情報処理学会 コンピュータと教育研究会 158回研究発表会  電気通信大学企画セッション 招待講演

大学入学共通テスト新科目案「情報」について

これまでの経緯と試作問題(検討イメージ)のねらい

(独)大学入試センター試験問題調査官 水野修治先生

大学入試センターでは、新しい学習指導要領で学ぶ現在の中学2年生が受験する2025年以降の大学入学共通テストの出題教科や科目、実施方法などについて、これまで有識者の先生方や文部科学省と協議を重ねてきました。そして、科目を「情報」を含む7教科21科目に再編成するという検討中案が昨年10月21日に広く報道され、皆さんがよく知るところになりました。

 

最初に確認しておきたいことは、これはまだ検討中案であり、確定されたものではないことです。この素案を土台に、大学の関係団体や高等学校の関係団体から様々なご意見をお聞きしつつ、議論を深めていくということになっておりますので、本日はその前提でお話しすることになります。

 

つまり、現段階で私の立場でお話しできることは、極めて限定的であるということ、未確定な部分が多いことをお許しいただきたいと思います。

 

本日は、ここにあるように、皆さんと一緒に大学入学共通テストの新しい科目として検討されている「情報」、そこに至った経緯を振り返り、その後大学・高等学校関係者にご検討いただく際にお示しした「『情報』試作問題(検討用イメージ)」のねらいについて、最後に今後の予定についてお話しできればと思います。

 


 

本日ご参加の方々は、大学の先生や高等学校の先生方が多いかと思いますが、それぞれのお立場で、現在私たちが考えている方向性について考えていただければと思います。

 

大学の先生方には、大学入学共通テスト「情報」を大学入学者選抜として利用した場合、入学して来る学生がどう変わるのか。大学等における「情報」にかかる基礎的な講義では、本来高等学校で学ぶ内容を大学で学び直している内容もあるかと思いますが、この内容がどの程度入試の中で測れるのか。また、入学時点で情報に関する資質・能力がある程度見込めるならば、入学後のカリキュラムも、先ほど萩谷先生のお話にもあったように、これまでに比べて、より高度な内容から始められるのでは、など思い描いていただければと思います。

 

また、高等学校の先生方であれば、実際にどのような試験になるか、気になるところかと思います。まだお示しできる問題例は少ないですが、大学入学共通テスト「情報」のイメージを共有できればと思っております。

 

教科「情報」 大学入学共通テスト導入検討に至ったこれまでの経緯

初めに、大学入学共通テストに「情報」の導入が検討されるに至ったこれまでの経緯を簡単に振り返ります。

 

時代とともに、情報教育が益々重要になってきていることは言うまでもないわけですが、ここ数年、初等中等教育における情報教育には大きな変化があります。

 

具体的には、小学校では今年度からプログラミング教育が必修になり、中学校での技術・家庭科でも、生活や社会における問題を、情報通信ネットワークを利用した双方向性のあるプログラミングによって解決するという内容や、情報セキュリティ等の指導も充実して、取り扱う内容は益々高度化しています。

 

 

高等学校では言わずもがなですが、令和4年度から、年次進行で科目「情報Ⅰ」を高校生全員が履修することになります。視点を変えて、大学等の高等教育に目を向けると、文部科学省が数理・データサイエンスの教育強化の拠点校として6大学を選定し、数理・データサイエンス教育の充実のための取り組み成果を全国へ波及させるために、標準モデルカリキュラムや教材の作成・普及に取り組んでいます。現在23大学を協力校として、全国の大学等へ普及・展開を行っています。

 

また、令和元年6月11日に閣議決定された「AI戦略2019」においては、2025年までに実現する具体的な目標として、文理を問わず全ての大学・高専生(約50万人)が、教育課程において、初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得し、また、これも文理を問わず、一定規模の大学・高専生(約25万人)が、自らの専門分野への数理・データサイエンス・AIの応用基礎力を習得する、としています。

 

 

平成30年6月に閣議決定された「未来投資戦略」では、大学入学共通テストにおいて、国語、数学、英語のような基礎的な科目として、必履修科目「情報I」を追加すること、令和2年7月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2020」では、大学入学共通テストに情報Iを2024年度より出題することについて検討すること、更に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」では、大学入学共通テストにおいて「情報I」を2024年度から出題することについて、CBT活用を含めた検討を行う、とあります。

 

 

これまでも、情報処理学会をはじめ多くの学会や協議会等から、「大学入学共通テストに『情報』を出題してほしい」という要望をいただいておりました。これらを背景として、文部科学省及び大学入試センターでは、新教育課程に対応した2025年大学入学共通テストへの新科目として「情報」の導入を検討してまいりました。現在、大学や高等学校の関係団体からの意見を取りまとめ、議論を深めている段階です。

 

 

各団体に、大学入学共通テストの出題教科・科目の素案に対する意見の取りまとめをお願いする中で、特に「情報」に関しては、これまでセンター試験にはなかった科目なので、検討するにも具体的なイメージができない、という声も上がっておりました。そこで、これまでの資産や大学入学共通テスト「情報」について検討していただいている有識者の先生方(ここには高等学校の先生方にも入っていただいています)に作問・検討していただいたものを、「『情報』試作問題(検討用イメージ)」として、昨年11月10日に、大学と高等学校の関係団体に提供したところです。

 

また、この「『情報』試作問題(検討用イメージ)」は、「大学入学共通テストの科目の在り方についての検討」という目的の範囲であれば、広い意味での関係者となる多くの大学の先生や高等学校の先生がたにもご覧いただいて議論を深めていきたいと考え、情報処理学会など情報に関係する学会にもお送りしておりました。情報処理学会では、学会のWebサイトに大学入学共通テスト「情報」に関する意見と共に、この「『情報』試作問題(検討用イメージ)」を公開されておりますので(※1)、まだご覧になってない方は、ぜひご覧いただき、それぞれの立場で検討の題材にしていただきたいと思います。

 

※1  https://www.ipsj.or.jp/education/edu202012.html

 

 

■「情報」試作問題(検討用イメージ)の解説

まず、「『情報』試作問題(検討用イメージ)」冊子の表紙をご覧ください。この試作問題の目的とともに注意書きがございます。

 

この試作問題は、もちろん「情報I」の全ての項目を網羅しているものではありませんし、「情報I」の教科書は現在検定中ですので、教科書の内容を照合したものではございません。

 

 

 

また、これまでのセンター試験や、今年から始まった大学入学共通テストのように、点検による絶え間ない修正プロセスによって、多大な時間と労力を割いて練り上げてきた問題ではありません。個々の問題から見れば、まだまだというご意見もあるところかと思いますが、目的は大学入学共通テストへの導入を検討している新しい教科「情報」についての具体的なイメージを共有することですので、この点ご理解いただきたいと思います。

 

また、問題数からすると実際の問題セットのように見えますが、これは1回の問題セットとして作ったものではありませんし、実際の試験時間を考慮したものでもございません。あくまで個々の問題として見ていただきたいと思います。

 

続いて、「平成30年改訂高等学校学習指導要領『情報I』と本試作問題群が網羅する領域について」というページがあります。ここは、検討していただいている大学の関係者、特に入試科目を検討するご担当の方々は、高等学校の教科「情報」について、恐らくほとんどご存知ないであろうということで、丁寧かつ簡潔に説明してあります。

 

この最後に、「文理の別を問わず全ての生徒が学習するものであり、分野を問わず大学での学習での基盤となります」とあるように、「情報I」が理系学部向けとか文理融合学部向けというわけではなく、文系理系を問わず大学の教育の基盤になる科目であることを説明しています。

 

 

「情報I」は、ご存知のように領域が4つありますが、大学入学共通テストでは全ての領域から出題するということで、この試作問題ではできるだけそれぞれの領域のものを入れてあります。ただし、一つの問題セットではありませんので、領域ごとの問題数や配点のバランスは参考になさらないようお願いいたします。

 

 

ここからは、主だった問題についてご説明していきたいと思います。

 

■第1問~知識問題でも、単なる暗記ではなく、意味をしっかり理解しているかを測る

大学入学共通テストは思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視しておりますが、その基礎となる知識の理解の質を問う問題も、ある程度出題したいと考えています。その方向性には賛否があるかもしれませんが、知識問題であっても、単なる暗記ではなく、その意味をしっかり理解しているかを測る問題にしていきたいと考えます。

 

第1問は、過去の「情報関係基礎」の問題を少し改変したもので、情報に関する法律や制度、情報セキュリティの重要性、情報社会における個人の責任及び情報モラルについての基本的な知識を問うもので、先生と生徒の会話形式で、生徒の学習の過程を意識した場面設定となっています。

 

例えば、この空欄ウでは、Webサイトで公開されている人口統計データをソフトウエアで取り込んで、グラフを作ることができることから、解答群から「CSV形式」を選ぶことになります。これを単に「カンマ区切りはCSV形式」と覚えているだけでは、正答に至らないかもしれません。また、実際に実習で公開データを扱ったことがないと、実感が得られないかもしれません。

 

 

■第2問~情報の表し方や身近な動画データに関する基本的な知識・技能を問う

第2問は、情報の表し方や身近な動画データのデータ量に関する基本的な知識・技能を問うものです。情報のデジタル化の仕組みや、情報量に関する考え方は、情報技術を活用する上での基本となります。ここにある問題の一部は、「情報関係基礎」の過去問題から、「情報I」の内容にも重なるものとしてピックアップしたものが含まれます。

 

 

■第3問~学んだ情報技術が社会の中でどのように利用されているか

「情報」の学習では、自分たちが学んでいる情報技術や考え方が、社会の中でどのように利用されているかを、実際の事例と結び付けて考えさせていくことが重要であると考えております。

 

第3問は、お菓子メーカーの工場における不良品の判別に利用される画像処理に関する問題です。自動判別するためには、鮮明な画像を撮るということが必ずしも必要というわけではなく、二値化、つまり白と黒の二色のみで表現し、単純化することで可能になるということを題材としています。

 

少し難しいという声も届いていますが、二値化の仕組みが分からなくても、問題の中である程度説明することで、階調という意味や画像の明度と画素数の関係を表すヒストグラムが理解できれば、正解を導き出せる問題と考えました。

 

 

■第4問~身近な題材をモデルとしたシミュレーションを読み解く

「情報I」の目標に、「問題を発見・解決を行う」「学習活動を通して情報と情報技術を適切かつ効果的に活用し…」とあります。

 

第4問は、生徒の身近な題材をモデルとした、シミュレーションに関する問題です。毎日、決まった時間帯に発生する交通渋滞を解決するための方策を、動的モデルかつ確率的モデルの条件を把握して、シミュレーション結果を読み解きます。実際に授業の実習でできそうな題材を問題としております。

 

 

■第5問~課題解決の一連の過程の中でブログラミングの考え方や技法を問う

第5問は、大問形式のプログラミング問題です。この問題は、シフト暗号の解読という課題を例に、課題解決のために必要な情報と、それを得るために必要な処理の明確化、そして、処理を実現するプログラムの作成とその実行による課題解決という一連の過程の中で、プログラミングの基本となる考え方や技法を問う問題となっています。

 

シーザー暗号は文字のシフト数が分かれば解読できるわけですが、問1では、暗号解読にはそのシフト数から機械的に解読することができることを明確化させ、問2では、シフト数は文字の出現頻度から推定できることから、各アルファベットの出現頻度を求めるプログラムを作成して、結果からシフト数を推定してみる。しかし、あくまでもそれは推定ですので、問3で実際にその推定が正しいか検証を行う復号プログラムを作り、復号した結果から推定が正しかったかを確認するという流れになっております。

 

 

問2のプログラムの中では、問題の中で定義された関数を利用しています。この関数の説明からどんな処理をするか、またプログラムの中でどう利用するのが正しいのか、といったことの理解も求めています。

 

ここで扱っているプログラム言語は、高等学校の授業の現状、教科書で扱われるプログラム言語、あるいは大学や社会で求められるものなどを鑑みて、さまざまなご意見があることは承知しておりますが、大学入試センター独自の、日本語表記の疑似言語(DNCL)を利用しています。

 

これは、教科書や授業で多様なプログラム言語が利用される可能性があること、大学入学共通テストとして実用性より教育的で公平・公正なプログラム言語が求められることから、現状ではDNCLでの出題を考えております。ただ、大学入学共通テストで使われるからといって、試験対策のためにDNCLを使って授業が行われることがないようにと考えております。授業で実用的なプログラム言語を使わないことで、生徒の興味関心が高められなかったり、プログラミングの楽しさを知る機会の損失になったり、生徒の可能性を伸ばせなかったり、ということはあってはならないと考えております。

 

 

この点については、まだ最終的な決定には至っておりませんが、有識者の先生方と検討を重ね、実用プログラム言語の良いところを取り入れた、このような表記でのプログラム問題を考えております。日頃の授業でいずれかの実用的なプログラム言語を学んだ受験者であれば、改めて言語仕様を学ばなくても、違和感なく理解できると考えておりますし、その逆、つまり、実用的なプログラム言語でこの問題を試すことも、容易にできるのではないかと考えています。

 

■第6問~基本的な知識の理解をもとに、身近な情報技術の仕組みや意味を考える

第6問は、今日では一般的に使われるようになった二要素認証の情報セキュリティ上の有用性に関する理解を問うものです。

 

二要素認証は、最近はニュースなどでも二段階認証として取り上げられるようになった内容ですが、教科書に載っていなくても、基本的な知識をもとに、その仕組みや意味を正しく理解することができれば解ける問題となっています。

 

教科書の内容だけではなく、実社会の中で、身近なところで使われている情報や情報技術を結び付けて考えるような題材は、「情報」という科目の特性から、問題として取り扱っていくことになると考えております。

 

 

■第7問~小規模な情報通信ネットワークの不具合の原因を考える

第7問は、通信状況からネットワークの不具合の原因を推定する力を問うものです。

 

新学習指導要領解説では、情報通信ネットワークの具体的な指導内容として、「実際に家庭内LAN等の小規模な情報通信ネットワークを構築したり、あらかじめ用意したトラブルを抱えている情報通信ネットワークの不具合を解決したりすることを扱うことも考えられる」とあり、その内容を踏まえた問題となっています。この問題も、授業で実習していないとなかなか理解できないかもしれません。

 

 

■第8問 Webサーバに蓄積されたデータを分析する

第8問は、Webサーバの仕組みとアクセスログの分析、SNS発信件数とWebサーバの訪問件数との相関を回帰分析するなど、データの活用も含んだ総合的な問題になっています。少し難しいのではないかというご意見をいただいておりますが、Webサーバの管理は知らなくても、アクセスログが取得されているということは学ぶはずだと思います。どういうデータが収集されているかを把握できて、Webページの仕組みを理解できていれば解答できるのではと考えました。

 

 

以上、各問題について簡単に説明してまいりました。先にも申しましたように、教科書もまだ出ておりませんし、これらの問題は通常の大学入学共通テストの点検プロセスを経ていませんので、知識面で教科書の範囲に含まれないものや難易度が適切でないもの、問題文や選択肢の表現が適切でないものなど、実際に出題するためには改善が必要な点があるかもしれませんが、この試作問題でそれぞれのお立場で大学入学共通テスト「情報」のイメージを持っていただければと考えています。

 

各学会等からは情報入試への賛同の声

まず、東京都の高等学校情報教育研究会からは、「文理の別を問わず、基幹教科として全員が受験できるよう配慮してほしい」という要望をいただいております。また、情報処理学会からは「全面的に賛同。全ての受験生が幅広く受験できるような体制の構築を強く望んでいる」とあります。

 

 

また、日本教育工学会からは、「わが国の経済再生と今後の発展のための礎となる」、教育システム情報学会からは「大学入学共通テストでの出題に全面的に賛同するとともに、今後の情報教育の充実・進展に協力を惜しまない」というコメントをいただきました。

 

 

8大学情報系研究科長会議、これは旧7帝大に東工大を含めた、情報系大学院の研究科長の会議ですが、「情報I」の学習内容の確実な定着を促す、独立した教科として全員が受験できるようにすることなどのご意見・ご要望をいただいています。

 

 

また人工知能学会からは、「文理の別を問わず、全ての学生にとって、今後ますます重要になる」と言っていただいております。

 

 

日本産業技術教育学会は、中学校などの技術教育を研究する学会ですが、先ほど萩谷先生のご講演にもありましたように、初等中等教育から大学の教養教育に至る情報教育の教育課程の中で、大学入学共通テストで「情報」が実施されることによって、確かな学びにつながるものになると期待されていると感じます。

 

最後に、日本統計学会からは、データの活用について期待されておりますし、統計の学習指導に関しても、積極的に建設的な助言と支援を行う用意があると言っていただいております。

 

 

このように多くの関係学会や組織に背中を押していただいておりますし、大きな期待もされておりますので、我々もしっかりと準備を進めていきたいと思います。また、今回ご紹介できておりませんが、「『情報』試作問題(検討用イメージ)」に関する具体的なご意見も多数いただいておりますので、これらのご意見・ご要望を、大学入学共通テスト「情報」を検討する有識者の会議の中でも参考にさせていただきます。

 

高等学校の先生方にお願いしたいことと今後のスケジュール

大学入学共通テスト「情報」の導入に関しては、新聞等で、高等学校の教科「情報」の指導体制について、またどのような大学が入試科目として利用するのかなど、いろいろな課題も指摘されています。

大学入試センターでは文理を問わず、多くの大学で入試として利用していただけるものを考えております。大学入学共通テストに「情報」が導入されたとしても、「2025年までに、文理を問わず全ての大学・高専生、約50万人が初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」、また「25万人が自らの専門分野で数理データサイエンス、AI応用基礎力を習得」、という国の目標を実現するためには、より多くの大学・学部で、この大学入学共通テスト「情報」を入試で利用していただくことと考えています。文系も含めて他の学部学科の入試科目としてご検討していただくためには、そのメリットや正しい情報を伝えていく必要があると考えています。

 

また、大学入学共通テスト「情報」が正式に決まった場合、大学入学共通テストにふさわしい良質な試験問題を作問し続けていく必要があります。試験科目として、これから実績を積み重ねていくことになりますし、検討を重ねる度に変わっていく可能性もまだまだございます。作問も含め、持続可能な試験実施に向けて、いろいろご協力をお願いすることが出てくるかと思いますが、何とぞよろしくお願いいたします。

 

高等学校の先生方には、試作問題を見ていただいて、感じたことを率直にお聞かせいただきたいと思います。

 

昨日の一般セッションの中で、愛知県立小牧高等学校の井手広康先生が、「大学入学共通テスト『情報』試作問題におけるシミュレーション問題に対する分析」と題して、試作問題の第4問を授業で生徒に解かせ、その交通シミュレーションを実際に実習した実践事例が報告されています。井手先生にご許可をいただいて、内容をご紹介いたしますと、最初にこの第4問を解かせてから交通シミュレーションを実際に実習し、その後再度この問題を解かせるというものでした。その過程で、生徒に足りない資質・能力を明確にして、自らの授業改善にも役立てるという、素晴らしい実践研究でした。

 

また、神戸市立科学技術高等学校の中野由章先生など高等学校の先生方が、この試作問題について、動画などで詳しく説明していただいております(※2)。このような高等学校の先生方の取り組み、つまり高等学校の先生方がどう感じているのか、生徒にとってこの問題はどうなのか、などを知ることができる貴重な機会と考えております。

※2  https://www.youtube.com/watch?v=LY7Y9awXScA&t=92s

 

 

試作問題は、全国高等学校長協会や各都道府県の教育委員会等に検討をお願いするために発出したものです。ぜひ関係者間で共有していただき、多くの先生方に見ていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

最後に今後の予定をお伝えします。現在、出題教科や科目において、各団体でまとめられた意見を基に、大学入試センターで検討を深めている段階です。大方の方向性を今年度中に、何らかの形でお伝えすることになるかと思います。


 仮に「情報」が大学入学共通テストに入るということであれば、その時に、「『情報』試作問題(検討用イメージ)」とは別のタイプの問題もご覧いただけるよう、準備も進めております。その後夏頃に、文部科学省から新課程の学習指導要領に対応した入試の実施大綱の予告が出る予定と聞いております。

 

大学入学共通テスト「情報」について、何とぞ、これからもご協力をよろしくお願いいたします。

 

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