アクティブラーニングとICTが創り出す学校教育の未来

日本最大級の教育機材の祭典 NEW EDUCATION EXPO2015

「NEW EDUCATION EXPO 2015」が、東京・お台場のTFTと、大阪・天満橋のOMMで開催されました(東京会場:6月4・5・6日、大阪会場: 6月19日・20日)。


20回目となる今年は、教育業界における最新のトレンドと教育現場の活用事例をテーマに、最新の教材・教具や設備、ソリューションの展示が行われました。今年は、学習指導要領でも大きく打ち出されたアクティブラーニング型の授業活動のための教材・教具や備品の展示が目を引きました。またデジタル機器は、生徒が一人1台端末を持つことを見据えて、電子黒板等との連動を高めていました。

■セミナーレポート
東京会場・大阪会場合わせて100余のセミナーが開催されました。教育改革、学力向上、アクティブラーニング、学校の環境つくり、大学入試改革等など旬のテーマが並び、どの会場も大盛況でした。
20回目となる今回、ここ数年継続して同じテーマで行っているセミナーでは、昨今の急速なICT化の進展の影響について取り上げた発表もありました。


今回は、この中でデジタル教材を使う上で大きな課題になる著作権問題を扱ったセミナーをレポートします。

→くわしくは下記から

教育現場の「著作権」が危ない~授業・教員研修の課題とその解決策~
佐賀県における教育情報化推進の取組 ~デジタル教材の取り扱いを中心に
 佐賀県教育庁 副教育長  福田孝義 氏
全学必修知財教養科目におけるアクティブラーニング→反転学習→完全e-learning学習に伴う映像のタイムシフトを考える
 山口大学 国際総合科学部 木村友久先生
教育現場の「著作権」が危ない ~高等学校の現場、教員養成の立場から
 早稲田大学大学院 教職研究科 客員教授/早稲田大学高等学院  武沢 護先生
パネルディスカッション
 パネリスト:
 佐賀県教育庁 副教育長 福田孝義氏
 山口大学 国際総合科学部 木村友久先生
 早稲田大学大学院 教職研究科 客員教授/高等学院 武沢 護先生
 コーディネータ:
 日経BP社 教育とICT Online 編集長 中野 淳氏

■企業展示レポート

キーワードは『一人1台学習端末』と『アクティブラーニング』

内田洋行プロダクト企画部部長 畠田浩史さん
内田洋行プロダクト企画部部長 畠田浩史さん

約120社が幅広いジャンルの商品を並べた、今回の企業展示の特徴について、内田洋行プロダクト企画部部長の畠田浩史さんにお話をうかがいました。

今年の出展の大きな特徴は、「一人1台学習端末」に向けてのコンテンツと学習環境のための商品やソリューションが大きく増加したことです。今回初めて出展した企業もいくつかあります。


もう一つが「アクティブラーニング」です。今回の学習指導要領の改訂で「アクティブラーニング」が取り上げられたことにより、今までは教える内容についてのものだった指導要領が、初めて「教え方」に言及したことになります。しかし、アクティブラーニング自体が定義しにくいものなので、それをどのように定義するか、ということを各社が模索している状況であると言えましょう。


フューチャークラスルーム・ライブの様子
フューチャークラスルーム・ライブの様子

アクティブラーニングの環境整備のためのフューチャークラスルームの導入は、今までは大学が多かったのですが、最近は小中高での導入も出てきましたので、フューチャークラスルームを使った体験授業も対象とする年齢層や教科の幅が広がりました。

教具・教材で言えば、例えばクリッカーは今までもアクティブラーニング用のデバイスとしてよく使われていましたが、今回出展されているものには、スマホアプリやwebクリッカーも出てきています。サービスがハードからソフトへと広がってきていますね。


また、デジタル教科書は今年4月から学習者用が本格的に発売されたこともあり、個別学習用の内容や機能がますます充実しています。


学習用端末は、一人1台時代に向けてコストがかなり下がってきています。初中等教育でタブレットを使うのには、よりわかりやすい学習につながるようにという目的があります。一方で、学校で一斉に導入するとなると、行政がその費用を負担することになります。その予算をどう取るか、というのが目下の問題でしょう。

現在、初中等教育でICT化がいちばん進んでいるのが小中学校です。高校は、どうしても大学受験の問題があって、学習効果の点でなかなかこれぞというものが出ていないので二の足を踏んでいる感があります。


しかし、佐賀県のように生徒が全員タブレットを持ったり、受験指導にしても民間企業が提供する受験勉強用のアプリも出ているので、ICTを使った受験勉強という事例が徐々に蓄積されてきていると感じています。また文部科学省の方でも、高大接続や入試への外部テストの導入など、動きが出てきています。こういったことが積み重なって、高校のICT利用の普及の糸口になっていくとよいと思います。

またプログラミング教育は、今後確実に、もっと手厚く学ぶ動きになってくると思います。それに伴って、プログラミングを生かした活動につながる3Dプリンタやロボットなども、今後増えてくるのではないかと思います。


■展示の中から

[電子黒板、プロジェクター]
一人1台タブレットを持って活動することに合わせて、生徒一人ひとりの端末の画面を一斉に投影することができる機能を前面に出している展示が目立ちました。また、シート型電子黒板や従来の黒板に併設する形で投影するもの、黒板に取り付けたユニットとPCをワイヤレスで接続して電子黒板のように使えるものにするものなど、今ある備品を活かして場面や用途によって使い分けられるようにするモデルも目立ちました。各社とも現場の先生の意見を取り入れて、ツールバーを改良したり、反応速度をアップしたりするなど、より使い易くする工夫をはかっていました。

 

[採点システム]
ICT化の進展や学習ポートフォリオの導入等でより重要になってくるのは、生徒の成績管理です。単に答案に○×をつけて返却するだけでなく、設問別・観点別・分野別に採点結果を蓄積し、集計・分析することができれば、クラス全体に対しても個人に対しても、よりきめ細かな指導が可能になります。


今回出展された採点システムには、択一式だけでなく、記述式の設問に対しても使えるものがありました。また、レポートや論文で問題になるコピペ対策のシステムも展示され、大学や高校の教員の関心を集めていました。

 

[ネオスマートペン]
先生が作ったワークシートを、プリントツールを使って普通の紙に印刷するとスマートペーパーのプリントになります。この紙にスマートペンで手書きすると、書いたものがリアルタイムでデジタル化され、タブレットで見たり電子黒板に転送されたりすることができます。


もとのワークシートは手書きで作ったものでもよいため、ワードやパワーポイントが苦手な先生でも簡単に使うことができます。また、書きながら議論したことや説明したことの音声も、書いた文字や図と一緒に収録して、あとで動画として見ることができるため、つまずいたところを何回もやり直すことも可能です。デジタルとアナログの長所を融合し、「書く」ことの大切さを伝えられる教材です。

 

[充電・電源管理、アクセスポイント]
一人1台学習端末を持つことになると、その充電や同期、移動も大きな課題になります。なるべく場所を取らず、スムーズな操作性をアピールする展示が見られました。


また、教室内・校舎内のネットワーク環境の整備については、アクセスポイントやルーターを前に、自校の具体的な規模や設備を示しながら熱心に話を聞く先生方が目立ちました。

[理科教材]
ニュースでも紹介されていたのが、電気を通すインク=導電インクです。ふつうのサインペンと同じタッチで回路を描くことができ、LED電球を光らせることができます。銅線の接続やハンダ付けを使わずに、複雑な回路を簡単に再現することができるので、電流の流れ方を板書感覚で説明することができます。

■「何を」ではなく、「なぜ」が問われる時代へ

今年で20回目となるNEW EDUCATION EXPO。理科教材や副読本の展示が中心だった、というスタート当時のお話をうかがうと、教育現場とともにそれを取り巻く産業構造もまた、大きな変化を遂げたことがわかります。医療や通信機器など様々なメーカーが、これまで培った技術を学校用の教材という大きなマーケットに転用してきています。まさに至れり尽くせりの商品やサービスが手軽に入手できるようになり、教員の工夫次第で授業のあり方もますます変わっていく期待感があります。

デジタル教材の最大の利点は、個人の能力に合わせた展開と、学習履歴であると言われます。同じ教科書を使っても、個々の学習レベルに応じて最適な問題を渡すことが可能ですし、一方で一人ひとりの得意なところ・苦手なところ、中長期的な成長もデータで残ります。各自の手元を一斉に見ることができるので、複数の生徒のつまずきを一度にチェックすることもできます。つい10数年前まで、先生方がのどから手が出るほど欲しかったデータが、労せずして手に入る仕組みが整いつつあります。


これからの教育に携わるすべての人に求められるのは、そこで得られたデータにどのように対応し、活用していくか、ということです。一部の気になる生徒だけでなく、クラス全員に的確に対応するための知識やスキルも必要になります。


電子黒板やデジタル教材を使えば、生徒は顔を上げ、注目も集まります。しかし、それだけで理解が進んだり、アクティブラーニングが成功したりするわけではありません。自分の考えを科学的に、あるいは論理的に言語化する難しさは、ICT機器を使ったからといって、全員が簡単に乗り越えらえるわけではありません。むしろ、これまで以上に授業設計や指導力が問われることになるでしょう。
何でもできる時代だからこそ、どのような力を育てたいか、なぜその教材や機器を使うのかを明確にすることがより必要になってくることを感じました。