【授業事例25】

公民・家庭科と連携して、より実社会に即した学びにつなげる

消費者教育を「情報」の授業で実践する~教科の連携を意識した授業とは~

埼玉県立川越西高校 坂本峰紹先生


坂本峰紹先生
坂本峰紹先生

消費者庁が設置した「消費者教育推進会議」が平成24年に公表した「消費者教育推進のための課題と方向」では、消費者教育を体系的に進めるための方策が示されました。ここでは、消費者教育の担い手として、「消費者市民社会の構築」「商品等の安全」「生活の管理と契約」「情報とメディア」の4つの観点から、学校での消費者教育の重要性が説かれています。情報科ではこの中の「情報とメディア」が主な対象の分野とされています。

 

また、それぞれの分野の指導については、各教科が単独で指導するのでなく連携して指導にあたることも方策として挙げられており、家庭科や社会科(公民)など消費者教育の核となる教科だけでなく、各学校が「消費者教育指導計画」を作成し、その計画をもとに教科間の連携消費者センター、消費者団体など外部機関の活用などを推進するよう求められています。

 

「ネットショッピング」を例にした教科の関連
「ネットショッピング」を例にした教科の関連

私は、実践校としてこの取り組みに参加しました。これによって他教科との連携がスムーズになるとともに、身に付けさせたい力や目標を明確にした家で学習する事柄とその時期が明確になり、学校全体で組織的・系統的に授業を行うことができました。さらに、「情報」の授業に新しい内容を取り入れることもできました。

 

この取り組みを通して、今まで各教科で同じようなことをばらばらにやってきたことを、教科の目標と照らし合わせて再構築できたのは、とてもよかったと思います。

 

情報科では、ふだん行ってきた授業内容に消費者教育の要素を題材として取り入れました。具体的には、「不当表示」に関して1年生1学期の家庭科で法律の内容について学び、情報科ではそこで学んでいることを前提として、2学期に情報の信ぴょう性や表現・伝達について学ぶところで、広告の意義・見方・不当表示について調べることと、チラシ作りを行ったのです。

広告の見方では、ふだん目にする雑誌等の広告を題材にして、曖昧表示や誇大表現、根拠のない説明、小さすぎる表示など様々な問題があることに気付かせました。その上で、「スーパーサカモト」のチラシを自分達で作るという設定で、実際にチラシ制作を2時間かけて行いました。商品の写真等の題材はこちらで準備し、商品構成は自由に考えさせました。チラシ制作は、手描きと切り貼りで行いました。その方が、生徒が自由に制作できるからです。

また、動画編集ソフトで自分達でCMを制作する活動も行いました。ここでは、「クリスマスプレゼント」「旅行・観光(行き先は自由)」「バレンタインデー」「高校生をターゲットにする清涼飲料水」などテーマを複数準備しました。ここで作ったものを相互に鑑賞することで、CMのテーマを読み解く態度や、相手に伝えるために何を盛り込んだらよいかを考える姿勢などを各自で考える学習を進めることができました。

 

これらの活動を通して、生徒は「まともな」表現の広告はとても作りづらい、ということがわかります。買ってもらおうというアピールをしようとすると、どうしてもグレーゾーンにならざるを得ないのです。

 

このように「商品を正しく伝えるための工夫」と「景品表示法」とのはざまで苦労することで、生徒達は不当表示とはどんなことかということを、受け手と作り手の両方の立場から理解することができました。

 

こうして他教科と連携することで、生徒の学びを深めることができました。情報の中だけでは教えきれない部分も、他教科や時には外部講師に任せることで、幅が広がりました。課題としては、実施する学年や時期をより詳細に検討する必要がある、ということです。また、事前に教科間で綿密に打ち合わせをすることの重要性を再確認しました。

 

★以下のサイトにたくさんの教材が掲載されています
・消費者生活に関する教育のヒントが満載!
 「消費者教育ポータルサイト」(消費者庁)
 http://www.caa.go.jp/kportal/index.php

・くらしに役立つお金の知識
 「知るぽると」(金融広報中央委員会)
   http://www.shiruporuto.jp/
   →「お金の知恵を学ぶリンク集」(金融学習ナビゲーター)
      http://www.shiruporuto.jp/teach/navi/

・公益財団法人 消費者教育支援センター 出版物のご案内
 http://www.consumer-education.jp/nice/publ/