プログラミングの問題

 

そして、2年間の参考試験で共通している問題の内容と形式を以下にまとめました。

おそらくここに書いた5つの傾向は、実際の入試問題でも変わらないのではないでしょうか。

 

 

(ア) 法に関する知識問題(選択式)

(イ) 情報の理論に関する計算問題

(ウ) ネットワークの理論や技術に関する問題(難易度高)

(エ) 確率に関する問題(難易度高)

(オ) プログラミングの問題(難易度高/穴埋め式)

 

 

◆「法」「情報の理論」「ネットワーク」は、ITパスポート試験を徹底的に

 

対策としては、知識問題は情報の教科書や資料集の用語をチェックして、大まかに意味を掴んでおくことも有効ですが、難易度の高いネットワーク(ウ)と確率(エ)とプログラミング(オ)の問題を中心に、分野を絞り、出題の形式に合わせた学習をすることが必要と思われます。

 

具体的に見ていきますと、「(ア)法に関する知識問題」「(イ)情報の理論に関する問題」「(ウ)ネットワークの理論や技術に関する問題」は、能力認定のための国家試験の「情報処理技術者試験」のエントリーレベルである「ITパスポート試験」と、内容やレベルが重なります。そのため、ITパスポート試験の過去問や問題集を使うことで効果的に学ぶことができるでしょう。まずは、問題集を1冊手にしてみて下さい。ぱらぱらとめくるだけでも知識問題で問われるような用語に触れることができるでしょう。ただし、ITパスポート試験の範囲は広いため、そのすべてを学ぶことは現実的ではありません。ここでは、ITパスポート試験のシラバス[※]と照らし合わせて、入試の内容と関連が強い箇所を拾ってみましょう。

[※]IPA(情報処理推進機構):「ITパスポート試験」シラバス

 

 

「ITパスポート試験」はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系という3つの系で出題分野が分けられています。SFC入試との関連が特に強いのは、ストラテジ系の2「法務」、テクノロジ系の1「情報に関する理論」、テクノロジ系の9「ネットワーク」、テクノロジ系の10「セキュリティ」です。まずは、問題集のこの部分を抜き出して徹底的に解いてみましょう。強力な入試対策になるはずです。

 

なお、「(ウ)ネットワークの理論や技術に関する問題」は、今回は出題されていませんが、データ量を計算する問題等も出題されると考えた方がよいでしょう。その際は、桁を間違えたり、ビットとバイトの変換を忘たりする等のミスが考えられますので、気を付けましょう。このネットワークの問題に対しては、さらに「情報処理技術者試験」の「ITパスポート試験」の1ランク上の「基本情報技術者試験」の過去問で、それに関する問題を拾って、予め解いておくことも有効でしょう。

 

 

◆「情報システム」は注目分野。「システム構成要素」の問題は押えておこう!

 

もちろんそれ以外の分野から出題される可能性もあります。実際、ストラテジ系の1「企業活動」やマネジメント系の2「プロジェクトマネジメント」の内容が参考試験に出題されています。従って、これらの分野も問題を解くことにこしたことはありませんが、一度目を通しておくだけでも、試験時に慌てずに済むのではないかと思います。

 

また、これまで出題されなかった分野が出題される可能性もあります。テクノロジ系の3「コンピュータの構成要素」、4「システム構成要素」、5「ソフトウェア」、6「ヒューマンインターフェース」、7「マルチメディア」、8「データベース」は、どれも情報を学ぶ上で重要な分野ですから、配点の高い問題として出題される可能性もあります。特に、4「システム構成要素」は、高校生が日常的に使っている情報機器の仕組みと直結する内容です。SNSやネットゲームはすべてサーバーとクライアントが連携して実現する”情報システム”です。そのような仕組みをきちんと理解して情報機器を使うことができているかどうか、を調べる目的で出題されるかも知れません。

 

 

◆ センター試験の『情報関係基礎』で「プログラミング」を、同じく『数学』で「確率」を、押えておこう

 

「ITパスポート試験」の問題集で十分に対応できないのが、「(エ)確率に関する問題」と「(オ) プログラミングの問題」です。どちらも難易度が高いため、合否を左右する重要な問題と言えます。ただし、確率は数学Aで学ぶ必須の学習分野ですから、センター試験対策など一般的な受験勉強をして、万全の体制を整えて下さい。

 

一方、プログラミングについては、対策が難しいかも知れません。理想的には自分で色々と題材を考えてプログラミングすることですが、入試対策としては時間が掛かり過ぎますね。プログラムが日本語で、なおかつ、数学的な題材を扱っている問題集なども見かけません。そんな中にあって、参考試験のプログラミングの問題に近いのが、大学入試センター試験「情報関係基礎」のプログラミングの問題です。過去問を見ると、日本語でプログラムが書かれていて、数学的な題材を扱ったものもあります。これを解くことが効果的でしょう。「情報関係基礎」を研究・解説するサイト[※]もあるので、いくつかの問題を選んで解いてみることをお薦めします。

[※]センター情報研究室:大学入試センター試験「情報関係基礎」過去問研究・解説サイト

 

 

以上、解説から予想、これからできる学習対策を紹介してきましたが、どうか、参考にしていただき、SFCの新しい入試のスタイルに多くの高校生が、挑戦し、その栄冠を勝ち取ってくれることを期待しています。

 

 

■参考となるWebサイト(再掲)

[1]慶應義塾大学 : 一般入試「情報」参考試験(2014年7月30日実施)の問題等の公開および実施結果について

[2]キミのミライ発見 : 高校サイドから柏陽高校での「慶應入試」の試行

 14年参考入試の詳細解説(3問分)と、柏陽高校での高校生アンケートの詳細分析  

 第3問:待ち行列やプロジェクト管理などの題材を含んだ統計的なグラフの問題

 第4問:2進数とグラフ理論の問題

 第6問:プログラミングの問題

[3]上記3問も含めて、14年参考試験全6問の解説はこちら

[4]一般入試「情報」参考試験(2015年7月30日実施)の問題・解答・受験生の得点分布

 

[5]総務省: 情報通信白書

[6]総務省: 国民のための情報セキュリティサイト

[7]IPA(情報処理推進機構):「ITパスポート試験」シラバス

[8]センター情報研究室:大学入試センター試験「情報関係基礎」過去問研究・解説サイト