緊急アンケート

「緊急事態宣言による休校中の生徒の家庭学習のために、どんな活動をしていますか」

オンライン授業を「学びを深める手段」の一つに育てるために

神奈川県立川崎北高校

校長 柴田功先生

 

「神奈川県版BYOD」をフル活用して、今できることを

 

私はこの3月まで神奈川県教育委員会に所属して、県立学校のICT環境整備の推進に携わってきました。神奈川県の県立高校・中等教育学校では、2019年9月からBYODを使用できるようになっています。

 

神奈川県版BYODに関する柴田先生の発表記事はこちら

 

 

4月から本校に校長として着任し、教育委員会でイメージしていたことに早速取り組んでいます。具体的には、臨時休業期間は生徒用に整備したChromebook 82台を教員に配布して校内研修を行い、生徒にクラウドサービスを通して教材を配布・回収できるようにしました。

 

クラウドがあれば何でもできるというわけではなく、今のところは補助的な手段と考えています。現在は、生徒全員がクラウドサービスを利用できるようにすることと同時に、オンデマンド型やライブ型の動画配信の試行をしています。これらのオンライン授業の特徴や課題については、後ほど改めてご説明します。

 

前職では、私の方から学校現場に対していろいろお願いしてきましたから、今自分自身が現場に立ったので、自ら手本を示すのがミッションと感じています。その思いを原動力として自分を奮い立たせ、このような状況の中で取組を進めるためのデモンストレーションを行い、それを在宅勤務している先生と出勤している先生の両方に伝える手段として、Youtubeを利用することとしました。

 

決して完成度の高いものでなくてよいから、まずやってみようという先生方の、少しでも参考になればという思いで作ったものです。ぜひご覧になってください。

 

柴田先生の動画「オンライン授業を始めよう!」はこちら

 

 

ただ、先ほどお話ししたように、クラウドを使ったりオンライン授業を行ったりすることは、あくまで手段の一つであることは忘れてはいけないと思います。

 

生徒の中には、他の学校ではオンライン授業を受けていることを知って焦りを感じる人もあるかもしれません。我々教員にとっても、ただでさえ家庭環境の差が学習機会の差になっているのに、オンライン授業がこの格差を拡げかねないのは、たいへん辛いことです。

 

オンライン授業を進めることで、一部の生徒を見捨ててしまうことになるのではないかと、危惧する先生もいらっしゃいます。その考えはとても大切です。公立学校の現場は、こうした葛藤の中で前進とフォローを同時に行いながら、少しずつ進んでいます。

 

そして、こうした困難な状況の中で、格差が広がらないような方法を模索されたり、できるだけ早くオンライン授業が軌道に乗るようにと動画配信にもチャレンジを始めたりされている先生方の努力には、本当に頭が下がります。

 

 

「アフターコロナ」に活かせる、新しい授業手法づくりを目指して

 

ここで、オンライン授業の特徴について、実際に授業をされたりした先生方からうかがった気づきも含めて授業のタイプ別にご紹介したいと思います。 

 

【同期型(ライブ型)】

・通常の授業を、Zoomなどビデオ会議システムを使って流すもの。生徒同士のディスカッションができ、教員も生徒の反応を受け止めながら授業を進めることができる。

 

・ブレイクアウトルーム(※)でグループワークも可能。生徒はチャットでの議論に慣れているので、むしろ議論はオンラインの方が活発になる。発問に対する生徒の回答も、対面の時よりチャットの方が反応が良い。

※ホスト(授業の場合は先生)が参加者を小グループに分ける設定。自動・手動で簡単にもとのグループに戻すことができる。

 

・一方で、生徒は時間を拘束され、長時間の講義は集中するのは難しく、学校全体で時間割を作る必要がある。普段から一方的な講義をしている教員は、同期型でも一方的な講義になる傾向がある。

 

・教科担当が複数いる場合は、クラス別の授業を習熟度別に変えてことができる。

 

【非同期型(オンデマンド型)】

・生徒は、いつでもどこでも何度でも繰り返し先生の説明を聞くことができる。

既にインターネット上に有効なコンテンツがある場合は、わざわざ動画を作る必要はない。

 

・動画作成にあたっては、まずは持続可能なやり方(→テイク1撮影、原則編集なし、低コストで行う)がよい。

 

・講義動画も大事だが、「本時の目標」、「学び方の説明」、「前回までの学習の振り返り」、「評価基準の説明」などとともに伝えることが大事。教員が顔を出し、声をかけることで生徒の意欲は高まる。

 

 

オンライン授業は、上記の同期・非同期のそれぞれの良さを生かして組み合わせるとよいと思います。また、リアルな授業と同じく、事前にこの単元全体でどういう学び方をするのかを説明し、ルーブリックを示すことも必要です。単に動画を見ておしまいではなく、オンデマンドの講義を聞いた上で、自分で情報を収集し、チャットで話し合い、自分の考えをまとめるといった学びがオンラインでも可能です。

 

レポートや発表の動画(スピーチ、演技、プレゼン等)、作品の画像(ポスター、書道作品、手書きワークシート等)の提出によって、オンラインで評価まで行うことが可能です。ただ、セキュリティポリシー上、クラウドのフォームで定期テストを行うのは難しく、これは今後の課題になると思います。

 

 

こういった試行を積み重ねることによって、今までの対面授業よりオンライン授業の方が有効であるという場合も期待でき、対面授業の代替ではなく、オンライン授業が「アフターコロナ」の学び方の選択肢になる得ることも想定して、今の状況を前向きに考えて取り組みたいと思います。

 

また、リアルに会うことに大きな価値があることを再認識し、今まで以上に同じ場所で同じ時間を過ごす瞬間を大切にしたいと思います。

 

 

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