情報処理学会高校教科「情報」シンポジウム2022秋

新しい情報科と大学や社会との接続

京都精華大学 メディア表現学部 教授

(一般社団法人)デジタル人材共創連盟代表理事

鹿野利春先生

 

私は、学校の教員から教育委員会、文部科学省、そして現在は、大学教授と今年新しく立ち上げた一般社団法人『デジタル人材共創連盟』(※1)の代表理事を務めています。

 

※1 https://dle.or.jp/

 

 

これからの時代に必要な力とは

社会、あるいは大学との接続を考えるときに、これからの時代にどんな力が必要か押さえておかなければいけません。学習指導要領の内容も、これを見据えてつくられています。

 

こちらは、経団連から出ている提言です。(※2)時代によって必要な力は変わり、次の時代に向けて必要な力を付けなければいけないというものですが、この話はもっと深く考えなければいけません。

 

※2 「Society5.0-ともに創造する未来-」(日本経済団体連合会)

 

 

例えば、狩猟社会は何千年も何万年も続き、農耕社会も何千年も続き、工業社会は数十年続きました。そして、今まさに情報社会が進行中ですが、この進化のスパンがだんだんと短くなっています。

 

具体的にいえば、工業社会は、学校で学んで、社会に出てお父さんと同じことをしていれば、大体平和に暮らせていました。今の世の中はどうでしょうか。お父さんと同じ仕事に就いて、同じことをやって同じように生きていくことは、ほぼできないという状況です。ですから私たちは、例えば20年後や30年後はこうなる、といった話を頭に思い描いて、そのとき必要な力や子どもたちがちゃんと生きていくためにはどうするか、ということを考えなければいけません。

 

学校の中で何かを教えることはもちろん大事ですが、そこでさらに自分で学び進めていける力を付けてあげないと、この先どうしようもない、というところが根本的な話なのです。この絵は、単に社会が変われば必要な力が変わるということだけではなく、このスパンがどんどん短くなっていることも見ないといけないわけです。このスピードは、よほどの大災害や人類が滅亡しない限りは止まらず、後戻りもできません。そういう時代に生きていることを考えなければいけないのです。

 

今、方法や手順が書き出せる業務は、全てコンピュータが行えるようになりました。手順を教えられるような動作、例えば生産ラインやお弁当を詰める作業なども全部ロボットが行えます。そしてこれから先、どんどんそういった形に変わっていくときに、あなたはどんな力を持って生きていくのか、という話をしなければなりません。要は、機械でできないことをしなければ、その人の存在価値がなくなってしまうような時代なのです。

 

 

そのためには知識・技能をつけるだけでなく、それをどうやって使うのかが大切です。

 

例えば、経理業務のエキスパートのように、仕事に習熟することはいいですが、経理業務自体をコンピュータが行うとしたら、その人はこれからどうやって生きていくのでしょうか。日本を含め様々な国で、会社の中でリスキリング(※3)などが今進行しているのはこういったことが進んでいるためです。そして、もっと大事なことは、コンピュータにできない仕事をつくっていくことができれば、その人は仕事にあぶれることはありません。そういった力が欲しいのです。

 

※3 技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと

 

 

そういった力をつけるには、「知識・技能」が必要なのはもちろん、「思考力・判断力・表現力」がさらに必要です。そして、それらをどうやって世の中の役に立てていくかということが重要です。

 

例えば、「人間性」というのは、「あの人はいい人だ」という側面ももちろんありますが、こういう力をどうやって世の中に役立てていくか、ということもちゃんと兼ね備えた人になってもらわないと困るのです。

 

それから、「学びに向かう力」とは、これからは生涯学び続けていくことが必要だということです。学校で学んだことだけで、一生生きていけた時代はもう終わりました。例えば、社会人になった方が退職して、あるいは在職のまま、大学などに入って、もう一回学び直して社会に出ていくようになっていくのです。私たちはこれから、そういった世界に初等・中等教育を受けた子どもたちを送り出していくようになるわけです。

 

 

新学習指導要領の情報科は何が変わったのか?

共通教科情報科は、「社会と情報」と「情報の科学」を一つにして、「情報Ⅰ」とし、発展科目の「情報Ⅱ」も置きました。この「情報Ⅰ」は、国民的素養として打ち出したものです。

 

今までは、教科が3つや2つに分かれていたことで、大学入試ではなかなか入れにくかったのかもしません。それらを1つにして、「これが日本として育てていくべき力」と定義しました。そうしたときに、「じゃあ大学も入試に入れましょうか」という国立大学協会の決定になったのです。個別の入試では、大学ごとに「情報Ⅰ」や「情報Ⅱ」の内容が問われてくるでしょう。

 

 

このスライドのように、「情報Ⅰ」の構造を産業界にもわかりやすく出していますので、応援していただけるようになってきています。この形は本当に単純化していますので、全部を表したものではありませんが、わかりやすく示すことは重要だと思います。

 

 

下図は専門教科情報科の変化についてですが、ほぼ全てバージョンアップしています。統合したものもありますし、新規に「情報セキュリティ」や「メディアとサービス」の科目を立てたりして、これからの時代に必要なことを入れています。

 

この再編にあたっては、この時点での世の中に必要な力をつくったわけではありません。これは、10年後、20年後、私の頭の中では30年後ぐらいまでのところを見据えて、入れていったものです。「今の世の中がこうなるから、そのための力を身に付けようね」と考えても、付けた時点では遅いのです。何10年後、少なくても10年後ぐらいのところを考えて、「こうなるだろうから、こうしていこうね」といった話が必要です。

 

 

新しい情報科 誕生までの経緯

こちらの検討素案が最初に出たのは、2015年の夏です。

 

2014年12月には、すでに答申の最初の振り出しの諮問が行われていました。私が教科調査官になった2015年の4月から、スイッチオン即全開の状況で走り、約3か月でこちらの検討素案を出したのです。そういったスピード感が、いまだに継続しています。このとき既に「情報Ⅰ」の概形は出ていて、「情報Ⅱ」も行う、と出していました。

 

※クリックすると拡大します

 

次の2016年には、このスライドのように、左側に小・中・高で育むべき情報に関わる資質・能力について、右側に各学年、団体で何をどうするという話が出ています。

 

こちらが全部の教科・科目で共有されて、「『情報活用能力』は小・中・高の全部の教科でやっていきましょうね」という話になりました。

 

このとき、小学校のプログラミング教育の話も出ていますし、中学校でコンテンツ作成に関するプログラミングがもう出ています。つまり、2015年段階で、高校の方向性、2016年段階で小・中・高の情報活用能力の方向性も出ているため、それに沿ってつくっていきました。当時は、他教科等が「情報活用能力」の議論を参考にするので、常に先頭を走らなければいけない状態でした。

 

※クリックすると拡大します

 

情報活用能力とは、こちらのスライドの通り、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力です。将来の予測が難しい社会において、情報活用能力の育成が重要としています。

 

 

「情報活用能力」の教育は、小・中・高・大とつながっており、その中で「情報デザイン」「プログラミング」「統計」も、それぞれ積み上げていきます。そのときに、「情報Ⅰ」と数学の連携は、小・中で積み上げてきたから高校で連携ができるのです。そして、高校で連携したところが大学にもつながっていき、例えば数理・データサイエンス・AI教育にしっかりと接続していきます。

 

そして、ここに挟まってくるのが大学入試であり、必然的にそこになければいけないのです。「情報Ⅱ」に関しては、高校からこういった力が必要であるとする大学は、個別入試に取り入れていく、ということになるのでしょう。これからいろいろ出てくると思います。

 

 

こちらに共通教科情報科の目指すものとして、「情報活用能力」を確実に身に付けるための教科目標が3つ挙げられています。

 

 

社会との接続とは

このスライドは、「情報I」の教員研修用教材から取ったものです。教員研修用教材は、「『情報I』では、シミュレーションもグラフィックスも、プログラミングもやりますよ、やってくださいよ」ということを示す目的もあって作られました。教科書やいろいろな世論にも影響があったのではないかと思っています。

 

 

大学に行かない方の身近にも、様々なデータを活用する場面が当然あります。

 

例えば、小学校や中学校の運動会があったとして、コロナもそろそろ明けてきたから、親御さんが見に行くことになり、幕の内弁当が山ほど売れるとします。どの弁当をどのぐらい準備すればいいのか。例えば、近在には小学校がどのぐらいあって、どのぐらいの割合で弁当が購入されるとしたら、といったことを考えて仕入れをすれば、残りが少なくて済みます。ですから、弁当屋さんもデータ活用、ラーメンの仕込みの数もデータ活用です。

 

あるいは、理容店とか居酒屋でも、お客さんにどうやって案内を出すか考え、ピックアップや案内を出すとなったときに、プログラミングがあれば、それを使って作業の省略ができますよね。そこまでいかなくても、プログラミングを日常のツールにしたいのです。ですから、国民的素養という「情報Ⅰ」の中に「プログラミング」も「データの活用」も入っています。街中で全部のお店がこういうことができてほしいのです。

 

今日は大学入試の話ですが、大学に行かない方でも、やはりこのくらいはできてほしいし、できたところは生き残ると思います。そうではないところは、物が余ったりして経営が苦しくなることはあるでしょう。

 

 

資格も取っていると企業に入るときに強いですね。例えば、ITパスポート試験や基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験などありますが、これらは、「情報I」「情報」、あるいは専門教情報科で学んだこと+αで対応できるのではないかと思います。大学に行く・行かないに関係なく、こういう資格を取っておけるといいのではないかと思います。

 

 

大学との接続はどうあるべきか

大学との接続としては、5教科7科目から6教科8科目になるということは、皆さんがご存じの通りです。

 

情報処理学会につきましては、こういう発表があった際や、「情報Ⅰ」の取り扱いについて発表があった際など、適時適切に素早くコメントを出していただきました。

 

ただ、大学につきましては、大学の先生が理解するだけでなく、理事会が納得しないと入試は変わらないので、例えば「情報Ⅰ」は日本全国でしっかり行われている、という情報発信も必要だと思います。

そうすると、今後は例えば理事会の方々も「じゃあ北海道から沖縄まで同じように行われているから入試に入れても不公平は出ないね」ですとか、「これを入試科目に入れることによって、うちの大学を受ける人数が減ったりしないね」といった、大学経営的な部分でも納得する情報発信が要るのかな、と自分の大学も含めて考えています。

 

 

下図は国立大学協会の方針です。「文理を問わず全ての学生が」とか「数理・データサイエンス・AIが、高・大接続の観点からの情報に関する知識においては、大学教育を受ける上での必要な基礎的な」と書いてあり、入試に入れてちゃんと評価していく、ということが国立大学協会から出ています。そうしますと、「みんなでこれをやろうね」という合意はもうありますから、粛々と進めていくとともに、私立大学においても、理事会がこういった内容を見たときに「これは自分たちもやらなきゃいけないな」といった話になればいいのかなと考えています。

 

 

大学入試センターのサンプル問題にはサッカーの「データ分析」も出ています。大学入試でだけではなくて、部活動でもこういったことをしていってほしいですね。

 

サッカー以外にも、バレーボールやバスケットボールでも、みんな同じようなことができるはずです。このように、部活動でしっかり「データ分析」をして、力を付けて大会にも勝って、入試にも受かるというのが、「あるべき姿」ではないでしょうか。

 

 

「情報デザイン」もこういった問題に限らないので、11月9日発表の試作問題ではいろいろな形が出て来るでしょう。

 

「プログラミング」では、実は関数による構造化やAPIについても学習指導要領には入れてあるのですが、まだサンプル問題には出てないのでいつ出るのか楽しみにしています。

 

 

教科書は文部科学省の検定済みです。大学入学共通テストを作成する人はそれらの教科書を全部調査して、不公平が出ないようにしているはずです。

 

また、基本的な内容は学習の達成基準ですから、学習指導要領に記載されています。そういったところが、共通テストの出題内容となります。11月9日には、もう少し各分野充実したものが出てくると思っています。

 

 

高・大接続について、皆さんご存じの通り、「情報Ⅰ」だけではなくて「情報Ⅱ」もありますから、個別入試で「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」のどちらも出すところもあるでしょう。

 

それから、大学入学共通テストは「情報Ⅰ」で60分、ペーパーベースで、かつ完全客観式で行う、としています。ペーパーではなくてコンピュータベースでやればいいのでは、という話もありましたが、まずは全員が受験することを優先し、ペーパーベースで客観式から始めると良いですね。コンピュータベースにしていくことに関しては、全部の教科がそろってその方に向いていくというのが正しい姿だと思います。

 

 

カリキュラム・マネジメント~情報科関連教材の現状

具体的なカリキュラム・マネジメントの例を下図に示します。1年生で「情報Ⅰ」と「数学Ⅰ」と「公共」が連携するとなれば、その力が総合的な探究で生かされて、他教科とも連携します。

 

「情報Ⅱ」を設置しているところはデータサイエンスでさらに深めたものが、例えば「総合的な探究」でも使われていき、社会、国語、外国語、数学などのその他の教科についても使われていきます。そうすると教科の力も上がり、「情報」の力も伸びて、2年生で充実した力が3年生で受験勉強につながっていきます。2年生が空白ではなく、「情報」の力を深める機会になるのです。

 

「情報」については、「カリキュラム・マネジメント≒受験勉強」である、という認識も要るのではないかと思います。実際にこの図ようにやればそうなりますし、このために、高校でどんな力を育てていくのかをしっかり決めて、こういった設計を管理職のリーダーシップの元に学校全体でやらなければいけないのです。そのためには、やはりリーダーシップが重要で、カリキュラム・マネジメントについての管理職教育も、しっかり進めていかなければいけません。

 

 

学習コンテンツの現状については、私は今、受験問題集の作成、Webの動画教材やコース教材の作成にも携わっています。そして、教科連携等についても進めています。

 

現在どういう状態かと言いますと、1年生では「情報Ⅰ」学習ノートといった基礎的なものは全部出ています。それから、コース教材や基礎力養成部分の動画教材も、Life is Tech!やAsial、みんなのコード、Benesseなどからいろいろと出ているものを使っていただけます。そして、数学・公民との連携も進められています。また、東京書籍や実教出版から2年生での使用を想定した基本的な受験準備問題集

も出ています。

 

今、黄色のところは大体完了していて、灰色のところの基礎力充実のための、例えばドリル的なコース教材や動画教材を今まさに作成中で、来年に向けてリリースされる予定です。さらに、総合的な探究との連携の例が、今積み重ねられています。

 

3年生の受験直前問題集ですが、11月9日に試作問題が出てくるとすれば、それを受けて一気に制作が始まるでしょう。コース教材には、当然受験向けの実践的なものが入ってくるでしょうし、学校によっては学校設定科目を設置するところもあるでしょう。また、2年生で「情報Ⅱ」を入れたところはより高度な力が付きますから、受験ということで考えれば当然有利になります。

 

 

 

『デジタル人材共創連盟』が目指すもの

学校現場の情報教育の支援のために、一般社団法人『デジタル人材共創連盟』を立ち上げて、10月18日に設立記念会を行いました。

 


新しい情報科が始まり、学校の中で子どもたちが育ち、入試を経て大学に行く。あるいは入試はないけど、いろいろな力を付けて社会へ出ていく。そうすると、そういった子どもたちのデジタル力を育てていくということが必要です。授業だけで大学や社会とつなぐだけではなくて、課外活動などでもつなぐことが必要です。

 

「学校教育部会」では、教員向けの研修や中高生のデジタル活動を支援します。会社の皆さまから協力いただいて、いろいろなことを行っていきます。

 


「産業部会」では、アントレプレナーシップ育成や産業界の支援方針などを検討します。具体的には、お金や人材を提供してください、という話です。

 

ここでは、例えば教員研修のための講師の派遣といった事業を進めていきます。30社くらいの活動規模と考えていて、現在12社ぐらい来ており、3月ぐらいまでには目標値にいくかなと考えています。

 


デジタル関連の能力向上に寄与する大会では、ジェンダーの問題があり20%ほどしか女の子は参加していません。それを50%にしたいのです。そうすると、いろいろなことを変えなければいけません。「ガイドライン部会」では、そうしたことについて、ちゃんとガイドラインをつくって、大会のやり方も変えていきましょう、オープンにしながらやっていきましょうということを進めていきます。

 


「広報部会」では、連盟活動における、成果報告等の広報を行っていきます。

 

 


 

大学や社会との接続をまとめると、下図のように、教科として「情報Ⅰ」があり、カリキュラム・マネジメントを経て受験対策にもなり、デジタル活動にもつながっていいきます。また、社会に出ていくときも、大学に行かない場合も、資格を取得して就職活動ということも考えられます。

 

「情報Ⅱ」は設置するところとしないところがあるかもしれませんが、「情報Ⅰ」につながる重要な部分であり、カリキュラム・マネジメントとも切っても切り離せない部分です。

 

『デジタル人材共創連盟』としましては、今、「情報Ⅱ」の教員研修用教材に準拠した動画を25本つくって出しています(※4)。「情報Ⅰ」については、教員研修用教材についての動画も、既に文部科学省と情報処理学会から出していただいていますので、大体準備ができてきたという状況です。

※4 https://dle.or.jp/teaching_material/information2_contents2022/

 

【質疑応答】

 

Q1.総合的な探求の時間との連携についてのイベントの詳細を、公開できる範囲でよいので、ご教示ください。

 

A1.鹿野先生 今、現場の先生方と、私が顧問を務めているLife is Tech!で進めている、先進的な事例、例えば八丈島の事例など、そういった事例のような形で連携していくという話です。加えて、「情報Ⅰ」の試行問題が11月9日に出ますので、その解説も含めながら、「こうやってつながっていくよ」といったことを話していきたいと思います。

 

 

Q2.学校の教員が校務でなかなか教育データを活用しきれていないなかで、生徒に教えるのは難しいのではないかと思っています。教員が教育データを活用できるようになることについて、どのようにお考えでしょうか。

 

A2.鹿野先生 活用できた方がいいか、活用できない方がいいかといえば、それは当然活用できた方がいいです。しかし、データをつぶさに全部見て、一つひとつに判断をすることをしてしまうと、体が保ちません。データの活用において、先生が全てを見てということも当然ありますが、そこに例えばシステムやAI、フィルターのようなものを活用して、「この子はちょっと注意しなきゃいけない」という警告や、「この子はちょっと満足してないみたいだ」といったことを出すシステムなどがあれば、先生の観察に加えて、データからも得られることはある、ということになり、教育の質は向上するだろうと思います。

 

そういったシステムや警告を出すようなAIがこれからプラスされた中で、データの活用を進めていくと、中にはいろいろと細かく見る人もいるだろうし、あまり細かく見る時間がないときでも、+αのことを先生方に言ってくれるのであれば良いと思います。

 

あとは、自宅での活動や個別最適化といったときに、どの子がどのぐらい進んでいるのかは、先生方の目からはデータがないと見えないですね。個別最適化を進めようとすると、データで生徒を見ていることをある程度許容しなければできないだろうし、協働的な学びといったときに40人全員を先生が見ているわけにはいきません。そういったことの進捗を見るときには、例えばクラウドに上がった成果物を見ることになります。

 

子どもたちの把握の仕方に、先生方が今まで行ってきたことに加えて、データや成果物を加えていくことによって、よりきめ細かく見ることができることになります。データを集めたり分析したりする能力的なところは、システムやAIに補ってもらう中で進めていかなければいけないのかなと思います。

 

 

Q3.受験対策について、課外活動に関するアプローチはおっしゃる通りだと思いましたが、その一方で、問題集やサンプル問題などもあることで、知識の延長に捉えられるのではと感じます。実際に問題解決はそうではないと思うのですが、そういった知識偏重を払拭するためにはどのような法則が考えられるでしょうか。

 

A3.鹿野先生 例えば、「情報」以外の教科で、大学入試をやっているから知識偏重になっていると言う方もいますし、そうではないとおっしゃる方もいます。入試は大学入試センターおよび大学側から高校側に向けたメッセージです。知識偏重にならない、しっかり思考力・判断力・表現力があって、学びに向かう力を備えた人が欲しいと思うのであれば、そのような素晴らしい問題をつくって高校側にメッセージとして投げていただくことが必要だと思います。今の言葉は自分自身に跳ね返ってくるものでもあります。

 

情報処理学会高校教科「情報」シンポジウム2022秋 講演より