事例191

オンライン授業での協働学習~GIGAスクール構想の1人1台端末を活用した学び

千代田区立九段中等教育学校 須藤祥代先生

ご本人提供
ご本人提供

本校のICTの学習環境は、GIGAスクール構想に伴って、1人1台のパソコンとして、MicrosoftのSurface Pro 7が2020年度末の3月に導入されました。また、それより前からoffice365が導入されており、Teamsをコミュニケーションハブとして学習活動を行っています。

 

今回の実践は、情報科の授業です。授業の形式としては協働学習で、昨年度末に導入されたSurfaceとパソコン室の端末を活用しながら、PBL(Project Based Learning)で学習を進めています。

対面とオンライン、同じ流れで協働学習を行う

今回は、「情報社会の法」の単元を、対面とオンラインで、授業の組み立ても同様の流れで実施しました。

 

まず、本時の説明をして、中学校の復習を行います。そこからグループ活動を行っていきます。グループ活動としてマンダラートを作成し、YES/NOチャート(YNチャート)を作成するというワークをした後に、作成したYNチャートについて班を越えて相互チェックを行い、さらにブラッシュアップをして提出します。そして、最後に個人の振り返りを行う、という流れで行いました。

 

 

グループで取り組む一つ目のワークがマンダラートです。情報社会の法を四つのテーマに分け、それぞれのテーマごとにYesかNoかで答えられる問題を、班でブレインストーミングをしながら考えていきます。詳しい手順は、スライドをご覧ください。

 

 

グループで取り組む二つ目のワークがYNチャートです。先ほどのマンダラートで考えた問題を選んで、このロジックチャートに当てはめていって、班でワークを完成させます。こちらも手順や条件はスライドをご覧ください。

 

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YNチャートを完成させたら、他の班と交換をして確認を行います。問題の正誤が間違っていないか、ロジックが正しいかを確認し、確認が終わったら元の班に戻します。版の中で他の班からチェックを受けたものを確認して、さらにブラッシュアップをしていきます。

 

グループワークは、Teamsを使いながら共同編集でワークを行い、同時にビデオ会議を開いておいて、そこで班ごとにブレイクアウトルームに分かれた中で対話をしながらワークを進めていきます。生徒によっては、ビデオ会議の画面の共有機能を使いながら進めている班もありました。

 

 

授業の最後にリフレクションを取っています。対面とオンラインの結果の違いについて、こちらのスライドにまとめてあります。

 

情報の信頼性を確かめるという観点については、対面もオンラインも大きな差は見られませんでしたが、対面のほうがより深く、例えば質問を改良したいなど学びが深まったということが感じられているようでした。

 

 

作業そのものは対面もオンラインも変わらないが、学びの深さの手応えは異なる

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次に、YNチャートの作成については、対面もオンラインも、作るという作業に関しては大きな差は見られませんでした。しかし、先ほどと同様に、学びの深まりに関しては、やはり対面のほうが深まっていくと生徒は感じているようでした。

 

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今回の授業は、同じ単元を対面のクラスとオンラインのクラスと分けて実施しました。この授業の実施時は分散登校を行っていたため、クラスによってどちらかの方法で行いました。

 

オンラインで実施したクラスに、対面とどのような違いがあったかについて聞いてみました。こちらは自由回答を行って、ネガティブな回答とポジティブな回答、そしてネガティブとポジティブを両方書いた回答に分類したところ、こちらのようなグラフになりました。「直接話を聞くことができない」「相手の顔を見られない」というようなネガティブな回答も半数を超えてありましたが、一方でポジティブな回答としては、「ブレイクアウトセッションで、実際にグループに分かれることで集中してワークができた」というように、メリットとデメリットの両方を感じている、という感想を書いている生徒も見受けられました。

 

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タブの切り替えやチャットなどの工夫で、個人の指導はスムーズにできる

オンラインの授業をしてみて、ファシリテーションについて実際に感じたこととしては、ブレイクアウトルームで直接班に声を掛けたり、見取りをしたりということがスムーズにできました。アプリケーション操作のタブを切り替えながら、各班の状況を確認するということもスムーズにでき、見取りもしやすかったということから、個の指導はしやすいと感じました。

 

グループの見取りもしやすく、グループや個人で困ったこともチャットベースで対応することができたということが、その要因として考えられます。

 

一方で、全体の指導に関しては、一斉にアナウンスなどで指示を出すことはできますが、一斉の見取りに関してはなかなか難しい、ということが課題であると感じました。このバランスについては、オンラインのファシリテーションについて、まだまだ課題があると感じました。

 

生徒の気づきとインストラクショナルのデザインの改善で、オンラインの学びを進める

最後に、生徒に「オンラインでの困ったことを解決するために、どんなアイデアが考えられますか」というアンケートを採りました。その結果がこちらです。

 

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過半数弱の生徒が、「自分たちのコミュニケーションを工夫することで解決できる」と回答しました。それ以外の生徒は、「office365やソフトウェアシステムなど、ICT機器の改善をすることで解決できる」と回答しました。もちろん、オンラインに向いている授業、対面に向いている授業というものもありますし、オンラインの授業デザインと、対面の授業デザインとでは、最大の効果を上げるための工夫は異なると思います。

 

ただ今回の実践で、今ある環境の中で工夫しながら、オンラインで学びを止めずに進めるということもできる、という経験をすることができました。

 

生徒のアンケートから、インストラクショナルデザインを改善していくことで、コミュニケーションをよりしやすくすることもできる、と感じています。

 

また、本校は生徒全員が同じ端末を使っているので、グループに分かれても生徒同士の学び合いもしやすいですし、教員側も授業のファシリテートに集中することもできます。オンラインだけでなく、ふだんの授業でも、生徒がICTを使った学びをしていく中で、生徒の学びを阻害することなく学びを加速していけるような、コンピューターのスペックや、通信も含めた環境を整えていくことの大切さを改めて感じることができました。

 

第14回全国高等学校情報教育研究会全国大会(大阪大会) オンデマンド発表 より