事例79

オンラインプログラミング環境Bit Arrowの活用

神奈川県立柏陽高校 間辺広樹先生

Bit Arrowは、東京農工大学・大阪電気通信大学・明星大学の3大学で共同開発している教育用のプログラミング学習環境です。今回は私からは、これを授業にどのように取り入れているかをご紹介します。

 

インターネットにつながる環境があれば、いつでも・どこでも続きができる

Bit Arrowの特徴は、オンラインのweb上でプログラミングを行うことです。インターネットにつながる環境があれば、特別なソフトをインストールする必要はありません。また、作ったプログラムはクラウド上に保存されるため、ユーザー登録をしておけば同じアカウントでどの端末からでも入ることができるので、授業でやった続きを自宅で行うこともできます。

 

私はこのBit Arrowを使っていろいろなプログラミング学習を行ってきましたが、とても快適に授業ができる、というのがありがたいところです。現在使える言語は、C、JavaScript、ドリトルの3つで、それぞれWebブラウザ上で動作します。

 

生徒が間違えやすい部分を補助する機能で、本来のプログラミング学習に集中できる

私の授業では、最初の時間にまずドリトルを使って、プログラムはきちんと書かないとダメであること、書いた順番通りに実行されることを体験させます。そして2時間目からJavaScriptを使います。

 

JavaScriptは教科書にも載っていますが、皆さんもご存知のように、普通にwebブラウザとテキストエディタを使ってプログラムを書くと、エラーを起こしているところがわかりにくい、という欠点があります。しかし、このBit Arrowに載っている教育用のライブラリには、エラーの発生箇所を自動的に表示したり、忘れやすい入力の補助をしたりという機能がついています。また、最近の生徒はPC操作が苦手で画面をいちいち立ち上げるのを億劫がりますが、これだとタブの切り替えだけで済ませられるので、本来の学習活動に集中できます。

 

また、管理者機能も充実しており、生徒の取り組みの状態を一覧表示で見ることができるので、誰がどこでつまずいているか、どんなエラーが出ているかを把握することができますし、自分の授業の振り返りにもなります。

 

QRコードでスマートフォンに取り込み、自作のゲームで遊べる

Bit Arrowにはサンプルのゲームが入っています。最初はボールが1個落ちるだけですが、変数を変えると速さや動きの向きを変えることができます。

 

次に、出てくるボールを増やしてそれぞれ動かすことで、「配列」の概念を教えることができます。また、ボタンをつけてボタンを押すとボールが動くようにすると、関数の概念も身に付きます。このように徐々に複雑な動きを作っていく中で、自分で工夫しながらプログラムを書くことができるようになっていきます。プログラミングの授業は10月から始めますが、7~8回でほとんどの生徒がそこそこのものを書けるようになります。また先ほどお話ししたように、自分のアカウントでログインすれば自宅のPCでも作ることができるので、「続きは家で作ってみよう」ということも可能になりました。冬休みに自分でゲームを作るということも課題に出すこともできます。

 

できあがったゲームのプログラムは、QRコードから自分のスマートフォンに取り込んで動きを確認することができます。これをすると生徒が非常に盛り上がります。友達のゲームで遊んで、「こんな作り方があったのか」という刺激を受けられるのもいいところですね。

 

徐々に複雑な動きを組み立てる中で、生徒が自分で学んでいく

Bit Arrowには、プログラムの書き方や命令一覧のサンプルのサイト(※)がありますので、基本的にはこれを見ればプログラムを作ることができます。自分で何を作りたいかを考えて、どれが使えるかを考え、作りながら学んでいくことができるのです。ですから、私が教えることは実はほとんどなく、生徒に任せる形で行っています。教えなくても、生徒が試行錯誤しながらつかみ取っていく方が面白いと思います。

http://bitarrow.eplang.jp/

 

例えば、サンプルのゲームであれば、最初はボールが1個だけですが、次第にボールの数が増えてきたり、猫が出てきたりと、使えるファイルが増えてきます。同じものでもプログラムによって動き方も変わってきますので、その中で変数の概念を学ぶことができます。この猫がボールにぶつからないようにする、というのであれば「ぶつかった」という判定が必要です。動きを工夫するためにはsin、cosなども使う必要があります。そういったところも自分で考えて作っていけるようになります。授業をきっかけに、家で自分でプログラムを作る生徒も出てきます。

 

作品の評価は、生徒同士の相互評価で行います。「工夫して面白いものができたか」ということが第一のポイントですね。せっかくプログラムを書くのですから、同じ動作をするのであればきれいなプログラムが書けているかどうかを見られればもっとよいと思いますが、それはこれから評価方法を工夫していきたいと考えています。