New Education Expo 2023

情報入試をめぐる動き

河合塾教育研究開発本部 富沢弘和

はじめに、教科「情報」と入試をめぐる、この間の動きをまとめています。

 

1997年からセンター試験で「情報関係基礎」が課されていますので、「情報」は20年以上出題されています。ただ「情報関係基礎」は、大学の利用方法が利用者の制限をかけることが多く、受験者数は非常に限られています。これ以降、2016年には慶應義塾大学が個別試験で「情報」を出題するといった動きもありましたが、入試で「情報」が出題される印象は薄いでしょう。

 

共通テストでの「情報」の出題が話題となりはじめたのが、2019年ころでしょうか。2020年の11月には共通テスト「情報」(検討用イメージ)が作成され、新聞報道もされて話題になりました。

 

そして、2022年の1月に国立大学協会が「情報Ⅰ」を基本的に使う方向性を出しましたので、国立大学を志望するのであれば「情報」を受けなければいけない、そんな雰囲気に急激に変わってきたと認識をしています。

 

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共通テスト「情報」を大学はどう活用するのか?

 

新課程入試となる2025年度入試の共通テストから「情報」が出題されます。

 

大学入試が大きく変わるときは、少なくとも2年前までに受験生に入試科目を周知する、という「2年前ルール」があります。国立大学では、左の円グラフに記載のとおり、3月末時点で、数大学を除き、おおむね公表が済んでいる状況です。ただ大学により、配点は未公表にするなど一部の公表にとどまるところもあります。

 

私立大学は、まだ3月の終わりの時点では3分の1の公表状況でした。ただし、メジャーな大学については公表されていますので、その動きを見て他の大学も追随する流れになるでしょう。

 

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現在、国立大学の一般選抜では、共通テストは5教科7科目を課すという方針が示されています。そこに「情報」を加えて6教科8科目にするというのが国立大学協会の方針ですが、最終的な判断は各大学が行うことになっていますので、実際に、課す、課さない、あるいは配点の割合などは大学にゆだねられています。

 

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具体的にどのような活用方法になるのか、国立、公立、私立と分けてまとめています。

 

国立、公立についてはこのあとのスライドで紹介します。

 

私立大学は、もともと、一般入試では複数の入試方式で入試を実施していますので、そのうちの一部の方式で共通テスト「情報」を必須にする動きはあるかもしれません。ですが、必ずしも「情報」を受けなければその大学に出願できない、ということはないでしょう。

 

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こちらは、国立、公立の一般選抜の前期日程での共通テスト「情報」の利用方法です。

 

募集区分の割合で集計したものになりますが、先ほどの国立大学協会の方針にのっとり、必須としている国立大学は97%です。一部、選択科目としての利用や課さないといった大学もありますが、もともと予想されていたとおりの動きを示しています。

 

一方、公立大学は大学によって対応が分かれています。エリアによって同じような動きを示しているということもありません。半分弱の大学が必須科目として利用とする一方で、選択科目として利用、あるいは課さないという大学も相当数あります。

 

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こちらは、国公立大学の共通テスト「情報」の配点の設定状況をまとめたものです。

 

大学入試センターが設定する共通テスト「情報」の配点は100点です。従来の5教科7科目で900点満点ですので、ここに100点をプラスしますと合計1000点となります。大学入試センターの配点をそのまま活用すると、1000点分の100点、要は1割が「情報」になります。その1割という配点比率で設定された大学は、実は38%にとどまり、配点比率をそれよりも下げる大学が現状は多いようです。

 

なかには、北海道大学や徳島大学のように、点数としては活用せず、最終的な総合判定だけで利用する、といった大学も出てきていますので、最初は少し様子を見ようかなという大学の動きと認識しています。

 

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国公立大学の共通テスト利用科目数の変化

 

最終的に国公立大学の共通テストの利用科目がどうなったのかというと、国立大学は1科目増えて6教科8科目とする大学が8割です。

 

公立大学は先ほど申し上げたとおり大学によって対応は分かれています。もともと、科目数が大学ごとに異なっていますので、以前の科目数にプラス1科目にしている大学が多いようです。

 

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われわれが危惧しているのは、こちらのスライドのような状況です。

 

もう20年前の話にはなりますけれども、当時、国立大学はセンター試験の必須科目数が5教科6科目でした。それを7科目に増やしたのが2004年度、2005年度の入試です。このときは、大学によって科目を増やすタイミングが2004年と2005年で対応が分かれました。当時は、結果として国立大離れのようなことが起き、センター試験の科目数が増えることを嫌った受験生が一定数いたと考えています。

 

今回共通テストが5教科7科目から8科目に変わったとき、同様のことが起きると、結果として、受験生にとっては不幸な話です。もともと考えていた志望校をはなから諦める生徒もひょっとしたら出てくるかもしれません。

 

確かに、今回の教科「情報」の追加により、受験生の負担が増すことは間違いありませんから、そうしたなかでも、受験生が前向きになれるメッセージをこのあと発信していかなければいけないと考えています。

 

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新課程入試以降の個別入試での「情報」出題

 

続いて、個別入試の状況についてみていきましょう。

 

今年の春に行われた2023年度入試で、一般入試で「情報」を課していた大学は14大学にとどまっています。現状では、大学の一般入試で「情報」が課されるという印象は薄いのではないでしょうか。

 

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新課程入試以降にどのようになるのかですが、共通テストで「情報」が課されますので、大学としては個別試験用に「情報」の問題を作成して出題することは負担感もあるため、現状から劇的に増えていくことはないと考えています。ただし、新しい教育課程で「情報Ⅰ」が必履修科目となり、高校生の学ぶべき内容が共通化され、大学にとっては「情報」を出題しやすくなりました。

 

また、高校生の「情報」に対する学びの姿勢も変化していくのではないでしょうか。「情報」への興味・関心を強く持つ高校生は今後増えていくことは間違いありません。その動きの1つとして、最近、情報系の学部は受験生に非常に人気が高まっており、大学でも設置が増えています。

 

「情報」への関心が高まることにより、入試で「情報」を活用したいという受験生も増えていくと考えています。こうした雰囲気の変化が出てくると、大学で「情報」を出題していく流れが少しずつ出てくるでしょう。「情報」に興味、関心を強く持っている生徒を取りたいという意識から、一般入試、あるいは総合型、推薦型入試で課す大学が徐々に増えてくると思っています。

 

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すでに2025年度入試において、個別入試で「情報」出題を公表している大学がこちらのスライドです。

 

広島市立大学の情報科学部では、一般選抜の後期日程の個別試験で「情報Ⅰ」を必須にする入試を実施すると予告をしています。共通テストでも「情報」を課していますので、結果的に「情報」が900点満点中500点となります。これは「情報」に重点を置いた入試を行うのだ、という受験生へのメッセージだと感じられます。こういった大学の動きも出てきています。

 

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2025年度共通テスト「情報」に向けて

 

こちらは、共通テストの「情報」の試作問題等の公表状況をまとめています。

 

これまで、2020年11月に「情報」試作問題(検討用イメージ)、2021年3月に「情報」サンプル問題、2022年11月に試作問題「情報」が公表されました。

 

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河合塾でもこの「情報」を分析して、その分析内容をホームページ等で公表していますので、ぜひご参照ください。

 

https://www.kawai-juku.ac.jp/exam-info/research/

 

https://www.keinet.ne.jp/teacher/media/guideline/backnumber/2022.html

 

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さて、最後に、共通テスト「情報」について、河合塾が高校の先生方を対象に行ったアンケート結果をご紹介させていただきます。

 

こちらは、共通テスト「情報」の指導を、どのような場面で行う予定ですか、とうかがったものです。基本的には通常の授業内で対応していきたいというお声が多くなっています。

 

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また、共通テストへの対応として必要と思われるツールについてうかがいました。最も多かった回答として「模擬試験」というお声をいただいています。

 

河合塾は、共通テストに対応した模擬試験を実施していますが、来年の2月に実施する現高2生を対象とした共通テスト模試を皮切りに、「情報」を出題していきます。受験後も先生方が指導用としてご活用いただけるようなしっかりとした問題を作成していきますので、よろしくお願いいたします。

 

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そして、ご覧いただいている方も多いかと思いますが、河合塾では「キミのミライ発見」というサイトを運営しています。こちらは「情報」の先生方を支援するサイトとして、授業事例や先ほど触れた個別試験の過去問などをホームページ上で公開しています。

 

ぜひ指導等にご活用いただければと思っています。

 

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New Education Expo 2023  セミナー「教科『情報』の大学入試、どう変わる、どう備える」より