高校生がスマホロボット「ROMO」を活用した新しいサービスを企画

 羽衣学園高等学校(大阪) 米田謙三先生


コラボ授業に参加した生徒の皆さん。第2回の授業後
コラボ授業に参加した生徒の皆さん。第2回の授業後

羽衣学園高校(大阪)では、2011年から株式会社ディー・エヌ・エー(以降DeNA)の協力を得て、インターネットの安心・安全な利用促進のための啓発講座を行ってきました。


今年は、今後ますます進むインターネット社会で、ネットを活用して賢く・ゆたかに生きていくために、ネットの闇の部分だけでなく光の部分も焦点を当てよう、ということで、高校生自身が事業会社と協力してより発展的なネットの活用について考える、産学連携のコラボ授業を行いました。

 

今回の授業で使用したのは、エデュケーショナルロボットROMO(ロモ)。iPhone(またはiPod touch)のアプリを頭脳として動きます。本体はiPhoneスタンドにキャタピラが付いた形をしており、また本体前にはライトが付いています。

ROMO は、「地球の探索とロボット宇宙レースのトレーニングのために宇宙からやってきた生き物」という設定になっており、使い始めにROMOのプログラミングを習得するための「ミッション」というコンテンツで、指示に従いながら与えられた課題をクリアしていくことにより、前進・後進やライト点灯、表情を変えるなどの動作が利用可能になります。 このミッションに対して、様々な動作モジュールを組み合わせることで、「成長」していきます。

また、ROMOはiPhoneのディスプレイに映しだされた顔の表情と、首=スタンドの傾き、ライトの点滅などを組み合わせていろいろな「感情」を表現することもできます。これとiPhoneのカメラ機能を組み合わせて、相手の表情を認識して表情を変えたり、物を追いかけて動き回ったりすることができるようになります。


→ROMO HPはこちら http://www.romotive.jp/

 

羽衣学園高等学校(大阪) 米田謙三先生
羽衣学園高等学校(大阪) 米田謙三先生

この授業では、DeNAとROMOの日本総代理店であるセールス・オンデマンド株式会社(以降セールス・オンデマンド)が支援して、スマートフォン上でのアプリの仕組みを理解しつつ、プログラミングや簡単なアプリ作成、ROMOの機能を活用した新サービス・新商品の企画立案を行いました。

 

[授業の展開]
2年生の1クラスで、「社会と情報」の授業の一環として行いました。企業の人が来校する活動は下記の3回です。

 

■第1回2014年9月11日 
DeNAカスタマーサービス部の西雅彦氏から今回のコラボ授業の趣旨の説明を、セールス・オンデマンド新規事業開発部の小暮武男氏からROMOの紹介を受けました。その後、グループに分かれて実際にROMOを動かしてみて、機能や動き方の特徴を体験しました。


■第2回 10月9日 
DeNAのエンジニアの末廣章介氏から、スカイプでシステム開発やプログラミングの現場について説明を受けました。その後、DeNAの西氏から、顧客ニーズの把握や類似商品との差別化など、実際の企業で新商品の開発や企画立案を行う手順の話を聞き、参考にしながら自分達の新商品を考えていきました。


 

■第3回 2月19日 
グループ毎に自分達が考えた「ROMO」の機能を活用した新サービスのプレゼンを行いました。生徒同士でも、プレゼンを評価し合いました。その後、DeNA賞、ROMO賞など企業の表彰と講評を聞きました。

第2回から第3回の授業までの間に、グループ毎にROMOの機能を使ってどのようなサービスができるかを考えました。また、10月末には、国際交流で来校したインドネシアのSMP Negeri 1 Bogor Schoolの生徒達が各グループに入って、一緒にディスカッションを行いました。

生徒達は、ROMOの「移動する」「カメラで撮影した色を覚える」「ビデオ通話で会話する」などの基本的な機能を組み合わせて、誰かの役に立つ新しいサービスを考えます。その過程で、ROMOの動作設定を体験することを通して、スマホ上でのアプリの仕組みを学んでいきます。

 

[生徒が発表した企画]
ロボット本体の動きは、前進・後退、回転、iPhoneを傾けるなどの移動がメインで、それぞれが距離や速さ、角度などを設定できるようになっています。そこに、iPhoneの表情やカメラ、会話などのアクョンを組み合わせた命令を作ることで、複雑な動きが可能になります。生徒達は、どのようなサービスを作るかを考えながら、アプリにどのような命令を入れたらよいかを考えていききます。




プレゼンで生徒から出てきた企画には、簡単な掃除や、道案内などロボットとしての機能を活用したもの、カメラ機能と組みあわせて「鍵や定期券など失くしやすいものを写真に撮っておき、失くなった時にROMOで探す」「外出先からペットの様子を見る」、アラーム機能を使って「起き上がって止めるまで逃げながら鳴り続ける目覚まし時計」、会話機能とデータ蓄積機能使って「必要なカリキュラムを与えてくれる家庭教師」など、様々な機能を組みあわせたものなど様々なものがありました。この中で、「逃げ回る目覚まし時計」は、既にセールス・オンデマンドが主催する開発者向けイベントにて試作した経緯があるとのことで、「ニーズがあることがわかったので、将来、商品化を目指したい」というコメントをいただきました。

 

DeNA賞を取ったチームは、これらの機能の他に、会話や表情の機能を使って医療現場でのリハビリに使うことを提案しました。ROMOのシンプルな機能は幼児や高齢者にも操作しやすく、使いながら「成長」していくので、子どもの保育・高齢者介護への応用は大きな可能性を持っています。この点に注目したことが評価されました。


ROMO賞を取ったチームは、ROMOの機能を
「楽しむ」=健康状態の管理に使う、カラオケのように使う、道案内をする、音声認識で通訳をする
「家庭で役立つ」=リアルタイム中継でペットの様子を確認する、なくしたものを探す、防犯に使う、勉強を教える
「事故から人を助ける」=災害の予測をする、自己や災害に遭った人が助けを呼ぶ、ケガをした人のリハビリのサポートをする
「環境改善」=道路に落ちたガムを見つけてはがす、タバコの吸い殻を拾う、エアコンの温度管理をする  

などのカテゴリーに分け、それぞれについて「使う人が笑顔になれる機能」を考えていったこと、その中で、これまでのアプリ開発の中ではこれまで出て来なかったような使い方が提案されていたことが評価されました。

 

[取材を終えて]
2012年度からの学習指導要領の改定で、中学校の技術・家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修になり、プログラミング を使ってロボットを走らせたりブザーやライトを点けたり、という活動が行われるようになりました。このための様々なロボットキットも発売されています。


中学校の活動はロボットを動かすこと自体が目的ですが、今回のコラボ授業ではロボットを動かして何か人のためになるサービスを考えるということが狙いになっています。そのプロセスで、企業の方から実際の商品開発の現場で用いられる、対象の絞り込みや顧客ニーズの分類などの手法について学ぶことは、「社会と情報」の目標である「情報社会における問題の解決」につながるものとなっていました。


情報の授業では機器の操作やプログラミング言語の習得など、テクニカルな部分で個人差が出やすくなりがちですが、グループで話し合って考えをまとめることを通して、生徒達がお互いの考えを聞き合い、グループの意見としてまとめ上げる工夫をしている努力が見て取れました。

DeNAの西氏と、DeNA賞受賞チームのメンバー
DeNAの西氏と、DeNA賞受賞チームのメンバー
セールス・オンデマンドの小暮氏と、ROMO賞受賞チームのメンバー
セールス・オンデマンドの小暮氏と、ROMO賞受賞チームのメンバー