第66回ICTE情報教育セミナー in 東京

慶應義塾大学SFCの入試問題

植原啓介先生 慶應義塾大学環境情報学部

植原啓介先生
植原啓介先生

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策学部・環境情報学部にはざっと15種類くらいの入試方式があります。大きく分けると一般入試とAO入試、留学生・帰国生入試の3つです。ここでは、AO入試についてお話しします。


2016年2月から一般入試で導入される「情報」入試についてはこちらに詳細

AO入試は、SFCの創立時から行われていて、5つのカテゴリーがあります。


A方式は、学業を含めた様々な活動に積極的に取り組んだ人。B方式は高等学校の成績が優秀で、評定平均が4.5以上の人。C方式は指定されたコンテストで所定の成績を収めた人。IB方式は国際バカロレア(International Baccalaureate)の資格を取得した人です。これは国内でも国外でもかまいません。さらにグローバル方式と言って、海外の教育制度の高校に2年以上在籍した人を対象としたものがあります。これは英語のみを用いて受験するものです。

今日皆さんが作られた問題を拝見して、受験生に1週間タブレットを渡してその中で研究してくださいというものがありましたが、これは私達のAOで言えばA方式に近いと思いました。A方式というのは、大学からの要求というものはほぼ何もなく、自分が生まれてから今まで学んできたことや真剣に取り組んだこと、PRできることをきちんと我々に伝えてください、それによってこちらは判断します、という形式です。

 

また、グループワークの中に評価者が入って話し合いの様子を聞く、というものがありました。さすがに私が受験生のグループに混ざるとしたら、どう考えてもこの人が評価者だなとわかってしまうので無理がありますが、実はC方式(コンテストで所定の成績を収めた人から選考する)で指定しているコンテストの中に「SFC未来構想キャンプ」というのがあります。「SFC未来構想キャンプ」というのは、高校生にSFCの教員が行うまる1日のワークショップを受けてもらって、その様子を教員が評価し、入賞者を決めるというものです。キャンプ自体はあくまで入賞者を決めているものですが、現時点では、ここで入賞した人はC方式で応募できるようになっています。入試自体は普通のC方式です。

そういう意味で、今日先生方に作っていただいた入試問題を見ると、意外に我々が行っているものに通じるものがあると感じました。ただそれが情報科なのかといわれると、私は少し疑問を感じました。私共のキャンパスでは、今日、議論の中で作っていただいたような方式で、すでに実際に学生を採っています。一方でそれとは別に一般入試があるわけです。一般入試で入ってくる学生に期待する学生像とAO入試で入ってくる学生に期待する学生像は少し違うのです。そういう多様性のある学生をキャンパスの中に入れて、そこで切磋琢磨しながらキャンパスの活性化をしていくために、一般入試とAO入試を行っています。

入試問題を作るためには、学習指導要領などを参考にするわけですが、実は情報の指導要領には具体的には何も書かれていないに等しいとも言えます。その意味ではなかなか難しいところがあるのですが、「こういう事は高校では教えなさい」と書いてあることは問うべきなのだと思います。ただ、知識だけを問うだけでなく、やはりその問題で応用力などをいかに引き出せるか、というところが重要なのかと思います。