【授業事例24】

コンピュータを使わなくても、情報活用の実践力を育てられる!

~情報活用の実践力を養うコミュニケーションワーク教材

大阪府立東百舌鳥高校 稲川孝司先生 勝田浩次先生

関西大学総合情報学部 田中亜友美氏


写真左から、稲川孝司先生、勝田浩次先生、田中亜友美氏
写真左から、稲川孝司先生、勝田浩次先生、田中亜友美氏

グループによる問題解決を通して、「情報活用の実践」を体感!

 

今回紹介するのは、学習者が主体的に他者とコミュニケーションを取りながら学ぶ「コミュニケーションワーク」教材です。5-6人一組で、それぞれの手元に配られた情報カードに書かれたことを話し合いながら問題解決にあたるものです。「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達する」という、教科情報の目標の3観点の一つ「情報活用の実践力」を体感する活動です。

 

本校の情報は、「情報の科学」を1年生で行っていますが、教科情報の授業目標が何かを理解させるために、最初の授業でこの教材を行っています。話し合わなければ答えが出ないので、生徒達は夢中になり、10分程度の制限時間を設けて実施しています。

 

昨年の第6回大会では、「1年3組の皆さん集合してくださーい」を紹介しましたが、今年は「野球ゲームの再開」と「家族旅行」、英語版の「Who is my Hero? 」の3問を作りました。すべての問題は下記のCCライセンスになっていますので、是非先生方に使っていただきたいと思います。

 

教材のPDFデータを置いておきます。今後改良を重ねていきたいので、使われた方はご意見をお寄せください。

 

「1年3組の皆さん集合してくださーい」
work1.pdf
PDFファイル 175.3 KB

「野球ゲームの再開」
work2.pdf
PDFファイル 400.6 KB

「家族旅行」
work3.pdf
PDFファイル 502.6 KB

ルーブリックを作り、問題解決に必要な姿勢を生徒に明示する

 

この活動では「こういうことをするのが情報の授業だ」というのを生徒に知らせることが大切です。そのため、今回の教材では「ルーブリック」を考えました。「家族旅行」で言えば、「伝達」「収集」「取捨選択」「発信」の4つの観点についてAからDの評価指標を設け、生徒に授業の振り返りシートを書かせる際に、この観点に沿って自己評価をさせました。

 

 

観点

A

B

C

D

伝達

自分が持っている情報カードの内容を、グループのメンバーに伝えることができた

自分が持っている情報カードの内容をすべて伝え、さらにグループのメンバーに分かりやすい言葉を使って伝えることができた

自分が持っている情報カードの内容をすべてグループのメンバーに伝えることができた

自分が持っている情報カードの内容を、グループのメンバーにあまり伝えることができなかった

自分が持っている情報カードの内容を、グループのメンバーに全く伝えることができなかった

収集

グループのメンバーの話を聞くことができたか

グループのメンバーの話を聞くだけでなく、メンバーから情報や意見を引き出すことができた

グループのメンバーの話を聞くことができた

グループのメンバーの話をあまり聞こうとしなかった

グループのメンバーの話を全く聞こうとしなかった

取捨選択

たくさんの情報の中から、必要な情報を選ぶことができたか

選択したものをどう使うか、見通しを持って選択できた

明確で意味のある理由をもって選ぶことができた

自分なりの理由で必要な情報を選ぶことができた

どれを選択したら良いかわからず、思いつきで読み上げた

発信

自分の意見を、グループのメンバーに伝えることができたか

自分の意見を、分かりやすい言葉を使ってメンバーに伝えることができた

自分の意見をメンバーに伝えることができた

自分の意見をメンバーに伝えることがあまりできなかった

自分の意見を持つことができなかった

これによって、生徒にはコミュニケーションを取り合いながら協働して問題を解決するためには、どのような態度が必要かを明示することができました。

 

ここまでを振り返ると、この活動はコミュニケーションを取る手段としてとても有効でした。制限時間内に問題を解くためには、否応なくコミュニケーションを取らなければならないからです。さらに、「たくさんある情報」から「必要な情報」を選び出す情報活用の流れを意識化することにも役立ったのではないかと思います。

 

これからやりたいこととしては、まず評価についてです。ルーブリックは作りましたが、協働作業をどのように評価するか、考えるプロセスの評価はどうするか、などが必要です。また、教科情報の各単元との関連付けや、「分類する」「推測する」などの思考の方法も視野に入れなければならないと考えています。

 

この問題は、関西大学総合情報学部に協力してもらって作成しています。教員側から教科「情報」でどのような授業を行っているかを学生に伝え、問題を考えてもらいます。これによって、情報の教員を目指す学生に、教科情報の学習目標と学校の現場を知ってもらうことができます。今後、先ほど挙げたような課題も、学生との連携の中で新しい方向性が見い出せればと思っています。