事例253

習得・活用・探究の学習プロセスで授業デザインしたコンピュータとプログラミング

千代田区立九段中等教育学校 須藤祥代先生

文部科学省資料に見る「習得・活用・探究」の学習プロセス

ご本人提供
ご本人提供

高等学校学習指導要領解説の総則編には、「習得・活用・探究の学習プロセス」について、「この習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科の『見方・考え方』を働かせながら、深い学びができているかどうか、という視点で、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善をする」ということが書かれています。

 

 

また、こちらの「新しい学習指導要領の考え方 -中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ-」(※1)には、「『主体的・対話的で深い学び』の充実には単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で、習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要」と示されています。

 

※1 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf

 

 

さらに、同じ資料には中学校などの事例として、この習得・活用・探究をどのようにカリキュラムに組んだらよいか、という事例も載っています。

 

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こちらは、中学校の数学の事例です。今回はこれらの単元を参考にして、共通教科「情報」の「情報I」の『コンピュータとプログラミング』の単元について、習得・活用・探究の学習プロセスを考えながら、授業のデザインをしてみました。

 

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『コンピュータとプログラミング』の単元を習得・活用・探究の学習プロセスでデザインする

ここからが、今回の発表の本題です。今年度から始まった「情報I」で、習得・活用・探究の学習プロセスで『コンピュータとプログラミング』の単元の授業をデザインしました。

 

デザインの流れがこちらです。まず「習得」のフェーズでは、コンピュータの仕組みについて基本的な知識を得るために、ソーシャルリーディング(※2)で行いました。

 

その後、その知識を基にアルゴリズムについての練習問題を、個々のペースで進められるように個別学習で行いました。そしてまた「習得」に戻り、小学校や中学校までやってきたビジュアルプログラミングで復習する、ということで、今回はmicro:bitを使って実際にプログラムを組みました。

 

※2 SNSなどのメディアを利用して読書にまつわる情報を共有し、読書体験の向上や、読書体験を通じた人と人との繋がりを実現すること

 

 

その復習を基に、今度は実際に動きのあるプログラムの実行画面を見せて、この動きはどのようにしたら実現できるかを考えて、プログラムを再現する「活用」というフェーズの学習を行いました。

この「活用」のフェーズが終わった生徒は、「探究」としてmicro:bitを使ったオリジナルのプログラムを制作しました。

 

ここまで行ったビジュアルプログラミングの学習の後に、テキストプログラミングに入っていきました。テキストプログラミングでは、e-learning を使って学習を個々のペースで進められるようにしました。

 

今回は、Progate(※3)でPythonを学習し、それぞれのペースで理解しながら進めていくという活動を行い、ここでテキストプログラミングの「習得」のフェーズを行っています。このテキストプログラミングの習得が終わった人は、さらに「活用」・「探究」ということで、先ほどのmicro:bitのオリジナルプログラムを、今度はPythonのテキストプログラミングで作成する、という課題に取り組みました。

※3  https://prog-8.com/courses

 

 

習得:「コンピュータの仕組み」はソーシャルリーディングによる協働学習で学び、確認クイズで定着

個々の授業について見ていきます。まずはコンピュータの仕組みについてのソーシャルリーディング、基本的な知識の獲得で、「習得」のフェーズになります。

 

まずは私の方で、中学校までのコンピュータの仕組みについての復習をざっくり説明します。その後は、協働学習としてグループでの活動になります。

 

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まずグループの中で、このコンピュータの仕組みの単元について、ページ数や内容を割り振ります。各担当は、割り振られた単元についてざっくり読み、読んだ内容を元にグループ内ですぐにミニプレゼンを行います。グループの仲間は、ミニプレゼンで聞いた内容を基にそれぞれ質問を考えます。もうちょっと説明をしてほしいところ、分からなかったところの質問を考えて、OneNoteに記入していきます。

 

OneNoteは班の中で共有されていますので、ここに、「単元で最も大事なポイント」と「他の人からもらった質問」について担当の人がまとめていきます。

 

まとめた内容は、班の中で見せ合うことができるので、実際に記入が終わったら他の人の記入を見て、分からなければさらに質問して、答えてもらって、という形で学びを深めていきます。

 

 

これら一連の学習が終わったら、今回の学びについての振り返りとしてのリフレクションに取り組み、また個人で情報を再構築して1枚のシートにまとめるという「Home Learning」に取り組みます。そして、基本的な知識が押さえられているかどうかの確認のための「確認クイズ」、および確認クイズを何度も解けるようにした「確認ドリル」に個人で取り組む、という流れになっています。

 

 

ビジュアルプログラミングで順次・分岐・反復構造のプログラミング、センサーの制御を復習

続いてアルゴリズムの練習問題です。こちらは、先ほどの基本的な知識を得たことを基に、実際に問題解決の流れではどうしたらよいか、小中学校のプログラミング的思考の復習も兼ねてワークシートで個別学習のように取り組みます。

 

ここでは、具体的にはフローチャートを作ります。

 

 

そしてプログラミングの復習として、中学校でやったビジュアルプログラミングを基に、中学校技術科の「D情報の技術」のプログラミングの単元とリンクしながら、micro:bitで実際に順次・分岐・反復構造についてのプログラミング、およびセンサーなどの復習を行いました。

 

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活用:実際の動きを見てビジュアルプログラミングでプログラムを組む

この学習を基に、「活用」のフェーズとしてプログラムの再現を行いました。

 

今回は4つのプログラムを用意して、flipという教育用動画共有プラットフォームに見本となる動きの動画をアップロードして実習課題を設定しました。

 

この動画を見ながら、生徒は実際にmicro:bitでプログラムを組みました。プログラムを組んで、実際の同じ動きになったら、その画面を収録してflipにアップロードするという形で、実習課題に取り組みました。

 

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探究:オリジナルのプログラムで「何か役に立つもの」を作り、共有する

先ほどの4つのプログラムを作り終えた人から、オリジナルのプログラムの制作に入りました。ここは「探究」のフェーズになります。

 

何か他の人に役立つものを作ろう、ということで、flipに実際に自分が作ったソースコードの説明を上げた動画と、実際のプログラムの動きを示す実演動画をアップロードしました。

 

先ほどの動画を再現するプログラムを作成したflipは、お互いに他の人のソースコードは見えないように設定しましたが、このオリジナルプログラムの制作のflipは、他の人の作品も見ることができるように設定することで、他の人のアップロードされたものも確認して学ぶ、という設定で行いました。

 

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習得:さらに複雑なプログラム作りのためにPythonのテキストプログラミングをe-learningで学ぶ

ここまでの実習で、「実際にもっと細かい設定をしたい」「工夫したい」という生徒も多くいました。そこでビジュアルプログラミングだけではなく、もう一度「習得」のフェーズに戻って、今度はテキストプログラミングを行いました。

 

このプログラミングの単元は、かなりスキル差が大きいので、e-learningで個々のペースで学習を進めることにしました。本年度は、ProgateのPythonのコースで学習を進めていきました。

 

 

活用・探究:ビジュアルプログラミングで作ったプログラムを、Pythonでさらに発展させる

そして、Pythonの学習が終わった生徒は、以前にビジュアルプログラミングで行ったようなオリジナルプログラムを、今度はPythonのテキストプログラミングで行いました。

 

どんなものがよいか、というアイデアを想起させるためにも、テキストプログラミングと同じところにソースコード、および実習動画を上げて、皆と共有を行いました。

 

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今回の習得・活用・探究の学習プロセスで考えた『コンピュータとプログラミング』の単元について、生徒の学びの振り返りの一部を紹介します。

 

実際にプログラムを再現する、という「活用」のフェーズでは、「思うように動かなかった場合、どこが間違っているのかを考えることで、与えられたものだけではなくて、それを基にどう活用するか、次につなげようとするかを考えた」というコメントがありました。

 

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また、オリジナルプログラムの制作という「探究」のフェーズでは、「今回の実践で表現をするにはどうしたらよいかということの理解ができた、そしてまた次につなげていきたいというところを、学びとして振り返ることができていた」というコメントもありました。

 

さらに、もう一度戻った「習得」のテキストプログラミングのところでは、難しさを感じながらも楽しく取り組めることもでき、「習得」という場面で「何回も復習をしてマスターをしたい」というコメントもありました。

 

今回の習得・活用・探究というプロセスは、プログラミングだけではなく、「情報I」のあらゆる学習場面で活用できると思います。これからもいろいろな授業デザインを考えていきたいと思います。

 

神奈川県情報部会実践事例報告会2022オンライン オンデマンド発表より