事例215

学習活動を中心にした授業展開について ~記憶に残る学習活動を繰り返し展開する~

世田谷学園中学校・高等学校 神藤健朗先生

思考力・判断力・表現力に重きを置くことで、知識・技能の習得を高める

神奈川県情報部会実践事例報告会2018より
神奈川県情報部会実践事例報告会2018より

来年度から「情報Ⅰ」が始まり、2025年度には大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に入ることによって、生徒たちに知識・技能をどうやって身に付けさせたら良いかと悩む先生がたも多くいらっしゃると思います。

 

大学入試センターが発表している共通テストの問題作成方針には、「知識の理解の質を問う問題や、思考力・判断力・表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視した問題作成を行う」とあります。

 

確かに、授業で学んでから共通テストまで時間があるため、授業を実施する側としても、生徒たちが学んだことを覚えていられるかどうか、不安に思うところです。そこで、知識・技能に重きを置くのではなく、思考力・判断力・表現力等に重きを置いた授業展開を行うことで、生徒たちの知識・技能の定着度を高めるのではないかと考えました。

 

 

今年度はこのような形で、「情報I」の学習指導要領の4分野を網羅する学習活動を細かく設定しました。

 

「情報社会の問題解決」では、「炎上拡散事件について調査分析」を行い、どのような罪にあたるかまで子どもたちに調べさせ、最後にまとめる、という流れを取りました。

 

また「画像の仕組みと計算」では、画像ファイルサイズの計算や、2進法、10進法の計算方法をあらためて確認するなど、分野ごとに教科書の内容を丁寧に網羅する学習活動を設定しました。

 

 

ただ、このように細かい内容を隅々まで行うにあたって、前から順番にやってしまうと、最終的に1学期初めの内容が頭から抜けてしまうリスクが非常に高くなります。そこで今年度工夫したのは、この4分野でゆるやかに難度を上げながら繰り返して授業で取り上げるということでした。

 

 

学習活動から知識・技能に関連付けた授業を作る

 

今年度行った授業構成がこちらです。

 

まずは「炎上拡散事件について調査分析」を行い、その後「こんなことできません動画作成」を行いました。

 

最初の「炎上拡散事件」で画像や動画の話が出てくるので、これが終わった後「画像の計算」に戻ります。

 

その後プログラミングの分野で「アルゴリズムを考える」を行い、またデータ分析の分野で「クロス集計と箱ひげ図」を取り上げました。このように、ゆるやかに内容の難易度をあげながら、子どもたちの興味・関心の高いテーマを設定して授業構成を行いました。

 

 

ここでは、「炎上拡散事件についての調査分析」の具体的な流れについてご説明します。

 

 

最初に行ったのは、ネットを検索して過去の炎上拡散事件を調べ、関連する記事や同じ事件の別の記事も合わせて読むことで、一つひとつの事件の具体的な内容を多面的に知るということでした。

 

次の段階では、それらの炎上拡散事件の中から一つの事件について多くの記事にあたって、時系列を丁寧に書き出すということを行いました。これをすることで、この事件で何が問題だったのか生徒一人ひとりに気づかせ、またその時にどう行動すべきだったかを考えさせました。また、これを通して、炎上・拡散事件の直接の本人だけではなく、その拡散に関わった人にも罪が発生してしまう、ということに気づかせるようにしました。

 

最後に、この事件に関わった人がどのような罪名に該当したのか、どの程度の行為が罪に該当するのか(あるいは該当しないのか)、その根拠となるURLを整理してまとめさせました。

 

この一連の活動で、ネット検索の方法だけでなく、記事を多面的に見たり読み込んだりする知識や、教科書に載っている法的な内容などを自分たちで調べて、具体的な事件と結び付けて考える、ということを行いました。

 

まとめの時間では、教科書に書いてある内容が、生徒が調べた実際の事件とどのように関連付いているかに気づかせ、知識を整理することにつなぎました。

 

このように、「学習活動を中心に」と言っても、最初に講義を行っても、その内容を自分事としてとらえることなく学習活動に入ってしまうため、最初の講義は必要ないのではないか、と考えてこの構成を取りました。

 

 

学習活動を繰り返し、自分の体験として知識・技能を関連付けることで定着を図る

 

授業後のリフレクションとして、テキストマイニングを使ってリフレクションを解析してみました。

 

「①調査」の段階では、炎上、ネット、発言、加害者など、どんなことが発生してしまうのか、「②分析」の段階であれば、どんな流れで謝罪を行ったのか、「③罪名の調査」ではどのような罪にあたってしまうのか、そして最後の「④まとめ」では、様々な権利、肖像権、著作権、個人情報といったところまで発想と知識を広げて整理できていることがわかります。

 

単純な知識・技能については、生徒たちもすぐに忘れてしまうと思います。しかし、今回ご説明したように、学習活動を中心にして、同じ分野を繰り返し復習することによって、知識の定着を図ることができるのではないかと考えています。

 

※クリックすると拡大します。

 

また、これまで情報科が積み上げてきた、過去の面白い実践事例をもう一度振り返ることによって、その事例からどのような知識・技能を身に付けることができるのか、そして今回「情報Ⅰ」に変わるにあたって、より深い学びにつなぐためにどのような学習活動を行うことができるかを考えてみたいと思います。

 

そこで改善を重ねて、実際に学習活動を行って、足りなかった部分に関しては、まとめの授業の中で教科書で補うことができれば、知識として十分身に付けることができるのではないかと思います。

 

「キミのミライ発見」では、「情報Ⅰ」の学習指導要領の項目別に授業事例が整理されています。来年度使用する教科書と照らし合わせながら面白い実践事例を見つけて、自分自身で行えそうなものや、自分の学校の生徒たちに合っているものを選び出しながら実践するのがスムーズであると思います。

 

 

最初にお話ししたように、授業で学んだ知識を共通テストまで覚えていられるかは、なかなか難しいことです。しかし、思考力・判断力・表現力を中心とした授業を行うことによって、自分の体験として知識・技能を関連付けることができるので、知識を多少忘れてしまったとしても、共通テストの直前に、学んだ知識・技能を改めて整理することによって十分対応できるような授業を、実施することができるのではないかと思っています。

 

神奈川県高等学校教科研究会情報部会情報科実践事例報告会2021オンライン オンデマンド発表より