New Education Expo2019 

【パネルディスカッション】

学習の基盤となる情報活用能力の体系的な育成~実践事例から考える育成方法

まとめ~すべての学校で情報活用能力をよりよく育成するために

宮城教育大学 安藤明伸先生

「情報活用能力」は、無意識に行っていた授業スキルを意識化するキーワード

今日話していただいたいろいろな事例と、泰山先生のお話をまとめて、さらに抽象度の高い言い方をすると、情報活用能力の育成には、学校の実態や地域の特性を積極的に活かしていくことが非常に大事であることを感じました。そして今日のお話から、「情報活用能力」がもう少し一般的な言葉になってもいい、職員室で共通のキーワードとして話に出てくるようになってもいいのではないかという気がしました。

 

以前ICTが学校に導入され始めたとき、けっこう職員室で共通のキーワードになっていろいろな話ができる、という話を聞いたことがあります。情報活用能力というのは、もう一歩進んで、学習の基盤としての位置づけが明確にされたということからも明らかなように、各教科で今どんな学習活動をしているのかという話を、管理職も先生方も交えて話題にできるキーワードではないかと思います。そうなると、教科を横断して、子どもたちにどのような学習活動をさせたいのか、そのためにどのような情報活用能力を育むと良いのかという共通の課題が認識できるので、職員室の雰囲気も多分すごくよくなるのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。

 

さて、今回出てきたいくつかのキーワードを拾ってみました。

 

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「言われなくても、そういうことなら昔からやっている」という話もあると思います。ただ、それは先生方ができるところで何となくやってきたのではないか、あるいは職能として、無意識のうちにやっていたことかもしれません。

 

ただ、そのようないわば職人的なスキルというのは、その人に内在する技能なので、次の世代に伝えるとか、組織的にうまく回していくというのはなかなか難しいわけです。なぜそうするかという理由を聞かれて「何となくそう思ったから」というのではダメで、無意識を意識化するということをしなければならない。私は、カリキュラムをマネジメントすることを考えるときに、この視点は大切だと思っています。

 

そして、「これって(教科名)の授業じゃないよね」という話です。先ほど、下敷きの使い方やノートの取り方というのは、特別にどこかの教科で教えるわけではなくても、それをいろいろな教科で使うことで効果が出てくるということを考えると、情報活用能力というのも、全体の単元指導計画の中、あるいは1年生から6年生までのバランスを見て、長いスパンで培われて、少しずつそのスキルを伸ばしていくべきではないか、あまりミクロに一つの授業だけ取り上げて、かえって「これは算数の授業じゃないんじゃないか」という議論にならない方がよいのではないかという気がします。

 

これまでは、教科のねらいを達成するということだけをあまりにも意識し過ぎてー意識することは必要なことなのですがーそれが教科の縦割りにつながってきているので、今回ご発表いただいた学校の取り組みは、「教科横断」ということを意識的にできませんか、というメッセージであるように思います。

 

最近心配なのは、「プログラミングをやろうとしたけれどうまくいかない」という話があったとき、それは本当にプログラミングがうまくいかないのか、それともその授業で前提としていた情報活用能力がミスマッチだったのか、ということです。仮にうまくいかなかったとき、その授業の学習活動に必要な情報活用能力は十分身に付いていたかということも、検討して欲しいと思いますし、これからの指導案には、その授業で必要とされる情報活用能力も書くようにしてはどうでしょうか。

情報活用能力の体系表は、学校の環境やレベルに合わせてどんどんアップデートしよう

そして、情報活用能力育成のステップ5までの体系表は、組織の中での共通理解のための一つの目安的なもので、各学校でそれをアレンジするということが大切であるというお話がありました。学校の特性を生かすという点では、例えば先ほどの長野県の事例のように、いわゆる過疎地ではテレビ会議のシステムを使うのが効果的だということになった時、実はこの体系表にはテレビ会議ということは盛り込まれていません。しかし、その地域の実態に応じて情報活用能力の体系に位置付けてよいと思います。

 

皆さんは、テレビ会議をやったことはありますか。発話のタイミングが取りにくくて、結構やりにくいですよね。子どもたちが、最初の一回は間が取りにくくて、コミュニケーションがどうもうまくいきませんが、そのうちに慣れてきて、うまくコミュニケーションができるようになったとすれば、それはその子たちにとって必要とされた情報活用能力ができたということになります。その体験によって、子どもたちの方から「先生、今度もう一回zoomしようよ」というように、子どもの方から学習の手段が提案されてくると良いですね。

 

また、プログラミング教育というと、プログラミングの方法を教えるというイメージが強いかもしれませんが、何度か実践を積み重ねていくと、先生方もプログラミングを学習の手段・表現の一つとして位置付けるということがイメージできるようになると思います。小学校で、もし乱数の考え方を使える子が出てきて、授業後に「先生、これプログラムでやったらどうですかね」などという提案が出てくると、先生も授業が楽しくなるだろうと思います。

 

最後に、情報活用能力というのは、不易の部分と常にアップデートしていく部分があると思います。ですから、情報活用能力のPDCAというのは非常に意味がありますし、今年作ったものを来年どのようにアレンジするかということも大切です。ウェブ上にIE-Schoolの報告書(※)があって、詳しい情報等が載っていますので、各学校の参考にしていたただきたい。そして、全国の子たちが地域の格差なく、情報活用能力を発揮できるようになってほしいと思います。

 

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1400796.htm