情報処理学会第76回全国大会 イベント企画

セッション「大学入試における『情報』入試のあり方と可能性」

情報入試研究会の活動と情報模擬試験

中山泰一先生 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 准教授


中山泰一先生
中山泰一先生

情報入試はなぜ必要か

 

高校に教科「情報」がありながら、どれだけ学んできたかということがきちんと評価されてきていない。それを大学の情報入試で行うべきではないか、ということで、その実施に向けた取り組みをしています。具体的には、2013年5月と2014年2月の2回、情報入試の模擬試験を実施しました。情報処理学会情報処理教育委員会と情報入試研究会が情報入試に取り組んでいることは、昨年末新聞でも紹介されました。その時の見出しには「情報教育の危機」とあります。

 

情報教育がなぜ必要なのか。コンピュータやネットワークなどの情報技術が広く使われ、重要な役割を担うような社会になってきたこと。過去における「もの」や「金銭」に代わって、「情報」が大きな価値を担うような社会になったことが挙げられます。これに対して、高校の教科「情報」には、情報活用能力の3目標というものがあります。

 

・情報活用の実践力

・情報の科学的理解

・情報社会に参画する態度

 

情報処理学会的な立場から言えば、「情報の科学的理解」をもっと学んでほしいところですが、「情報活用の実践力」も「情報社会に参画する態度」ももちろん重要です。しかし、大学入試で「情報」に関する素養が問われていないので、結果的に高校時代に定着していない。コンピュータや情報技術を用いると、何ができて何ができないかをきちんと理解した上で、これらの技術を適切に使いこなし、問題解決しながら社会生活を送っていくということこそがゴールなのであって、エクセルやパワーポイントを使えるようになりましたということではないのです。もちろんそのことも大事ですが、これらを使ってどういうふうに情報を発信していくのかということの方が重要であると思います。

 

衝撃の村井発言~情報入試研究会の試み

 

情報処理学会の情報教育に対する取り組みはたくさんありますが、ここでは情報入試の模試の実施を経緯とともに紹介したいと思います。情報処理学会の情報処理教育委員会と初等中等教育委員会は、毎年1、2回、高校教科「情報」のあり方を考えるシンポジウム、通称「ジョーシン」というものを開催しております。ことの発端は、3年前の2011年10月の「ジョーシン2011秋」。「情報処理学会は情報教育にどう貢献できるか」というテーマでシンポジウムが開かれた時のことでした。

 

その時、出席された慶應義塾大学の村井純先生が突然、「教科『情報』を大学入試にしないと、情報教育の発展にとって非常に危機的なことになる」と発言されたのです。時まさに、2年後の2013年4月から教科「情報」の新しい学習指導要領が始まる、というタイミングでした。新しい学習指導要領で学んだ高校1年生は、3年後に大学に進学する。その時には情報入試をしていなければならない、そのための準備をまさに今からしておかないとダメだと、村井先生は熱弁を振るわれたわけです。

 

村井発言はどれだけ我々に衝撃を与えたことか(笑)。しかし、これはやはり重要な問題だということになり、2012年に村井純先生、早稲田大学の筧捷彦先生をはじめ8名の大学教員が、任意団体「情報入試研究会」を作ったのがそもそもの始まりです。


2012年3月3日に、「情報入試フォーラム」を開催しました。そこで実際に入試で情報の問題を出した大学の関係者をお招きし、意見を伺いました。またその時点で、私たちは過去の情報入試問題の取りまとめを行い、「情報入試問題研究フォーラム2012資料集」を作成しました。詳しくはホームページをご覧ください。

http://jnsg.jp/?page_id=108

 

その後情報入試研究会は、情報入試の試作問題を作成し、2012年10月の「ジョーシン2012秋」で公開しました。こちらも情報入試研究会のホームページでご覧いただけます。


2013年3月には「情報入試フォーラム2013」を開催し、そこでいよいよ情報模試を実施するという宣言をしました。その時、情報処理学会の理事会が全面バックアップをしてくださることになり、任意団体の情報入試研究会と車の両輪のような形で、情報処理教育委員会の下に「情報入試ワーキンググループ」が設置されたのです。こうして2013年5月18日に第1回情報模試が、今年2014年2月に第2回情報模試が実施されました。

情報模試を実施した結果報告

 

第1回情報模試の概要をお話しします。試験会場は関東(東京、神奈川)、中部、関西で行い、無事実施されました。受験者数は全体で80人、うち高校生は47人です。高校生以外の一般受験者には、高校の教科「情報」の先生が多くおられます。試験時間は90分。受験者の最高点は99点、最低点16点、平均点53.0点。高校生の最高点は90点、最低点16点、平均点34.1点でした。


点数の分布のグラフを見ると、一般受験者と高校生の二つの山のある分布となりました。全体に高校生の点数は低いのですが、90点を取っている生徒もいる。教科「情報」が特別に得意で、情報に尖がった才能を持った高校生もいるということがわかります。

 

この模試については、サイト「キミのミライ発見」でも紹介していただきました。第1回情報模試の各問題が、2013年からの新学習指導要領のどこに対応しているのかがわかる表を作り、さらにクリックすると実際の問題を見ることができます。

→詳しくはこちら

 

今年2月に実施された第2回情報模試は、2月22日に個人受験、2月10日~3月15日に団体受験と、二つに分けて実施されました。個人受験は高校生7人を含む16人でしたが、団体受験は約1000名に上りました。第1回よりも大幅に受験者数が増え、感謝しております。今回は、45分×2セットの受験もOKとして行いました。これは、高校の先生方から「45分の試験であれば授業中にも実施できる」と強い要望があったことを踏まえての改訂です。

 

現時点で、第2回情報模試はまだ速報の段階で、集計は終わっていません。ただ今回も高得点をマークした生徒がおりました。今後は、こうした情報が得意な高校生をどうやって掬い上げていくかが課題と思いますし、それは情報処理学会にとっても実は大切な問題ではないかと思っています。

 

第2回の情報模試の結果の詳細は、来る5月17日の「ジョーシンうめきた」でご報告いたします。皆さんもぜひご参加ください。

 

ジョーシンうめきた→くわしくはこちらから