事例222

マインクラフトを活用(SDGsに関連した)PBL学習

大森学園高校 杉村譲二先生

今回は、「マインクラフトを活用した(SDGsに関連した)」PBL学習」について発表します。これは、私が今年度(2021年度)、情報の授業で実践してきた内容です。こちらが本発表での構成です。

 

 

まず授業についてです。この授業は、3年生の選択科目『PC活用講座』という科目で、約70名の生徒が受講しています。

 

 

なぜPBL学習を導入したか

 

私が今回、授業設計をする上でどのようなことを考えて構築したかをお話しします。これまでこの授業は、P検(ICTプロフィシエンシー検定試験)の対策講座を行ってきました。この内容も生徒にとって大切な内容だと思います。

 

情報の授業も、これまではofficeのアプリケーションの操作、実技系の要素が強い側面がありました。私自身、これまでの授業でやってきた授業全てが「悪」とは思っていません。

 

しかし来年から新学習指導要領にもなり、学びのあり方が大きく変わっているのに、このまま旧態依然とした授業ではいけないという思いがありました。そのため、これまでの内容を素地として、新しい内容へとつなげることができればと思いました。

 

 

このように、新しく授業の内容を考えていく中で、授業内容を新課程のどの分野を入れるかを考えました。そして、生徒の実情に合わせることも大事ですが、生徒の将来も見据えないと発展していきませんし、知識だけではなく、知識を素地としてそれらを発展的な学びへとつなげていくべきだと思いました。そこから内容を「情報社会の問題解決」「コンピュータとプログラミング」に決定しました。

 

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また私自身が「Microsoft認定教育イノベーター」であり、いろいろな先生方の実践事例を参考にする中で、「マインクラフト」を使ってみることにしました。

 

マインクラフトを使って目の前の課題をSDGsの問題解決を行う

 

次に内容です。「マインクラフト」は、ご存知の通り、プログラミングを学習できるツールで、初学者でも日本語でコーディングすることができます。

 

単に写経のように英語の構文を学習しても、生徒のモチベーションが上がらないことが想定されたので、マインクラフトで建築物をつくりながらプログラミングを学習したら効果的だろうと考えました。また高3の生徒ということもあり、今後生徒が大学でプログラミングに触れる機会があれば、この経験が素地となるとも思いました。

 

 

次に、マインクラフトを使って何をテーマに学習するかを決めました。本校の生徒は、穏やかで純粋で、ボランティア活動に積極的であり、SDGsに目を向けている傾向があります。それを見ていて、学校がある大田区に協力していただき、広い世界の前に、自分たちの手の届く範囲でのSDGsの問題解決ができるのではないか、と考えました。

 

そこで大田区役所の都市開発課の方に説明をして、『大田区都市計画マスタープラン』をいただきました。その中にあった大田区の課題を、SDGsの問題解決と結びつけて学習することができればと思いました。

 

そして、「こんな建築があれば私たちが住む大田区はもっと良くなる」というテーマで学習を進めていくことにしました。このテーマはSDGsの11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」の達成への取り組みでもあります。この授業を通して生徒が「新しく何かクリエイトする力」や「問題発見および解決能力」を身につけ、社会に貢献できる高次な学びを得て欲しいと考えました。

 

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結果的に、高3生ということで最終学年なので、これまで培ってきた様々な教科の知識を集約して、ICTの活用能力を生かしながら、ただ教科の知識を学ぶだけでなく、より高次なものへとつなげることができることに至りました。

 

最後に、全体で発表した後に「AI GROW」(※)というツールを使ってフィードバックしました。これによって、ただ感想をアウトプットするだけでなく、コンピテンシーを多面的に評価して、可視化し合うことにも取り組みました。

 

https://www.aigrow.jp/

 

 

こちらが授業の展開です。はじめに70名から19のグループをつくりました。そして、各グループで大田区のマスタープランの中から、『この問題を解決するためにこういう建築物をつくろう』と話し合いも含めて決めさせました。

 

生徒には「問題解決シート」という(ファイル版も含めた)冊子を配布しました。ラフスケッチや設計図を描くことで、チーム一人ひとりに自分の役割を認識させました。この後のスライドで見せますが、Excelで図面を書く生徒もいました。

 

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そして、スライドにあるようなフローで進めて、「制作」に入りました。まずマインクラフト未経験の生徒が多数いたので、「hour of  code」や実際のワールドで基本操作の学習をしました。

 

 

そこから各グループで役割を決めて、制作作業に入りました。「自宅で続きをやりたい」という生徒がいることも想定されていたので、そのグループのメンバー全員がマインクラフトのデータを共有できるように、授業用のGoogle Driveをつくりました。

 

本校はGoogle Workspace for  educationを活用しているため、スムーズに生徒の活用へとつなげることができました。

 

各グループで、自分たちがこの問題を解決するためにこのような建築物を建てた、それによってこのような効果がある、ということを趣旨に発表しました。

 



 

最後に、このような取り組みを振り返ったとき、結果として大森学園高校の建学の精神につながる授業ができたのではと思いました。

 

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また生徒自身が自ら課題を見つけて、それを解決したり、新しく何かをクリエイト、代替案を出すこともできました。今回の振り返り・反省をもとにさらなる情報科のより良い授業ができるよう、精進していきたいと思います。

 

神奈川県高等学校教科研究会情報部会実践事例報告会2021 オンデマンド発表 より