神奈川県高等学校教科研究会情報部会情報科実践事例報告会2021オンライン

高校のGIGAスクールで何をするのか

神奈川県立川崎北高校 柴田 功先生

今日は、高校のGIGAスクールで何をするかというテーマでお話をしたいと思います。文部科学省の「教育の情報化に関する手引き」は、令和2年6月にGIGAスクールに対応した追補版が出ていますので、ぜひお読みになっておいてください.

 

 

 

神奈川県のGIGAスクール構想の進捗状況

神奈川県のICT環境整備は、GIGAスクール構想に向けてこのスライドのように進んできており、来年度から1人1台端末の活用と新学習指導要領の実施が同時にスタートすることになります。

 

 

神奈川県立の高校で、1人1台端末をスタートしている学校がこちらです。川崎北高校も10月からGoogle社の協力をいただいて、1人1台端末を使った授業をスタートしています。

 

 

1人1台端末については、今BYOD、CYOD、BYADといろいろな言葉が出てきていますので、整理してみました。これらに加えて、既にある学校の端末を貸し出すという方法がありますが、1人1台端末の実現には、これらを織り交ぜていくことになると思います。

 

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神奈川県では、このようなチラシを保護者に配布していますが、そこにはBYADとBYOD、学校の端末貸与という3つの方法が書かれています。ですから、学校によっては、ほとんどの生徒・保護者が、学校から薦められた端末を買うというケースもあるでしょうし、BYOD、BYAD、学校の端末の貸与を混ぜた形で1人1台を実現する方法もあるかと思います。

 

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1人1台端末は何のためか~導入そのものの目的は「創造的な学び」

一つ押さえておきたいのは、1人1台端末は何のために整備するのか、ということです。導入そのものの目的は「創造的な学び」をするためであり、文科省もそう言っています。その一方で、結果的にいわば恩恵として、例えば、紙と鉛筆の代わりにタブレットPCに記録したり、学力テストの結果に対応して補助教材の動画を視聴したりするなどが可能になります。

 

ですから、これらの恩恵自体は目的なのでなく、まずは「創造的な学び」、例えばポートフォリオを作るとか、課題学習の結果をスライドやポスターにまとめて発表させるといったいう活動をするために1人1台が必要であるということです。「目的」と「恩恵」は異なるという点をきちんと整理しておくことが必要であると思います。

 

 

4月からの授業に向けて、今のうちにやっておきたいこと

それでは来年度からの授業に向けて、今何をしておくべきか。4月からGIGAスクールの環境がスタートする学校も多いと思いますが、今からやっておくのは、新型コロナの休校中等にオンライン授業のときに積み上げてきた成果、例えば動画を配信するとか、スマートフォンでも見られるような動画コンテンツを作っておくといったことをさらに重ね、整理しておくことです。

 

本校は、今年度も分散登校を行いましたが、こうした経験が重要です。

 


具体的にはGoogle ClassroomやMicrosoftのTeamsなどを中心に、画像や動画で教材を配信したり、生徒同士の活動を行ったりということの経験値を積んでおく、ということです。今からの残り3か月の間に、Classroomやスマートフォンを行い、4月からのGIGAスクールの環境に慣れておくことが大事であると思います。

 

 


 

学校全体の研修や組織作りも必要

GIGAスクールに向けての組織づくりはどうするかについては、本校では既存のグループとは別の組織をつくっていろいろな新しい業務を担当し、ルーティンワークになったらグループ業務に落とし込んでいくというやり方をしています。

 

 

例えば、こういったショールームを作っていろいろな機材やアプリを展示することで、「なるほど、こういう使い方があるんだな」とか、「書画カメラも使えそうだな」「Chromebookはこうやって管理するのか」と気づくことができます。こういった実演を見せることで、4月に向けて1人1台のスタートを切ることができると思います。 

 




 

また、分厚いマニュアルを配ってもなかなか見てもらえないことが、1人1台端末整備の障害になっているということもありますので、このようなワンペーパーのマニュアルにしておくのがお勧めです。

 

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ICTを使うこと自体が目的ではなく、授業改善の中にICTがある

これは管理職の方へのお話ですが、管理職は先生方の授業を見てアドバイスをする「授業観察」をしています。こういった授業改善の視点をベースに、その上でICTを使うことを助言するのがよいと思います。

 

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これは私が実際に授業観察をしたときのメモですが、机間指導や、生徒へのコメントなど、授業を良くしていくための様々な助言の中にICTを使う視点も入れています。ICTを使うことが前面にあるのではなく、授業改善の中にICT活用があるということです。

 

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そして授業観察をした後、良かったところを学校全体で共有しました。太字の部分がICTに関連する内容です。ICTを使うのが目的ではなく、授業改善の中にICTを入れるということがポイントであるというのがわかると思います。

 

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これは私がずっと取り組んでいることですが、学校のホームページに良い授業の取り組みを載せて、校内だけでなく、外部に向けても学校全体での良い授業を紹介しています。

 

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また、こうした公開研究授業も大事だと思います。本校の場合は、特定の先生ではなく、全員が研究授業を行うということを意識しています。

 

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こちらは公開研究授業の後でICT使ったところの良かったことや課題をこうやって整理して共有しているところです。そして、まとめたことを校内に掲示しておくこともしています。大事なのは、授業改善を進めて、その上でICTやGIGAスクール環境があるということですね。

 


 

本校の場合、タブレット端末はChromebookを生徒に貸し出していますが、ルールはこの程度で、充電は家でやってきてね、必ず学校に持ってきてね、といった簡単なことにとどめています。

 

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GIGAスクール環境で授業はどう変わるのか

本校は、10月にChromebookを導入してからまだ2か月ですが、こんなに授業が変わった、というのがこちらです。

 

今まではスマートフォンを使った授業がいろいろ行われていましたが、今は端末もスマートフォンもどちらを使ってもよい場面が多くなりました。

 


 

スマートフォンでもできること・PC端末が必要なことを整理してみました。発表活動やコンテンツを作ること、ポートフォリオを作るといった活動はスマートフォンではできませんから、こういった「PCでなければできない学習活動」がどんどん充実してくれば、1人1台端末の必要性はおのずと高まると思います。

 

これは授業の中で課題を見つけてグループ内で発表しているところです。Chromebookを使うことで、簡単な発表会がすぐできます。他の生徒はChromebookでは、スプレッドシートを開いておき、コメントをすぐ共有することができます。

 


こちらは生物の授業で、10分後に発表を行うという設定ですが、全てのスライドをゼロから作るのではなく、このような「部品」を用意しておいてスライドを作らせます。部品を並び替えることで、発表のスライドが簡単にできるというとても優れた工夫です。

 


 

これは授業の振り返りの様子です。机の左側にパソコンを置くことで、かなり整然とした感じになりますね。PCを使うからといって、必ず付属のタッチペンで書かせるのもストレスがあるので、紙に書くことと端末にペンで書くっていうことを併用していけばよいと思います。

 


 

その他、ダンスを撮影したり、音楽の授業で楽譜の説明をMeetで配信したりということにも使われています。

 


また、アプリでグラフを書くといった活動も1人1台端末で実感できるというのも重要であると思います。今までは、グラフの変形は前の方で先生だけがいろいろやって見せていましたが、生徒が端末を持つことで、自分で体験することがでかきます。

 


これはWeblioというサイトを電子辞書代わりにして、新出単語を調べいるところです。

 


 

GIGAスクールでの学習活動は、スタートから劇的に何かを変えることは難しいと思いますので、私としては最初の5分、あるいは最後の5分を、例えば振り返りや意見を集約するといった活動を取り入れることから始めていけばよいかなと思っています。

 

 

「学びの転換」ではなく「学びの選択肢が増える」

よく「学びの転換」という言葉が使われますが、これは、正直なところ学校にとってはものすごくストレスになる言葉ですので、「転換」ではなく、「学びの選択肢が増える」という言い方をしてくださるとありがたいです。私自身は、今までの学習活動に新しいツールが入り、学び方の選択肢が増えたという言い方で前進していこうと思っています。

 

 

そこでまず大事なのは、推進役がデモンストレーションをすること。1人1台端末を使った授業などというのは、今まで誰もやったことがないのですから、これはとにかくどんどんやっていくことです。

 

そして、先ほどもお話ししたように、授業の最初と最後で使ってみること。「総合的な探究の時間」でICT活用を進めていくとこと。端末を持ち帰って、家と学校で課題をシームレスにすること。学び直しや発展学習の課題も用意できるので、個別最適な学びも可能になるでしょう。

 

私は、GIGAスクール構想の1人1台端末のキーワードはポートフォリオであると思っています。一人ひとりの学びをしっかり整理してまとめておくことが、総合型選抜入試につながったり、生涯にわたって学び続ける力につながったりしていくのではないかと思います。

 

 

情報科の授業はどう変わるのか

最後に、情報科の授業はどう変わるかということについて、私はこのように考えています。

 

まず、パソコン教室はどんどん役割が変わると思います。今までもパソコンはありましたが、もっとハイスペックなものを置いて、例えば動画編集のように生徒個人の台端末ではできないものをパソコン教室でやるといった形になるとよいでしょう。また、3Dプリンタ―やロボットなど、周辺機器が充実した教室になれば、活動の幅やレベルがさらに拡がります。

 

 

情報科の授業自体も、変えていく必要があると思います。今までパソコン教室の中で完結してたと思いますが、クラウドサービスのアプリを使うことを前提とした授業もできると思います。ここではGoogleのサービスを挙げましたが、Microsoftの製品でも同じようなことができます。こういった学習活動を、家庭と学校のどちらでもできるようにしていけたらと思います。

 

 

GIGAスクールが高校にもようやく実現します。1人1台端末を使って、高校のGIGAスクールの学びをどのように進めていくかという提案をさせていただきました。

神奈川県高等学校教科研究会情報部会情報科実践事例報告会2021オンライン オンデマンド発表より