事例143

時数が余ったクラスで実践している情報のクラスワーク的な何か ~「ハゲタカのえじき」を通じた情報の理解~

中央大学杉並高校 生田研一郎先生

ボードゲームを情報科の授業に活かす

情報の授業を何クラスか担当していると、どうしても時数が余るクラスが出てきます。そんな時の時間調整と、「情報」や「問題解決」をより大きな視点でとらえてもらうために行っている活動をご紹介します。

 

私が東京都高等学校ボードゲーム連盟(※1)の会長を務め、部活でボードゲームを指導していることもあり、ボードゲームと情報科教育の親和性を常々感じています。

 

ボードゲームには「礼儀」「集中力」「論理的思考」「相手の立場になって考える」「負けることを受け入れる」「不確定要素を踏まえた推論と意思決定」「リソース管理」「感想戦によるフィードバック」など、様々な教育的な側面があります。

 

今回はこの中で、特に情報科の教育と関係の深い「論理的思考」と「不確定要素を踏まえた推論と意思決定」につながる活動として、ボードゲームの名作「ハゲタカのえじき」を行いました。

 


※1東京都高等学校ボードゲーム連盟のホームページはこちら

https://boardgametokyo.wordpress.com/

 

グループ対抗で「ハゲタカのえじき」に取り組む

「ハゲタカのえじき」(※2)のルールは以下のとおりです。

 

プレイヤーは、それぞれ1から15の数字が書かれた15枚のカードを手札として持ちます。これとは別に、1から10、-5から-1の点数が書かれた15枚の得点カードがあり、これはシャッフルして裏向きに場に山積みした状態からゲームをスタートします。

 


山積みの得点カードを上から1枚表にします。プレイヤーはその数字を見て、手札から任意のカードを1枚選び、伏せて場に出します。全員が出したら、出した手札を同時に表にして数字を比べます。得点カードの数字が1~10の場合は手札の数字が最も大きいプレイヤーが、-5~-1の場合は手札の数字が最も小さいプレイヤーが得点カードを獲得します。

 


得点の高いカードを獲得するためには、なるべく大きい数の手札を出すことが必要ですし、マイナス点のカードを取るのを避けるためには、他の人よりも大きい数を出さなければなりません。

 

ただし、複数のプレイヤーが同じ数字の手札を出した場合は、その数字は無効となり、次に大きい(または小さい)数字のプレイヤーが得点カードを獲得します。全員のカードが無効の場合は、得点カードは誰も得られずに持ち越され、次のラウンドの得点カードとなります。次のラウンドの勝者が、合算した得点カードを獲得することになります(いわゆるキャリーオーバー)。

 

一度使った手札の再利用はできないので、どのカードを場に出すかは、自分の手元に残った手札と、他の人の手元に残っているはずの手札、そして残りの得点カードで何が出るかを考え合わせて決めることになります。15ラウンド行って、手元の得点カードの合計点が最も高いプレイヤーが勝ちとなります。

 

※2 http://www.mobius-games.co.jp/mobiusgames/Hagetaka.html

 

本来は、2~6人で行うゲームですが、クラスで行う場合は、AからFの6つのグループに分けて、どの手札を出すかは、グループ内で相談して決めることとします。また、場に出した手札を回収したり、点数処理をしたりするために、各列に一人ずつサポートスタッフを置きます。

得点カードは教卓のところに山積みにしておき、上から順に開いていきます。

 


自分の手札、得点カード、相手の手札の情報から総合的に判断して場に出す手札を決める

この活動では、得点カードの出方はシャッフルによる偶然のものではなく、最終的に勝ちにいくにはどの手札から出していったらよいかを考えさせるために、予め順番を決めておきます。今回は、以下の3つのパターンを準備しました。

 

 

また、もともとのゲームでは、得点カードで何が出たか、対戦相手がどの手札を使ったかはプレイヤーが自分で記憶しておきますが、この授業では下に示すように板書し、使った手札と得点カードの数字は消され、各チームの得点が記入されていきます。

黒板の情報を踏まえ、自分たちがどのカードを出すのがいちばん効果的かを考えさせています。

 


 

例えば、最後の2手が残った黒板の再現がこちらです。


 

以上のような実践で、チーム内でのコミュニケーションを通して最適解を探したり、全チームの情報分析を行ったりしながら、最初にお話ししたような「不確定な未来に対する意思決定とフィードバック」を経験できるのではないかと考えています。

 

 

この活動について、情報量の変化や多人数のゲーム理論的について、コメントや学問的な示唆をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

※神奈川県高等学校教科研究会情報部会 情報科実践事例報告会2019 ポスター発表より