高校教科「情報」シンポジウム2014春in関西「ジョーシンうめきた」

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早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部/研究科 情報理工学専攻 教授、 情報入試研究会共同代表、情報処理学会 情報処理教育委員会委員長

筧捷彦先生


筧捷彦先生
筧捷彦先生

昨年2013年6月に、政府が「世界最先端IT国家創造宣言」を出しましたが、ということは、国としてはすでに行動計画表ができあがっていて、2020年までには人材育成が全部回ることになっているということです。立派なものですよね(笑)。

 

細かいところはさておき、ここで最も問題なのは、お役所が作ったからかもしれませんが、「人材育成」のところに「教育環境のIT化」ということが一生懸命書かれています。今でも「これでもか」というくらい入っていますが、もっと徹底して入れますと書いてあるのです。そうやって目一杯入れた後、どうなるのだろうという方が心配です。具体的に何をするのかというと、企業との連携をやりますとか何とかというだけですね。それよりも、教育内容に関わるものとして直接書かれているのは、「小・中学校でのプログラミング等のIT教育の充実を図る」というところです。2020年までに全国展開が行われることになるということは、既に動いてなければいけないのですが、もう動いているのですよね?よく分かりませんが(笑)。国はこういう絵を描いた。描いたからには、何かが行われるはずなのですが、その「行われるはず」というところがとても心配だ、というのが私の正直な感想です。

 

「世界最先端IT国家創造宣言」工程表
「世界最先端IT国家創造宣言」工程表

私が一番気になったのは、小・中・高でIT教育の充実といった時に、誰が・何を・どのくらい・どういうふうに展開すれば可能になるのかということです。その意味で、つい2~3年前までは、プログラミング教室とかロボット教室といったものはほとんどなかったのに、今は至るところにできています。そうい うところで、小学生のうちからプログラムを作ったり、スマホのアプリを作ったりしています。社会全体が一斉にすごい勢いで変わろうとしているので、これも当然の成り行きだと思います。

 

ということは、あと2、3年もすれば、小中学校時代にそういう経験をしてきた生徒が高校に現れるわけです。その時、教科「情報」はどうなるのかというのが、実はとても心配です。そういう意味で言うと、まさに10年後の(正確には、もう10年ありませんが)、指導要領改訂の話だけでは済まなくなります。良いか悪いかは別にして、少なくともこの国が用意した行動計画の中に「プログラミング」という言葉が入ったことは、とても偉大だと思っています。しかし、具体的に教わる小中学生というターゲットははっきりしていると思いますが、誰がどうやって教える枠組みを作り、展開するのかというところが見えていない、というところが一番心配です。ということで、この大学入試の話も含めて、今が踏ん張りどころだと思いますし、知恵の出しどころだと思いますので、皆さん一緒に頑張っていきましょう。よろしくお願いします。

 

 

高校教科「情報」シンポジウム2014春in関西(2014年5月17日 大阪工業大学うめきた

ナレッジセンター)講演