【授業事例10】

情報を活用し情報社会に参画するためにデータベースを科学的に理解する学習

~「社会と情報」でもぜひデータベースの授業を!

近江兄弟社高等学校 長谷川友彦先生


長谷川友彦先生
長谷川友彦先生

2012年に行われた第5回の全国高等学校情報教育研究会で、新課程の「社会と情報」でもデータベースの学習に取り組むべきだ、ということをお話ししました。今回の発表は、昨年の発表後、旧課程の「情報C」でさらに発展させる形で行ったものについてのお話ですが、「社会と情報」でも実施可能な内容であると考えています。私が目指すのは、先進的な授業実践というより、全国のどの学校でも行えるスタンダードなものです。ぜひいろいろな学校で行っていただきたいと思います。

 

技術に踏み込むのではなく、実世界をモデル化するためのものの見方・考え方を養う


データベースというと、「情報の科学」の領域と思われがちですが、「社会と情報」の指導要領の「(4)望ましい情報社会の構築」には、「ア 社会における情報システム」「イ 情報システムと人間」と、『情報システム』という言葉が繰り返されます。これは、情報システムの構築に皆が関わることが必要であることを示しています。


現在、webサービスも情報端末もデータベースが支えています。生徒達には、まずこのことを意識させることが必要です。だからといって、技術の領域に踏み込む必要はありません。検索や関連付けとはどういうことか、という概念がわかればよいのです。そこまでわかっていれば、情報システム構築の上流工程に関わることができるようになります。そこで、実世界をモデル化するためのものの見方・考え方を養う、というのがこの授業の目標です。全55時間の授業時間の中の3時間という小さな実践ですが、非常に有意義なものであると思います。

 


教科書通りの順序で教えて失敗した経験から


実は3年前(2010年度)、最初にデータベースに取り組もうとした時、いわゆるデータベースの教科書通りに「データベースの設計→正規化→関係演算」という順番でやってみましたが、これが大失敗でした。生徒達にとっては、難解な「正規化」に苦しむだけで、その先の見通しが立たないまま、学習に対する意欲が薄れるばかりでした。実習のソフトでMS Accessを使ったのですが、不具合が多くて、本質以外のところで手間取ってしまったのも、一因でした。

 

そこで2年目は、1時間目に「情報システム」の裏にデータベースというものを意識させる座学による学習を行ってから、2時間目に関係演算を通して大量のデータから情報を取り出す実習を行いました。これらを通して、社会で働く情報システムの裏にはデータベースが動いていることへの理解を深めることができました。一方で、用意した手順をなぞる学習の枠を超えることがなく、生徒の中には言われたことをただこなしているだけ、という感もありました。そこから、データベースを活用することで、社会の中でどのように情報が活用されているかを理解できるような実習にする必要を感じたのです。


ここまでが、昨年度の発表で行った実践です。
 

さらに改良を重ねる


そこで、2012年度2月に行った授業が以下の流れです。


[1時間目]

前半に、社会ではたらく情報システムの例を紹介しながら、そこにデータベースやネットワークが関わっていることについて意識させました。


後半は、主にPOSシステムを例に、そこでどのような情報が記録されるかを考えさせました。ここでは、「購入した商品」「購入者」「購入日時」などを導きました。    …(A)
     

次に「購入した商品」について掘り下げて考えました。購入した商品はバーコードを通しますが、バーコード自体には商品の名前や金額等の情報は入っていません。そこで、バーコードと商品に関するどのような情報がひもづけられているかを考えさせました。
ここでは、「商品名」「メーカー」「金額」などを導きました。      …(B)

 

ここまでで、POSシステムに記録される上記(A)のようなデータを蓄積することで、どのようなことが分析できるかを考えさせました。例えば、この店ではどのような商品がどの時間帯にどんな客層に売れているかがわかることで、いつ頃どのような商品を仕入れればよいかがわかること、また年齢や性別による流行を知ることで新商品の開発に役立つことなど、データベースを使った情報活用の方向性も考えさせました。

 

[2時間目]

はじめにデータベースとは何かを、特に関係モデルの概念に重点を置きながら説明しました。
関係モデルに関する実習として、簡単な文章情報を表にまとめることを通して、関係モデルでのフィールド設定の大切さを理解させました。

 

次に、ワークシート上に正規化された「関係」と「関連」を用意し、「関連」からデータを導き出して読み取る実習を行い、「関連」の意味を理解させました。

 

 

 


[3時間目]

3時間目には、「データベースを学ぶオンライン学習教材(sAccessの試作版)」(大阪府立寝屋川高等学校 野部緑先生らの開発)を使って、大量のデータから情報を取り出すことにより、データベースを利用して、情報が様々な形で活用できることを理解させました。この授業の流れは右の図のようにまとめることができます。

 

生徒自身が「情報という授業の総まとめだ」と感じた


この単元の感想を生徒に書かせたところ、「この単元は情報という授業の総まとめのようなものだと感じた」「情報社会で生きていく上で、今まで学んだ情報の授業がどのように役立つのか、ようやくわかった」という感想を書いてくる生徒が多くありました。3時間という短い時間で、データベースの概念を正しく理解させることには限界があるとは思いますが、これらの授業を通して社会の様々な場面で、どのような情報がやり取りされ、活用されているか、ということに気付かせることはできたと感じています。


もし授業時間をもう1時間確保できるのでありは、1時間目で考えさせたPOSシステムとポイントカードを組みあわせることで、POSシステムで蓄積される「購入者情報」の個人情報の取り扱いを考えさせる学習にも発展させることができるのではないかと考えています。

 

※本記事は、全国高等学校情報教育研究会 第6回全国大会(2013年8月9日・10日、京都大学にて)でお話しされた内容です。