センター試験国語で出題『キャラ化する/される子どもたち』筆者、筑波大土井隆義先生、入試を語る

~入試問題では問えなかった、若者と教育をめぐる「宿命主義」

vol.3 本1冊読んで、じっくりと「宿命主義」を考えさせる出題はできるか

先生は、生徒たちに読んでほしいのは、第3章の36ページ周辺の宿命主義のところだとおっしゃっていますが、1章にある「自分とは異質のものを圏外に置こうとすること」や、出題された部分の続きにある「外キャラと内キャラの比較」なども読ませたいとは思いませんか。

土井先生によるオーサービジットの様子〜キャラ作りや個性的と思われることなどについて意見が交わされた(2月18日静岡・知徳高校にて)
土井先生によるオーサービジットの様子〜キャラ作りや個性的と思われることなどについて意見が交わされた(2月18日静岡・知徳高校にて)

土井先生:社会学者としては読ませたいですね。ただ、そこが文系・理系を問わずに誰でも平等に出されるセンター試験の国語の問題としてその箇所がふさわしいかどうかは別な話です。そこで問題を作ると、前知識がある生徒とそうでない生徒との差が出てしまうかもしれません。単純な文章の読解力を見るのがセンター試験でしょう。

 

では、先生が、今の宿命主義について、問題文を作るとしたら、どんな問題文を出しますか。

 

土井先生:この本1冊を全部読んでもらわなければなりませんよね。部分抽出ではなくて。それを踏まえたうえでの出題となるでしょう。

 

現代社会の問題になってしまいますが、さらにヘイトスピーチに関する新聞記事を渡して、「この本に取り上げられている宿命主義という考え方を用いて、現代のヘイトスピーチの問題を論じなさい」という問題だったらできると思いますね。

 

ひとまとまりの論文としては最低4000字、原稿用紙400字詰めで10枚くらいは必要だと思いますね。だから半日くらいはかかると思います。

 

あるいは、「あなたはヘイトスピーチの規制法に賛成ですか、反対ですか、その論拠を示してください」という問題もできると思います。立場・意見に対しての評価はしません。そのどちらかの立場に立ってその論拠を論じてください、というものです。

 

そういった問題で、採点のポイントはどんなところになるのでしょうか。

 

土井先生:論理の構成力です。社会科学なので、論理の構成力、きちんと趣旨が一貫しているのか、矛盾はしていないのか、論旨は通っているのか、というのが一番のキモです。そしてきちんと概念を使いこなしているのかどうか、抽象化する能力があるのかどうか、ですね。

 

内容を問わないで、読解力、表現力、論理構成力などがポイントであるとすれば、国語とも言えるわけですよね。国語でそこまでの問題を出していいか悪いかということは気になりますが。

 

土井先生:国語とか社会とか個別の科目を前提とせず、総合科目で行えばいいのですよ。

 

 

オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)
オーサービジットの様子(2月18日静岡・知徳高校にて)

先ほど、「宿命主義という考え方を用いて現代のヘイトスピーチの問題を論じなさい」とありましたが、「宿命主義」と「ヘイトスピーチ」は関係あるのでしょうか。さらには、それは、最近の事件や風潮に中に見られる「内キャラ」の問題になるのでしょうか。

 

土井先生:ヘイトスピーチの元になっている「日本民族万歳」という考え方も、これもある種のキャラ化です。つまり、これは宿命論なのですよ。日本民族であるということは、初期設定された、揺るぎないものにすがることによって、絶対的な安心感を得ることができるのです。日本にいる限りは、日本人であることはマジョリティだから、これはものすごく強いキャラです。それは現代のキャラ化の一つの大きな危うさなのです。

 

小泉総理大臣の時に出た「ワンフレーズ政治(ワンフレーズ・ポリティクス)」などもそうだと思います。文脈を外して単純化して、一言でパンと語り、政治を回していくというスタイルです。

 

「キャラ化」といえば、このセンター試験の問題のネットでの取り上げられ方がまさにそうですよね。この文章の論旨からは関係なく、「リカちゃん」や「やおい」「メイドカフェ」といった単語だけを抽出をして、その単語で盛り上がっています。これは、出題文の文脈とは関係のない部分だけを切り離して、それでいわば二次創作になっているわけです。まさにこれはキャラ的なコミュニケーションスタイルなのですね。

 

◆2016年度 大学入試センター試験 国語

問題

正解

分析<河合塾>

 

◆2015年度 大学入試センター試験 国語

佐々木敦さんの評論文の出た国語問題

正解

高校2年生向けの解説速報講義 動画<河合塾〜菊川智子先生>

分析<河合塾>

 

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ももクロ映画『幕が上がる』を観て

人と人とのつながりこそが、人生の幕を上げる

~日常知としての社会学

⇒本での分析に続いて、実際の行動について「みらいぶプラス」読者の高校生に向けて書いていただきました。

 

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その他、土井先生のこれまでの記事から

 

【みらいぶ・連載】 AKBから読みとく今日の人間関係

第1回 AKBの人気と現代社会

第2回 フラット化する人間関係

第3回 多元化した価値観の交差

第4回 当事者主義の時代の到来

 

【今こそ学問の話をしよう〜東日本大震災 復興と学び 応援プロジェクト】

SAVE IBARAKI~機能停止の大学で学生が起こした奇跡