OSAKAスマホサミット2014


大阪府では、2014年度から青少年のネット・リテラシーを高めるために、学校関係者や大阪府警察、携帯電話会社などとともに、産・官・学が連携して「大阪の子どもを守るネット対策事業」(平成26年度文部科学省委託事業)を実施しています。


12月14日に、この事業の一環として、青少年自身がスマートフォン(以下、スマホ)の適切な使い方を議論した結果を発表する「OSAKAスマホサミット」が開催されました(@大阪市立北区民センター)。府内の小中高生約15000人を対象としたアンケートの結果発表や、保護者も交えたトークセッション、最後に中高生自身が考えた、スマホの賢い使い方を呼びかける「OSAKAスマホ宣言」の発表などが行われました。驚きのアンケート結果や中高生の本音が飛び出すトークに、会場は大いに盛り上がりました。

■スマホサミットまでの道のり

第1回ワークショップは、2014年6月に行われました。ここでは、大阪府内の小中高生が集まって、兵庫県立大学環境人間学部竹内和雄先生がファシリテーターとなって、自分達のスマホの使い方について話し合いました。この時、子ども達の中から、「実際に子どもがどんなスマホの使い方をしているかを知るためにアンケートをしたい」という意見が上がったので、これを受けてアンケートを実施することになり、スマホ使用の実態を調査するためのアンケート項目を考えて作りました。


このアンケートを、「大阪の子どもを守るネット対策事業実行委員会」の呼びかけで7月から9月にかけて、府内の学校で実施し、小学生(4~6年生)2076人、中学生5238人、高校生7317人、計15285人の回答を得ました。アンケートは、㈱ディー・エヌ・エーが集計し、竹内先生の研究室で分析を行いました。

 

第2回ワークショップは10月に行われ、府内の中高生約30名が、このアンケートの結果を踏まえて、改めて自分達のスマホ・SNSの使い方の問題点を見直す議論を行いました。5-6人ずつのチームに分かれ、竹内先生の研究室の学生がファシリテーターとなり、「スマホの賢い使い方」について、スマホサミット本番で自分達の仲間に呼びかけることができるよう、ワークショップ形式で議論して対応策をまとめ、発表しました。この時まとめた意見は、サミット当日の会場にも掲示されました。



■中高生自身が驚いた! 大人はもっと驚いた!!

~15000人の青少年に聞いた「OSAKAスマホアンケート」集計結果の発表

第2回ワークショップに参加した中高生が、アンケートの結果と自分達で考えた分析コメントを発表しました。司会進行も生徒達が行いました。


※グラフおよびコメント中の数字は、表示のない限り小学生・中学生・高校生を合わせた割合を示します。

 

[携帯電話の所持率]

「ある程度予想していましたが、スマホの所持率の高さに驚きました。小学生の約5人に1人がスマホを持っている、ということにも驚きました」

[ゲーム機(3DS、PSP等)や音楽プレイヤー(iPod-touch等)でネット接続したことがありますか?]

「スマホを持っていなくても、ゲーム機やiPodなどでネット接続をしたことがある小学生が半数以上いました。小学生にも、スマホの使い方の指導や対策が必要だと思いました」

[12時より遅く寝る人は?(Q.夜何時ごろ寝ますか)]

「寝るのが遅くなるのはLINEが原因だと思います。たくさんの人とやっているので、気がつくとすごく遅くなってしまった、というのはよくあります。あとは、パズドラやツムツムなどのゲームも原因だと思います。午前1時から3時は、ゲーム会社の方で強制的に接続できないようにしてほしいくらいです」

 

[イライラすることがありますか?]

「イライラする原因としては、LINEの既読を気にすることが多いと思います。先ほどの寝るのが遅くなるのと関係して、寝るのが遅くなるとどうしても睡眠時間が減るので、イライラしやすくなると思います」


[勉強に自信がありますか?]

「スマホを持っている人で、勉強に自信がある人の割合が極端に低いのは、『睡眠不足』や『イライラする』とつながる結果だと思います。しょっちゅうイライラする上に、睡眠時間が少ないのでいつも眠い。これでは勉強が手につかないと思います」


[健康への影響(Q.1日に使う時間はどのくらいですか?)]

「スマホの健康への影響は、具体的には目が悪くなる、肩こり、疲れなどです。小学生でもこのように感じている人は多いです。スマホを平日でも1日3時間以上使うという人が、50%以上いました。これは予想以上に多いと思いました」


[有害サイトへのアクセスやトラブルの経験はありますか?]

「有害サイトへのアクセスは、知らないでうっかりクリックしてしまったものも含みますが、それでもスマホの方が有害サイトに入ってしまう可能性が高いことがわかります。課金の経験は、パズドラ[パズル&ドラゴンズ]が多いです。プリペイドカードになっていて、コンビニでも手に入れやすいので、気軽にどんどん使ってしまうと思います。ネットトラブルは、LINEが多いと思います。文字だけなので、誤解が多いからです」


[トラブルが起きた時、誰に相談しますか?]

「トラブルが起きた時『誰にも相談しない』という小学生が70%近くいたのは、問題だと思います。親や先生には相談しにくいのだと思います。小学生よりはよく解決方法を知っている中高生が相談に乗ってあげなければいけないのではないかと思いました」


[トラブルの原因になりそうな行動の経験はありますか?]

「『無許可で写真アップ』『面識のない人とメールやLINEをする』『ネットで出会った人に実際に会った』など、トラブルの原因になりそうなことをしたことがあるという答えが、スマホを使っている人に相当いることがわかりました。トラブルに遭うハードルが低くなっていることを感じます」


[ネットでの出会いをどう思う?]

「アイドルのファンサイトなどを通じて、ネットで会う人と簡単につながることができます。ネットは、リアルよりつい話し過ぎてしまうので、相手のことをわかったつもりになりやすいのです。でも、ネットで知り合った人と実際に会ったことのある小学生の9割が『不安はなかった』と言っているのは問題だと思いました」


[使い方の歯止めはありますか?]

「家族で使い方のルールを決めたり、有害サイトへのフィルタリングをしたりしている家庭は、スマホの方が少なくなっています。今まで見てきたように、スマホの方が使う時間が長くなったり、有害サイトへのハードルが下がったりすることから考えると、これはとてもまずいと思います。また、『ケータイを面倒だ』と思う人は、スマホはガラケーの倍近く、約8割います。友達とのやり取りに縛られたり、親に話しかけられてもスマホの方が気になって返事ができなかったりして、本当に面倒だと思うのですが、やめられないというのも事実だと思います」


[炎上しそうな写真を投稿したことはありますか?]

「私達は、これがいちばん危険な結果だと思います。写真でSNSが炎上することで、逮捕されたり、退学になったり、就職が決まった会社が取り消しになるなど、人生を台無しにすることがあるのに、炎上しそうな写真を投稿したことがある人がクラスでこんなにいるからです。ネットの使い方を、もっと自分達のこととして考えていかなければいけないと思いました」


■わかっていてもやめられない、めんどくさくても反応しなきゃいけない…子どもの事情もわかってほしい!

~中高生の代表によるパネルディスカッション

アンケート結果の発表に続いて、中高生の代表6人が登壇し、兵庫県立大学環境人間学部竹内和雄先生の司会で、特徴的な結果についてパネルディスカッションを行いました。

竹内先生)スマホを持っている子が、イライラするというのはなぜだと思う?

  • 夜中の12時過ぎまでいじっていたら、睡眠時間が減るからだるい。
  • LINEでたくさんの人と友達だと、通知音が鳴りっぱなしでイラっとする。
  • 相手がLINEで既読なのに返事を返して来ないのもイライラの原因。自分がすぐ返事がほしいこと(例えば、「明日のテスト範囲どこまで?」)に対して、「既読」がついたあと返事を打っている5分くらいは待てるけど、それ以上はイラっとする。
  • 返事を待っている間に画面を切り替えて、その子のツイッターのアカウントをのぞいてみる。そうすると、相手がつぶやいていることがわかって、「なんでツイッターやってんのに私に返事よこせへんの」とホントにムカつく。


竹内先生)スマホはめんどくさいと思う人が8割いるけど、それでもやめられないのはなぜだろう?

  • 既読のもめごとはよくあるが、ゲームは楽しいし、何と言っても便利だから。
  • LINEの会話に入らないと、学校で友達の話題についていけない。でも、LINEのグループを退会すると次の日学校でリアルにもめていることがある。


竹内和雄先生
竹内和雄先生

竹内先生)「勉強に自信がない」という子が多いのはどうしてだと思う?

  • 長い時間使っていると、どうしても勉強時間が減ってしまうから。
  • ゲームを簡単にダウンロードできるので、いくらでも遊んでしまう。
  • 勉強しようとしても、スマホが気になってつい見てしまう。電源を切っておいても気になる。
  • 自信が持てないというのには、テストの成績がいい・悪いだけでなく、「スマホが気になって勉強に集中できない」ということも含まれると思う。


竹内先生)友達皆が気になるのなら、「テスト期間にはスマホはやめよう」とか、友達同士でルールを決めたらいいんじゃない?

  •  定期テストは、勉強していてわからないところや範囲をLINEで聞いたりするので、スマホをやめるというルール作りは無理だと思う。

 

竹内先生)テスト期間中にスマホを気にしない何かいい方法はあるかな?

  • アラーム機能を活用している。「30分集中して勉強したら、5分見てよい」という設定にする。自分でルールを作って、自分で守るようにしている。
  • パスワードを何回か間違えるとしばらくログインできなくなるので、わざと何回も違うパスワードを入れて、ログインできないようにして諦めをつける。
  • タイムラインで友達に「今試験勉強中でスマホ見られないから、よろしく」と流しておく。
  • 電灯を消したらスマホに出ない、というルールにする。目に入ってしまうとついいじってしまうので、別室に置いておく。
  • 端末はリビングに置いておく。親が見ている前ではやりにくいので、抑えになる。

 

竹内先生)ある県で、「小中学生は夜9時以降はスマホ禁止」というルールを作ったけど、どう思う?

  • 一方的に決められるのはイヤだ。なぜ9時なのか、とか説明してほしいし、使う私達にも相談してほしい。ルールがいやなのではなく、相談もなく押し付けられたくない。


竹内先生)大人が一方的にルールを作るだけではダメなのです。子ども達は、ダメだとわかっていても、スマホの画面が光ったら触りたくなってしまうということを知っておかなければなりません。

 


竹内先生)スマホを1日3時間以上使う人が半分以上いるけど、どうしてこんなに長時間やってしまうのかな?

  • (男子)ゲームを始めるとはまってしまう。モンスト[モンスターストライク]やパズドラで1日3~4時間はやってしまう。最高は土曜の夜に始めて朝の4時までやった。次の日は爆睡した。
  • (女子)私はツムツム、おとゲー[音楽ゲーム]が多いです。
  • DS[ニンテンドーDS]をやっていたのが、代わりにスマホでゲームをするようになった。簡単にたくさんのゲームをダウンロードできるので、スマホの方が楽しい。

 

竹内先生)スマホはゲームの他には何に使うのかな?

  • 通話、メール、SNS(ツイッター、フェイスブック)。ネット検索はPCより速いので便利。YouTubeは見るのもアップするのも使う。特にスマホからYouTubeには撮ったものを直接アップできるので便利。あと、音楽をダウンロードして聴くこともする。そういうことを全てスマホでやるから、どうしても使う時間が長くなる。


集計を担当した(株)ディー・エヌ・エー  カスタマーサービス部 西雅彦氏のコメント
今回のアンケートで顕著だったのは、スマホデビューの低年齢化です。中学生のスマホデビューは小学6年または中学1年の時と回答する生徒が多かったのですが、小学4年生から6年生へのアンケート回答では、小学3年くらいからスマホを使い始める生徒が多くなり、スマホデビューの低年齢化が進んでいる結果となりました。


スマホの使い方やモラルなどを理解する前にスマホデビューして、トラブルに遭っている事例も多数あり、児童・生徒の皆さんへの啓発は課題の一つです。地方自治体や教育機関の皆さんと連携して、我々企業や業界団体でも無料の啓発講座を展開していますので、是非ご活用ください。

 

■悪いことはわかっている。でも、相談できないのはなぜ?

パネルディスカッションの後半は、保護者代表として大阪府・大阪市のPTA協議会の方がパネラーに加わり、議論が続きました。


竹内先生)それでは、保護者の方から一言ずつお願いします。


父親1)うちでは、高校まではケータイを買い与えませんでした。友達からの連絡は家電にしてもらい、勉強する時は親がいるところでする、というルールにしていました。


高校生)私の家には、そういうルールはありませんが、成績が落ちて叱られるなら、先にルールを決めてもらえるのはうらやましいです。ただし、一方的に決められるのはイヤだと思う。ルールはどうやって決めたのですか。


父親1)子どもは小6からスマホがほしい、と言い続けていたので、ずっと話し合って決めました。
高校生)親子で相談して、納得して決めたのであればよいと思います。

 


母親)私のところでは「夜使うのはダメ」「知らない人とつながるのはダメ」「課金はダメ」というルールにしています。実は、以前に子どものゲームの課金が7万円くらいになって、結局親が払ったことがあったので、ルールは厳しくしています。


高校生)ルールがあったら守りますが、もし厳しすぎたら「ちょっとゆるめてよ」と親と交渉します。それで「テストで〇〇点取ったら」などという条件がついたら、勉強も頑張れると思います。スマホのルールについて、親子で話し合うことも大事だと思います。

 


父親2)皆さんに聞きたいのは、LINEで気持ちを伝えることは本当にできるのですか。

 

高校生)文章だけでなく、顔文字や絵文字、スタンプなどを使えば、ちょっとした気持ちも伝えられると思います。

 

中学生)でも時々気を遣って、そんなに気がないのにわざと絵文字を使うこともあります。

 


父親3)知らない人とつながるのは危険だし、実際に会わないとわからないこともあるのに、どうしてLINEでつながりを作るのかな。

 

中学生)リアルが大事なことはわかっていますが、ネットのつながりも大事なのです。ネットの中の自分を作っている、という感じなのです。

 


竹内先生)私の研究室の学生が、「好きな人への告白の手段」を調査したら、「LINEで告白する」という人は1割くらいでした。この数字をどう思いますか。皆さんから見ると、意外に少ないのかな。

  • LINEはラブレターの代わり。LINEなら、リアルの自分のキャラを気にしないで本当の気持ちが伝えられる気がする。リアルの1対1だと、冗談が入ってしまうような気がする。


竹内先生)有害サイト、出会い系に入り込んで被害に遭うのは、自分のIDを教えてしまうことが原因だと思うけど、それ以前にLINEなどで全く知らない人と付き合うことをどう思いますか。

  • ツイッターでフォローしてくる人が、「LINEでもしゃべりませんか」と言って来て付き合いが始まるのはよくある。面識のない人とLINEやメールでつながっている人が57%というのは、あり得る数字だと思う。最初はこわいけど、慣れてくるし、本当の自分を隠してしゃべっているので平気だと思う。
  • 私の友達に、実際にツイッターでフォローしてきた中に気になる人がいて、LINEのIDを聞いて付き合い始めたという子がいる。同じ年同士なので怖くない。そういう出会いもアリだと思う。
  • ツイッターで「このアイドルが好き!」と盛り上がった人同士で「今度会おう」「グッズを買いに行こう」ということになる。「この人(注:アイドルやスポーツ選手)がイイ」という人に悪い人はいないと思う。
  • ツイッター→LINEと段階を踏む間に、相手のことがいろいろわかってくるので、怖くないとわかってから会うようにしている。


来場の京都府警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課 近藤勇二氏のコメント
警察庁では毎年、出会い系サイトやコミュニティサイトに起因する被害児童数を発表していますが、そこに出てくる数値というのは実際に被害に遭っている子ども達の実数ではありません。そこに含まれていない子ども達の被害というものもあります。


現在、インターネット上では、次々に子ども達をターゲットにした新しいサービスが出てきています。子ども達は、そういった新しいサービスを理解し、よく使いこなしていますが、大人はそういったサービス自体の存在を把握していないという事態が発生しています。


単に子ども達がネットトラブルに巻き込まれるというだけでなく、子ども自身が被害者になる事件も多いです。ネット上で、子ども達が危険性を感じず、平気でしていることがどれだけ危険なことなのか、大人がきちんと教えるようにしなければいけないのです。

 

竹内先生)もしトラブルに遭っても、親や先生に相談するという人が少ないのはなぜだろう?誰にも相談しない、という人がこんなに多いのはどうして?

  • 小学生にも悪いことをしているという自覚がある。親に言ったら怒られてスマホを取り上げられるのはわかっているので、気まずい。だから言えないし、言わないと思う。
  • 先生に言うにしても、先生の年齢による。わからない先生にはそもそも説明できないし、説明しても理解してもらえない。
  • もしトラブルに遭って先生に言っても、まず親が呼び出しになるから、相談する気にならない。
  • 先生に言っても有効な方法を教えてくれない。叱るのでなく、相談に乗ってほしいのに。
  • 先生に話すと、まず学年集会になるのがイヤだ。先生は「みんなで共有しよう」と良かれと思ってやるのかもしれないが、どっちみち誰がやったかはすぐバレている。「何であいつのせいで学年集会なんだよ」と思われるのはイヤだし、恥ずかしい。
  • 学年集会で時間を使わせるのは気まずい。プリントにまとめて、5分か10分話してもらえればいい。大きなトラブルを起こした当事者には、「どうやって皆に伝えたらいいか」と聞いてほしい。


竹内先生)最後に、皆さんから一言ずつどうぞ。
[保護者→子ども達へ]

  • スマホについて、子どもからもっと学びたいと思った
  • 子ども達がやっていることを、大人の考え方で上から見てはダメだということがよくわかった。
  • 自分だけで抱え込むのでなく、もっと大人を頼って相談してほしい、と思った。


[子ども→親達へ]

  • 自分の親はわからず屋だと思っていたが、自分達と親の世代とのギャップがあることがわかってよかった。
  • テスト期間中にケータイとどう付き合えばいいか、他の人の意見を聞いてわかってよかった。
  • 自分が言いたかったことが言えたし、人の意見も聞けた。今まで知らなかったことがたくさんわかった。
  • 大人と子どもの違いがわかった。帰ったら親と話してみようと思った。
  • 自分はこのアンケートの結果と同じで、スマホを使う時間も長いし友達とトラブルも起こす。それでも、話し合えてよかった。


竹内先生のまとめ~生徒自身から学ばないと、子ども達の状況はわからない

なぜ子ども達がスマホを使うのをやめられないのか、なぜそんな危険なことをしてしまうのか、といろいろな違和感を覚えられたかもしれません。それでもやってしまうという、子ども達のナマの声を聞いていただけてよかったと思います。大事なのは、それをどのように受け止めていくか、ということです。この社会を作ったのは大人です。真摯に受け止めて、今できるものを考えたいと思います。

「スマホネイティブ」という言葉があります。私の研究室の1年生は、友達の電話番号やメルアドを知りません。知っているのは、お互いのLINEのアカウントだけです。それが、大学院の学生(24才)が新入生の時は、友達になるのはメルアドの交換から始まったといいます。


また、今の3年生が入学した時、人間環境学部の新入生200人のうち、100人が入学前からLINEですでに知り合いだったそうです。ツイッターの自己紹介に大学、学部を書いて仲間を作ったそうです。1年生・2年生もだいたい同じ状況です。ところが、24才の院生はmixiでコミュニティは作っていましたが、学部はバラバラだったそうです。わずか数年の違いで、まったく違うのです。「若い先生」にも、この状況はわからないのです。ですから、生徒から聞いて学ばないとダメなのです。では、大阪としてどうするかということで、最後に「OSAKAスマホサミット宣言」を発表します。


大阪スマホサミット スマホ宣言2014

  1. あと10分 気付けばそれは1時間
  2. SNSのいいねより リアルのいいねをシェアしよう
  3. 見ざる 聞かざる 広めざる
  4. ネットより リアルの出会い 大切に


この4つは、今日ここに集まったワークショップのメンバーが大激論をして、仲間達のために作ったものです。3の「見ざる・聞かざる・広めざる」は、炎上しそうな問題のある写真に反応して、投稿した人を嬉しがらせるのではなく、反応しない、ということでそういう行動を起こさないようにする、ということです。


とてもすばらしいですが、これはまだ途中経過です。今日来てくださった皆さんが学校や家庭に持ち帰り、もっとよいものになるように考えて、変えていってくださればと思います。それによって、よりよいネットとの付き合い方が可能になるのです。

[取材を終えて~ある種の後ろめたさを抱える子ども達と向き合うために]

15000人のアンケートの結果は、スマホをいちばん使っている小中高生の意識や行動の実態を示すものとして、たいへん興味深いものでした。「イライラする」「勉強に自信が持てない」など、学校生活に支障をきたすような影響を子ども達自身が感じているにも関わらず、どうしても気になってやめられない、という状況がよくわかりました。

また、パネルディスカッションでも、参加した高校生の話でも上がっていたのは、「小学生がヤバイ」ということでした。スマホは使わなくても、ゲーム機やiPodなどでインターネットにつながったことのある小学生が半数以上、ネットで出会った人に実際に会いに行った割合は回答した小学生1%(約40人)と少数ではあっても、その際不安がなかったという人は90%、トラブルに遭っても誰にも相談しないという人が7割…という結果は、高校生にとっても衝撃的だったようです。ネットの使い方や情報モラルの指導は、小学校ではまだほとんど行われていないようです。このアンケートからトラブルを回避し、正しく楽しくネットと付き合うために、小学生からの指導が急務であることが示されました。そして、このように文字通り「無免許状態」でネットを使っている子ども達がやがて中学・高校に進んだ時、情報教育で何を・どのように教えるか、ということが大きな課題となってくるでしょう。

子ども達は、スマホやネットの危険性や依存性を知ってはいても、やめることができません。トラブルに遭っても、周りの大人は頼りにならず叱られるだけ、と考えるとますます居心地のよいネットの世界にはまり込むことになるのかもしれません。一方的に決めつけるのでなく、使い方を熟知している彼らから教えてもらう、という姿勢を持ちながら、社会のルールやモラルもきちんと伝え、安全に賢くネットを使う方法を子ども達自身に考えさせる環境を大人が作っていくことが必要だと感じました。