青色発光ダイオード(青色LED)で、日本人3人がノーベル賞

〜名古屋大・名城大 赤崎勇先生〜

「時流よりも自分の夢」が、生活を変える大発明へ


ダイオードの発明で電気の原理に革命が!!

赤崎勇先生 著書『青い光に魅せられて』が2013年大川出版賞受賞。その受賞式にて
赤崎勇先生 著書『青い光に魅せられて』が2013年大川出版賞受賞。その受賞式にて

今秋は科学技術界に大きく明るいニュースが流れました。

世界最高の栄誉とされるノーベル賞の物理学賞に、青色発光ダイオードの発明で、日本人の3人が選ばれたことです。

発光ダイオードとは、半導体物質を使った素子です。これまで"電気をつける"というと、金属(フィラメント)に電流を流すと電気抵抗が生じて温度が上昇し 発熱化して明るくなる「白熱電球」が中心でしたが、発光ダイオードを用いると、電圧をかけると直接光を放出させるということができるのです。熱エネルギーに変わらない分、少ない電力(1/3程度)しかかからないようになったのです。

さらに、光は、電波同様に波(電磁波)なのですが、波長が短いので、電波よりもたくさんの情報が送れるという特色もあります。インターネットで動画・写真など大容量の情報交換を可能にした光通信は、この原理により生まれたのです。発光ダイオードが放つ光を「位相」をそろえる工夫を加え、レーザーにすることで、大量の情報を載せられるようにし、その情報をファイバーケーブルで送っているのが光通信です。


待望の青色。ディスプレイの華やかさもブルーレイも


では、その発光ダイオードに青色の発光が加わると何が良いのでしょうか。光には3原色があり、赤と緑に加えて、青がそろえば、あらゆる色の表現が可能になります。1960年代に、赤色と緑色を放つダイオードは発明されていましたが、青色を出せる物質はなかなか見つけられず、20世紀中には難しいとされていました。しかし89年に、当時名古屋大におられた赤崎勇先生と天野浩先生が、開発に成功、93年に徳島の日亜化学工業の研究員中村修二氏(現カリフォルニア大学サンタバーバラ校)が、実用に堪えうる装置を創ったのです。

それにより、色とりどりの光が実現でき、青色光に蛍光塗料を塗ったりすることで、白色光も出せるようになりました。破損もしにくく、原理も単純で大量生産もしやすい。発光の効率の良さは、白熱電球の3倍以上とされます。

また、光通信としても、光の中でも青色は特に波長が短いため、通常の2倍の通信容量が可能になります。大容量の情報書き込みが可能なブルーレイディスクも、(“ブルー”の名の通り)青色発光ダイオードが発展して生まれました。

これらのことからわかるように、今回の青色LEDの発明は、人々の生活と社会を変えたすごいものなのです。

注目の分野で、注目されない研究に「夢」を見た

ノーベル賞を受賞した3人の中で、最も基礎となる、青色を出せる物質に最も早く着目し、こだわってきたのは、名城大(当時名古屋大)の赤崎勇先生でした。


『ガイドライン』92年10月号
『ガイドライン』92年10月号

河合塾では、1992年に「光エレクトロニクス」という電子工学の1分野を紹介しましたが(『ガイドライン』92年10月号)、その際、赤崎先生からもメッセージをいただいていました。


当時、光エレクトロニクスは、東京工業大や大阪大などを中心に、まさに時代の中心的な研究分野でした。一方、青色発光ダイオードの研究は、どちらかといえ ば当てのない研究で、注目されることはあまりありませんでした。河合塾で紹介させていただいた際も、下の表のように、あまり注目できませんでした。

『ガイドライン』92年10月号「光エレクトロニクス」の特集ページ
『ガイドライン』92年10月号「光エレクトロニクス」の特集ページ
1位伊賀健一先生は2007年から2012年まで、9位末松安晴先生は1989年から1993年まで東京工業大学の学長をされました。
1位伊賀健一先生は2007年から2012年まで、9位末松安晴先生は1989年から1993年まで東京工業大学の学長をされました。

しかし、赤崎先生のメッセージは、とても楽しそうで強いものでした。光エレクトロニクスを代表する言葉として、次のように紹介させていただきました。

「『ない』ものを実現したい。これが私の夢」(赤崎勇<名城大・理工>)。そんな夢が実際体験できる分野、それが光エレクトロニクスなのかもしれない」


研究というものは、時々の時流や役立つということだけではなく、自分で正しいと思ったことに向かって歩む、ということを端的に表しているように思われます。

やってみないとわからない、でも挑戦することで、世界や社会を動かす、人々の生活を変える成果につながるのだと、理解される良い事例です。

 

赤崎先生は、著書『青い光に魅せられて〜青色LED開発物語』で、大川出版賞という「通信・情報分野で優れた図書」に送られる賞を、2013年に、受賞されました。

その執筆を担当した科学ライターの田井中麻都佳さんに、赤崎先生のそんな研究姿勢が生んだ青色発光ダイオードの開発の裏話をご紹介いただきました。

 

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窒化ガリウムに、20年こだわり続けたかっこ良さ
『青い光に魅せられて――青色LED 開発物語』の執筆で知った赤崎勇先生
田井中麻都佳