2020年度からの新学習指導要領を踏まえた教育の情報化の推進について ~教育の情報化の最新動向と今後の展望

文部科学省生涯学習政策局情報教育課長 梅村研氏

Society 5.0に向けて教育の情報化はどうあるべきか

今後教育の情報化をさらに進めていくことが、ますます重要になっていきます。2017年3月に、2020年度からの改訂学習指導要領を告示し、ICTを活用した学習活動の充実が求められています。また、教員の働き方改革の観点から校務の情報化も重要になってきています。一方、最近はEdTechという言葉も出てきていますが、今後AI等がより進化し、インターネットであらゆるものがつながって社会が大きく変容する時代、いわゆる「Society5・0」に備えて、どのような人材を育てていくべきか、そのためにはどんな教育が必要かといった議論も各所で行われています。

 

文部科学省でも、大臣の懇談会や省内タスクフォースで議論してきたことを「Society5・0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」(※1)として、6月5日に公表しました。こちらもぜひご参照いただければと思います。

 

※1  http://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2018/20180605.htm

 

さて、本日は、教育の情報化の現状はどうなっているのか、そして、自治体・教育委員会、学校、そしてそれらに係る事業者などにおいて何を進めるべきなのかということについて、特にこの1年の政策の動きを中心にお話ししたいと思います。

 

教育の情報化が目指すもの ~「情報教育」「教科指導におけるICTの活用」「校務の情報化」の3つの観点とそれを支える基盤 

最初に教育の情報化が目指すものについてお話しします。私たちは、教育の情報化に向けて三つの側面で取り組みを行っております。

 

まず一つ目は「情報教育」で、情報活用能力をいかに児童生徒が育むかということです。情報活用能力とは、情報をいかに受け取って、処理して、またそれを発信していくかという能力です。情報技術すなわちパソコンやインターネット等の使い方も含めて能力を身に付けていくことも含まれます。昨今のプログラミング教育や情報モラル教育といったことも含まれています。

 

二つ目が「教科指導におけるICTの活用」です。授業でICTを使うことで、わかりやすい授業や、学習指導要領に書かれている「主体的・対話的で深い学び」への授業改善となることが期待されるということです。

 

そして三つ目が「校務の情報化」です。これはいわば学校のバックヤードの話ですが、先生方は、成績処理や出欠の管理、また保健関係・指導要録の作成といった業務を多々お持ちですが、校務の情報化を進めることでこういった作業時間の削減につながり、結果的に生徒と向き合う時間を増やすことができることが期待されます。これらの三つの側面を通じて、教育の質の向上を目指すことが私どものミッションであると考えています。 

そして、このためには上図の下に書いてある三つの基盤が必要だと考えています。一つ目が、教員の皆さんの情報教育・ICT活用指導力の向上、二つ目が、学校のICT環境整備の促進です。さらに、それに伴って教育情報セキュリティの確保も必要です。こういった全体を見据えながら、今、いろいろな施策を立案し、実行しているところです。

 

下図にあるように、この1年でも、実はこれだけのことを新しく発信しました。例えば、2017年12月にICT環境整備方針を策定し、地方財政措置も拡充しました。2018年3月には、小学校プログラミング教育の手引きを策定しました。その他にも、大学の教職課程での各教科の指導法を学ぶ授業科目の中で情報機器や教材の活用を習得させるよう、教育職員免許法施行規則を改正したり、教育情報セキュリティポリシーのガイドラインを策定したりしています。それぞれについては後程お話ししてまいります。

 

最近の政府方針や戦略においては、教育の情報化が重要施策の一つとして位置付けられています。これは2017年の6月に閣議決定された、いわゆる骨太の方針と呼ばれているもので、翌年度の予算施策等々の重点政策を取り込んでいる文書ですが、この中に「情報活用能力の育成を含む教育の情報化」ということが明記されています。

 

また、下図が成長戦略、現在は未来投資戦略という名称になっているものですが、学校のICT環境整備の計画の策定率のほか、無線LANの普通教室への整備や教員のICT活用指導力について100パーセントを目指すとされています。これらは、現状ではまだ30パーセントそこそこの指標もありますが、2020年度に向けて飛躍的に伸ばしていくことに取り組む必要があるということです。

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学習指導要領の改訂は大きな転換点

この度の学習指導要領の改訂は、教育の情報化について大きく前進する内容になっています。学習指導要領は、ご承知のとおり、全国のどの地域でも一定の水準の教育を受けられるようにするため、各学校がカリキュラムを編成する際の基準となるものを定めています。約10年に1回改訂されますが、今回は2020年度から小学校で全面実施ということで、その10年後の2030年の社会を視野に入れて、改訂の議論が行われてきました。情報化やグローバル化といった社会変化が、人間の予測を超えて進展する時代となり、AIやIoTが今以上に発展する時代になっていると考えられます。

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2011年に小学生になった子どもの65パーセントは、将来、今存在していない職業に就くという予測があります。また、今後20年で今ある半数近くの仕事が自動化されてしまうという予測もあります。

 

このような社会になったら、今学校で教えていることが通用しなくなるのではないかという懸念もありました。今回の学習指導要領の改訂では、そういった社会の変化を踏まえて予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合って関わり合って自らの可能性を発揮できること、そしてより良い社会と人生の作り手となるための力などを目指そうということで進められました。このため、今回の学習指導要領のキーワードとして、「社会に開かれた教育課程」、「育成を目指す資質能力」(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱で整理)、「主体的・対話的で深い学び」、「カリキュラム・マネジメント」等が挙げられます。 

 

そして、こういった社会を生きるために必要不可欠な情報活用能力をいかに育成するかということも、議論されました。図の赤線部分をご覧ください。将来の予測が難しい社会では、情報技術を受け身で捉えるのではなく、手段として活用していく力が大事であることや、社会生活の中でICTを日常的に活用するのが当たり前の世の中になっている中で、現在の学校ではそうなっていないではないかという問題提起がされました。これらを踏まえて、新学習指導要領ではこの情報活用能力を、言語能力と同様に学習の基盤となる資質・能力と位置付けたのが大きなポイントです。そして、そのために学校のICT環境整備と、ICTを活用した学習活動の充実を求めています。

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そしてもう一つのポイントは、小学校プログラミング教育の必修化を含めて、小中高を通じたプログラミング教育を充実することを求めていることです。新学習指導要領は、小学校については2020年度から実施されますので、今後様々な準備を早急に進めていく必要があると考えております。そして、中学校は2021年度、高校は2022年度から実施されます。 

 

学校のICT環境整備~具体的な目標や仕様を明確にして促進を促す

各論として、最初にICT環境の整備状況からお話しいたします。下図は都道府県別の学校ICT環境整備率のデータです。一番上にあるように、教育用コンピューターに関しては、昨年3月時点で5.9人に1台という状態です。その前の年の6.2人に1台よりは多少は進んでいますが、目標値である3.6人に1台にはまだほど遠い数字です。

 

また、普通教室への無線LAN整備もまだ30パーセント程度です。無線LANの整備には、校内の有線LANが各普通教室まで行っていることが必要ですが、ここは88パーセントで、かなり整備が進んでいます。また、超高速インターネットは、総務省の定義の30Mbps以上というところで見ると9割程度整備されていますが、100Mbps以上では、まだ47パーセントという状況です。電子黒板の整備率は24パーセントで、まだ全国的にICTを使いこなしている状況ではないということがおわかりいただけると思います。

 

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下図が、私どもが考えているICT環境整備のステップです。現在はコンピューター教室に行けば1人で1台使えるようになっていますが、これからは普通教室でICTを使って活動することが重要です。そのためには、最初のステップとして、普通教室に大型提示装置(プロジェクター、電子黒板)と先生のパソコンがあり、クラスの全員に提示できるということがステージ1です。

そしてステージ2はグルーブに1台可動式のPCがあり、各教室で無線LANが使える状況です。ステージ3は、先生が授業展開で必要なときに、1日1回程度、児童生徒が一人1台の環境で授業ができるということです。そのためには、3クラスに1クラス分程度の端末が配備されていればできるのではないかということです。この数字は、有識者会議の議論でもこのくらいではないかということになりましたし、私どもがICT活用・整備の先進校を数十校調査したところ、やはり1日に1コマから2コマ程度使うということでした。ですので、全国的にはまずはこのステージ3を目指していこうと考えています。もちろん、その先にはステージ4の一人1台専用で使えるという環境もあると思いますし、今私どもが行っている実証事業では、生徒の学習履歴をどう活用するかといったことも視野に入れてステージ4の検討もしています。

 

このステージ3を目指すために、具体的に最低限必要とされ、優先的に整備すべきICT機器と設置の考え方を、2017年12月に整備方針ということでまとめました。全文は、このホームページ(※2)に記載されていますのでご覧ください。

 

※2  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1399902.htm

 

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下図を見ていただくとおわかりになるように、「3.6人に1台」という目標は、ざっくりと申し上げると各学校がコンピューター教室に40台、それとは別に可動式の端末40台を持ったとして、これに学校数を掛けて、生徒数で割ったものが3.6ということです。「3クラスに1クラス分」という形にすれば、学校の規模に関係なく、さほど調整を行わなくても1日1回程度は使えるだろうという発想で目標を定めました。そして大型提示装置は、今までは電子黒板としていましたが、インタラクティブ機能以上に、一番基本的な、大きく提示する機能が大事だろうということで、「大型提示装置」という言葉に書き換えました。それ以外にも、新規追加で、例えば充電保管庫や学習用サーバー、あるいはソフトウエアでは統合型の校務支援システムやセキュリティーソフトといったものも大事ですよ、ということで盛り込んでいます。 

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下図は、先ほどご紹介したホームページに「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について」として載っていますので、もとの文章をご覧いただければと思います。ここには設置の考え方・機能の考え方として概要が書かれています。詳細なスペックは、どういうコンテンツを使いたいのか、どういう授業をしたいのかという学校現場、あるいは教育委員会で決めていくことであると思いますが、例えば学習用コンピューターであれば、キーボードの機能は有した方がよいとしています。

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キーボード機能は、ハードウエアのキーボードでも、ソフトウエアでも構わないということですが、キーボード入力は今後も社会に出て行く上での必須能力だと認識しています。そういった意味で、ローマ字を学習する小学校・中学年以上は、ハードウエアキーボードを必須とした方がよいということも書かれていますので、こういったところをご参照ください。

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ICT整備のための地方財政措置も確保。各自治体でぜひ予算化してほしい

今の整備方針を踏まえて、2018年度から2022年度の5年間、単年度1805億円の地方財政措置を講じることが決まりました。ですので、自治体ではぜひこれを活用してICT環境整備を予算化し、整備状況を上げていただきたい。また、この中には設備以外にもICT支援員を 4校に1校程度で配置できるような額も積んでいます。

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私どもが自治体とお話しするときに一番重要なこととして示しているのが下図です。新学習指導要領では、情報活用能力を育成するためにICT活用が必須になり、そのためにはICT環境の整備が喫緊の課題ですよ、ということです。そして、そのための地方財政措置(地財措置)を拡充して講じましたので、それを踏まえて整備を進めてくださいね、ということです。

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この地財措置について簡単にご説明しますと、ICT環境整備に係る経費は基準財政需要額に含められます。これが自治体の収入(税収)と比べて少ない場合に、地方交付税が措置されるということです。ですので、地財措置をしたということは、財政的に弱い自治体でもICT環境整備ができる財源の保証をしているということです。これを国の補助金にしてもらえないかという希望はあるのですが、自治体のものは自治体で整備することが大原則であり、国の補助金という形は難しい。しかし、国として全国的に整備を進めたいということで、地財措置をしているということです。

 

ですので、今何より必要なのは、教育委員会の中でICT環境整備が大事だということをしっかり認識いただいて、財政部局や首長の方々に対してこの経費を予算化するよう説明・働きかけを行っていただくことです。私どもも、いろいろな観点からそういった教育委員会の取り組みを支援するための方策の一つとして、学校のICT環境の実態データの「見える化」を行っております。

 

整備が進んでいない自治体にとっては厳しいかもしれませんが、この都道府県と市町村別の整備データは、数値データのみならず、項目ごとの同じ都道府県内で市区町村別の順位もホームページに出しています(※3)。また、さらに市区町村の整備状況が比較できるグラフも出しておりますので、こういったものを説得材料に利用していただきたいと思っています。

 

※3 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1287351.htm

 

 

ICT活用のノウハウを持ったアドバイザーも紹介

私どものもう一つの取り組みとして、ICT教育活用アドバイザー制度というものがあります。これは、ICT環境整備をしたいのでアドバイスがほしい、あるいはICTを活用して教育を進めたいけれど効果検証の仕方がわからないといった課題を抱える教育委員会に、ノウハウを持ったアドバイザーを紹介し、派遣するというものです。

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下図にあるように、自治体でICT環境の調達をされた方や教育効果を把握をされた方、情報教育の専門家など様々な専門家がいらっしゃるので、どのような分野でのアドバイスが必要かをおっしゃっていただければ、それに合った方をご紹介し、年3回ほどの派遣をしますので、お問合せいただければと思います。

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また、総務省にも防災の観点から公衆無線LANの補助事業がありますので、これもぜひ活用の検討をいただきたいと思います。

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プログラミング教育を中心とした情報活用能力の育成

次に、プログラミング教育を中心とした情報活用能力の育成についてお話しします。「なぜプログラミング教育なのか」ということでは、やはり先ほど申しましたように、情報技術を受け身で捉えるのではなく、手段として活用していくことが重要となっているためです。そして、コンピューターがいろいろな場面で活用されていることを把握する。また、コンピューターは単なる便利な魔法の箱ではなく、プログラムなどによって動いていることを知り、主体的に活用できるようになる。このようなことが、今後どのような職業に就くとしても重要となってくるだろうという認識のもとで、プログラミング教育が実施されることになりました。

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小学校では、文字入力など基本的な操作の習得と併せて、プログラミングの学習体験をしながら、新たにプログラミング的思考、論理的思考を育成していくことを必修としています。中学では、もともと技術家庭の中で行われていたプログラミングを拡充します。そして高校では、共通必履修科目「情報Ⅰ」を新設し、この中で今までは2割程度ぐらいの高校生しか学んでなかったプログラミングを、全員が学ぶことになっています。

 

まず小学校のプログラミング教育というのは、初めての話になりますので、先生方の不安もあろうかと思います。このため、今年3月に「プログラミング教育の手引(第一版)」(※4)を公表しましたので、ぜひともこういったものを参照いただいて、2020年度からの全面実施に向けて準備をいただきたいと思います。

 

※4 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm

 

小学校プログラミング教育の狙いや位置付けが下図です。コンピューターに意図した処理を行うように指示ができるということを各教科で体験させながら、情報活用能力に含まれる論理的な思考を育成したり、それと同時に各教科の学びをより確実なものとしたりするということです。

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先ほどの「プログラミング教育の手引」では、小学校のプログラミングの活動場面を、AからFまでの六つの類型に分けています。これは、小学校のプログラミング教育が、民間等のプログラミング教室で行われているような(→教育課程外ですので、この分類でいえばEとFにあたります)、高度なプログラミング言語を学び、アプリを作るというようなことを求めているわけではないので、教員の方にとって誤解が生じないように類型化したものです。

 

Aの「学習指導要領に例示されている単元で実施するもの」は、例えば5年生の算数の正多角形について学ぶ際に、プログラミングを使って図形を描くというものなどです。今後はBの「学習指導要領には例示されてはいませんが、教科の内容を指導する中で実施する」といったところの実践も進めていただきたいと思います。こういった活動の参照となるように、手引きでは指導例を9例ほど掲載しています。

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3省連携の「未来の学びコンソーシアム」でプログラミング教育を応援

現在、「未来の学びコンソーシアム」いう文部科学省・総務省・経済産業省の3省連携の官民コンソーシアムを立ち上げて、プログラミング教育の応援をしています(※5)。小学校を中心としたプログラミング教育のポータルサイトを立ち上げて、指導事例の掲載も拡充していきます。

 

2020年度のプログラミング教育の本格スタートを前に、2019年度に教育委員会で本格的な準備ができるように、いろいろな題材を提供しています。すでに手引きを公開いたしましたので、今年度は各教育委員会で少なくても1校はこのような実践的な授業を行ってみて、来年度どのような教材や設備などが必要なのか、もし有償の教材を使うならそのための予算の確保をしていただきたいと思います。そして、来年、2019年度には、教育委員会の中の全部の学校で模擬授業を行い、指導に係る全ての先生がプログラミングを体験する、あるいは全部の学校で実際の授業を行うといったことを目指して進めていくことが大事ではないかと思います。コンソーシアムでは、これに向けた工程表も作っています。  

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カリキュラム・マネジメントや情報モラル教育の充実も

情報活用能力全般については、「情報教育推進校(IE School)」という取り組みも行っています。この中で、カリキュラム・マネジメントによる年間を通した情報活用能力育成の事例についても整理していきます。

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また、情報モラル教育も一層充実を図っていただきたいと思っています。ご存じのとおり、小学生にもスマホが急速に普及してきており、今の小学生への普及レベルは3、4年前の中学生と同じという状況です。そういったことも踏まえて、文部科学省では教師用の情報モラルの指導資料を改訂していきますし、児童生徒向けのリーフレットも毎年修正して、全中学1年生に配布をしています。また、情報モラル教育指導者セミナーでは、SNSやアプリのインストールなど、新しい環境を踏まえた事例を提供するようにしています。

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学校教育法改正でデジタル教科書の使用も可能に

教科指導におけるICTの推進ということについて、学校教育法の改正についてご説明します。これは、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や、障害などが原因で紙の教科書を使って学習することが困難な児童生徒の支援のために、必要に応じてデジタル教科書を通常の紙の教科書に代えて使用することができるというものです。これは、紙の教科書を使わないというのではなく、併用が可能になったということです。義務教育では紙の教科書は無償で配布しますがそれも残した上で、それと併せて必要に応じて教育課程の一部で紙の教科書をデジタル教科書に置き換えて使うことができるという法律改正です。

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デジタル教科書のイメージですが、下図の左上が紙の教科書です。これを電磁的に記録しているものがデジタル教科書で、これをタブレット端末などで見ることになります。同じものを見る際に、拡大・縮小、ハイライト、読み上げなどができます。さらに、アニメーションや動画、ドリルなどのデジタル教材との連携がしやすくなるということに期待が高まっています。 

ただ、デジタル教科書の使用にあたっては、視力への影響や姿勢の問題なども懸念されていますので、そういったものも踏まえたガイドラインを出していきたいと考えています。

 

教育の情報化に合わせた著作法の改正も

ICTの利用に当然関わってくるのが著作権法です。このほど、教育の情報化に対応した権利制限規定が整備されました。今までは、新聞や雑誌等をコピーして授業において紙で配布することは、権利者に無許諾・無償で行えることになっていました(著作権法35条第1項)が、例えばこれらをPDF化したものを生徒の端末にサーバーから送るとなると、公衆送信にあたる場合は、著作権法上では権利者の許諾を得なければならず、実際はなかなか大変な状況がありました。そのため権利フリーのものを使って教材を作られていた教師もいらっしゃったと思いますが、今後この制度が運用されると、一定の額を払えばワンストップで自由に使えるという法改正が行われたということです。これによって、教師の方が違法な利用をすることなくデジタルの教材を作ることができるようになります。

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教員のICT活用指導力の向上、教務の情報化、セキュリティポリシーの策定

ICT活用指導力の向上という点では、授業中にICTを活用して指導できる教員の割合が、昨年は75パーセントになりました。こちらについても、自治体での研修の充実が重要になります。私どももいろいろな支援をしておりますので、ぜひ各自治体で推進していただきたいと思います。

 

校務の情報化については、下図は大阪市教育委員会と北海道教育庁での事例ですが、教員の働く時間の削減につながるという結果が出ています。自治体の規模で言うと、やはり小規模自治体は導入が遅れがちになりますので、都道府県単位で進めるというのが有効ではないかということで、それを進める実証授業も今年度から行う予定です。

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情報セキュリティポリシーについては、学校向けのポリシーを、自治体あるいは教育委員会で策定していただくことが重要だと思いますが、2017年10月に、総務省で作られている自治体版のセキュリティポリシーガイドラインの教育版を文部科学省が作りました。学校現場は、子どもがICTに触るということが前提となるのが特徴なので、そういったことを踏まえた構成にしています。ぜひご参照ください。

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2020年に向けて、未来に向けて今こそICT教育の充実を図るとき

平成30年度予算は、昨年度から何とか1億円強予算を拡充して、指導要領の改訂を踏まえた情報教育の充実への対応、校務の情報化、遠隔教育などの実証授業の実施などを新たに盛り込みました。これらの個別の中身については、ぜひ事業内容のホームページをご参照いただければと思います。

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最後に、教育委員会の皆様には、新学習指導要領の実施を見据えて教育委員会内の理解促進を進めていただき、首長や財政部局への積極的な説明・働き掛けしていただくことで、教育の情報化の施策の優先順位の向上を図っていただくよう、強くお願いいたします。私も自治体に出向していた経験がありますが、財政部局や首長に、いかにわかりやすく説明するかということが大事です。まず喫緊の課題として、3クラスに1クラス分の可動式の学習用コンピューターや、普通教室への無線LAN整備などを早期実施することが必要であり、これを着実に進めるためには、その学校のICT環境整備計画の策定、あるいは校内研修の充実による教師のICT活用指導力の向上、こういったことを進めていただきたいということです。

 

そのための説得材料としては、先ほど申し上げました、この1枚に尽きると思っています。新学習指導要領を踏まえた学校ICT環境の整備方針、そして地方財政措置による財源保障もしておりますので、ぜひとも各自治体における予算化が進むように、喫緊の課題として認識していただければと思っております。私どももいろいろ側面から支援いたしますので、2020年度に向けて、皆で一歩を踏み出していければと思います。頑張ってまいりましょう。

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