オンラインイベント教科「情報」これからの一年 大学入試に向けた取り組み

「情報」入試の最新動向

河合塾教育研究開発部 澁田琢磨

国立大では「情報Ⅰ」はほぼ必須受験に

「情報」入試の最新動向についてお伝えします。スライドは2025年度入試の国公立大学における大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の設定状況をグラフにしたものです。

 

国立大学では96%が「情報Ⅰ」を必須受験としており、「他教科との選択」および「利用しない」とした大学はごく一部に留まっています。

 

一方、公立大学では対応が分かれました。「他教科との選択」とした大学は、現行の入試において課している教科数が少なく、科目選択ができる大学で、新課程入試で選択科目の中に「情報Ⅰ」を加えたケースが多くなっています。

 

 

個別の大学の状況につきましては、「栄冠めざして臨時増刊号」をご参照ください。また、本誌掲載以外の情報は河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」(※1)、および「新入試ナビ」(※2)でご覧いただけます。こちらもあわせてご活用ください。

 

※1 https://www.keinet.ne.jp/

※2 https://www.kawai-juku.ac.jp/exam-info/cnt/exam-correct/

 

 

国公立大「情報Ⅰ」の配点比率は学部系統・地区により特色あり

続いて国公立大学における共通テスト「情報Ⅰ」の配点比率について見ていきます。

 

6教科8科目を課す大学の総合点は素点で1000点ですので、「情報Ⅰ」の素点(100点)の配点比率は10%になるわけですが、実際に各大学が配点比をどのように設定したのかを集計したのがスライドの円グラフになります。

 

配点比を10%未満とした大学が58%で最も多くなっており、次いで素点と同じ比率である10%とした大学が33%となっています。配点比を10%以上とした大学は全体の8%に留まる結果になりました。

 

 

学部系統別、地区別に見た共通テスト「情報Ⅰ」の扱いを表にまとめたのがこちらの(→下の)スライドです。

 

まず学部系統別についてですが、文系では「文・人文系」で配点比を低く抑える傾向があるのに比べて、「社会科学系」では配点比を高く設定する大学の割合が高くなっています。「教員養成」系では、他の系統と比べて素点利用の割合が高くなっています。

 

次に理系学部です。こちらは理学系、医薬保健系で配点比を抑える傾向があるのに対し、工学系、農学系では配点比の高い大学の割合が高くなっています。文系・理系とも、学部の研究内容と教科「情報Ⅰ」との親和性が配点比にも反映される結果となりました。

 

スライド下段の表が地区別に見た配点比のまとめです。地区によって大学数は異なりますが、こちらも傾向が分かれる結果になっています。

 

 

国立難関10大学の「情報Ⅰ」配点は対応分かれる 

国立難関10大学(※3)の配点状況についても見てみましょう。

 

※3 難関10大学:旧帝国大(北海道大・東北大・東京大・名古屋大・大阪大・京都大・九州大)・一橋大・東京工業大・神戸大

 

北海道大では共通テスト「情報Ⅰ」の受験は必須ですが、得点化はせず、成績同点者の順位決定の際にのみ「情報Ⅰ」の成績を活用するとしています。

 

東京大は合計点が1000点、うち「情報Ⅰ」は100点(配点比10%)で素点通りとなっています。ただし、東京大の場合はこの1000点を110点に換算します。現行の入試では900点を110点に換算しますので、「情報Ⅰ」に限らず、各科目の配点比は現行よりも若干下がる形になります。科目別の点数で言うと、100点が約12点に換算されていたところが、11点になるということです。

 

一橋大では社会学部を除いて高めの配点比に設定されています。今年度新設された「ソーシャル・データサイエンス学部」も配点比16.0%と高く設定されています。

 

東京工業大では配点比は10%で素点通りですが、東京工業大はそもそも共通テスト自体が第一段階選抜のみで利用する方式となっています。

 

東北大・名古屋大・大阪大は全学部で配点比が10%を下回っています。名古屋大は5%程度、大阪大は理学部で3.2%、工学部で7.7%と多少のばらつきがあるものの、全体的に低めの設定です。

 

京都大・神戸大・九州大は学部によって対応が分かれました。

 

(注)12月6日に東京大学の配点比が公表されたため、講演時からスライドの内容を更新しています。

   あわせて個別の大学の補足資料も追記しました。

   尚、最新情報につきましては大学公表資料にてご確認ください。

 

 

大学・学部別配点状況① 東北大学

国立難関10大学のうち、配点状況が特徴的な大学を2校ご紹介します。まずは東北大学です。

 

スライドは共通テスト、個別試験それぞれについて、学部別に各科目の配点を記載したものです。ご覧の通り、学部ごとに共通テストの合計点は異なりますが、「情報Ⅰ」は一律で50点の配点になっています。

 

補足ですが、東北大学は2025年度入試より他教科の配点および総合点も大きく変更になっています。

 

例えば経済学部では2024年度入試の共通テストと個別試験が650: 900であるのに対し、2025年度入試では1100: 1800となるなど、全学部で満点値が大幅に上昇しており、共通テストと個別試験の配点比は、現行の入試よりも個別試験の比率が高くなっています。より実力差がつきやすい入試になることが予想されますので、注意が必要です。

 

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大学・学部別配点状況② 神戸大学

続いて神戸大学の配点状況です。スライド内、緑の枠線で囲った箇所にご注目ください。

文系学部でも、社会科学系の学部では10%を超える配点をしているところもあるのが特徴です。

 

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理系学部のうち、理学部、医学部の状況をまとめたのがこちらの(→下の)スライドです。

 

理学部物理学科では「情報」の配点は5点となっており、配点比も1.2%と極端に低くなっています。これは例えば本番で「情報」が80点だった生徒の得点が4点に、60点だった生徒が3点になるということです。20点差が僅か1点差に縮まってしまうわけです。

 

一方、医学部医療創生工学科(スライド下段の緑枠部分)では配点比が14.3%と、理学部、医学部の中では突出して高くなっています。

 

医療創生工学科(仮)は2025年4月に新設予定の学科で、学問分野で言うと医工学にあたります。医療機器の開発を目的とした、医工融合型の学科になりますので、工学部の素養も求められることから「情報Ⅰ」の配点比が高くなっていると考えられます。

 

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理系の他学部をまとめたのがこちらの(→下の)スライドです。

 

ご覧の通り、工学部、システム情報学部、農学部はいずれも10%を超える高い配点比となっています。システム情報学部(仮)は2025年4月に新設予定の学部です。情報系の学部ということで、神戸大の中では最も配点比が高く設定されています。

 

神戸大学の場合、学部・学科別の配点比は概ね「学部系統別」の配点比の傾向に沿う形になっていると言えるでしょう。

 

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以上、国立難関10大学について見てきました。

 

現状では、「情報Ⅰ」を得点化しない大学や、極端に配点比を低く設定する大学・学部が注目されやすいこともあり、生徒が「どうせ配点が低いから」と「情報Ⅰ」を軽視してしまうことが懸念されます。

 

実際には大学・学部によって配点比は大きく異なりますし、配点比が低いからと言って学習しなくても良いということにはなりませんので、生徒には自身の志望大の入試制度をしっかり把握したうえで、バランス良く学習を進めるよう促したいところです。

 

 

「情報Ⅰ」の配点比率が高い大学の特徴①

「情報Ⅰ」の配点比率が高い(20%を超える)国公立大学をまとめたのが次のスライドです。

 

受験科目が少ないために相対的に各科目の配点比が高くなる公立大学で、「情報Ⅰ」を選択科目に含める受験方式を採用している大学が大半を占めています。

 

「情報Ⅰ」が得意な生徒にとってはそれを活かした受験ができる一方、選択科目ですので、苦手な生徒は「情報Ⅰ」の入試利用を回避できます。

 

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「情報Ⅰ」の配点比率が高い大学の特徴②

こちらは「情報Ⅰ」の配点比率が高く、かつ「情報Ⅰ」が必須の大学、つまり情報を回避できない受験方式の大学の例です。

 

広島大学情報学部の後期、広島市立大学の情報学部の前期・後期、岩手県立大学のソフトウェア情報学部の中期は、いずれも情報系の学部であり、かつ入試方式も限定的になっているのが特徴です。情報系の学部への進学を考えており、情報が得意な生徒にとっては受験しやすい方式だと言えるかと思います。

 

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私立大学 共通テスト利用入試における「情報Ⅰ」の設定状況

最後に私立大学の共通テスト利用における「情報Ⅰ」の設定状況についてもお伝えします。私立大学は同一の学部・学科でも複数の受験方式を設ける場合がありますので、合計は100%を超えています。

 

私立大学についてはまだ未公表の大学も多いですので、今後の動向を見る必要がありますが、全体的に「情報Ⅰ」は選択科目として利用できる形に設定している大学が多くなっています。必須とするのは3%ですので非常に少なくなっています。

 

 

以上、「情報」入試の最新動向をお伝えいたしました。2025年度入試は、教科「情報」導入初年度ということもあり、科目設定や配点において慎重な姿勢を見せる大学が一定数ある一方で、「情報」に関心がある生徒・「情報」が得意な生徒の入学を期待する大学・学部では、入試で積極的に活用しようという姿勢が見られる状況になっています。

 

今後の動向については引き続き注視する必要がありますが、大学における数理・データサイエンス・AI教育の推進や、来たるべき未来社会の姿を考えるならば、「情報」の学び自体の重要性が減じる可能性は低いと言えます。

 

入試は選抜試験ですので、「情報」も含めた試験の点数で合否が決まります。つまり生徒の進路が決まります。河合塾としては、生徒が、入試の先を見据えた「情報」の学びを通じて、入試にも対応できる学力を身に付けることできるよう、引き続き学習支援、情報提供を行っていきたいと考えています。

 

尚、以下のスライドは参考資料になります。今後変更になる可能性もありますので、最新情報については大学公表資料にてご確認いただきますようお願いいたします。

 

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オンラインイベント 教科「情報」これからの一年 ~大学入試に向けた取り組み~