New Education Expo2016

となりの学校ではICT活用どうしてる、何してる

Google Classroomを活用し、個に応じた学びの環境を実現

鎌倉学園高等学校 小林勇輔先生

私は神奈川県の鎌倉学園高校で物理の教員をしながら、学校内の視聴覚、CAI(computer aided instruction)の担当をしています。今日は「鎌倉とICTと私」ということで、本校の校舎リニューアルに伴うICTの環境整備、私の授業実践の紹介、そして私がリーダーを務めるGoogleの教育者グループであるGEG(Google Educators Group)の3つのお話をしたいと思います。

 

校舎のリニューアルに合わせてICT環境を整備

まず校舎リニューアルとICT環境整備に関してお話しします。本校は、鎌倉五山第一位の建長寺という大きなお寺の隣にある中高一貫の男子校です。中高合わせて生徒が約1500名、教職員が約100名います。2021年に創立100周年を迎える記念事業の一環として、校舎のリニューアルを3年計画で実施しています。

リニューアル後の教室です。左上の写真がCAI教室で、iMacが50台と、サブディスプレイが25台設置されています。右上が約500人入れる星月ホールで、ここもプロジェクターとディスプレイが備えてあって、iPadで照明やブラインドや、ブルーレイプレイヤーを全てコントロールできる環境となっています。

 

左下は、校内のマルチスペースで、短焦点の電子黒板機能付きのプロジェクターが4箇所設置されています。雨の日や、部活で自分たちの映像を見るといったことに有効活用しています。

右下が普通教室で、各教室に短焦点型の電子黒板機能付きのプロジェクターがついています。新校舎は、Wi-Fiの環境とプロジェクター、Apple TVが各教室に完備しています。

 

このようなリニューアルを3年計画で行うにあたり、2014年の9月にタブレット端末の導入の検討を開始しました。11月にiPad mini2を共同使用するために50台購入することになりました。実は、ここまで私はほぼ関わっていない状況でした。

 

よく聞く話ですが、「タブレットが学校に来たのはいいけど、さあどうしようか」ということになり、そこで、若手の教員が中心になっていろいろな人たちと話し合いながら、授業で利用する方法を一生懸命みんなで考えながら始めた、というのが私のICTに深くかかわるようになったきっかけです。いろいろ悪戦苦闘して、いろんなアプリやサービスなどをたくさん使って・・・それなりに頑張りました。

 

翌年の2015年の3月に、iPod Airを教員全員に配布することになり、約80台購入しました。その際、全教員が集って、みんなで電源を入れて、IDの登録をして、パスコードを入れて…と大変でした。ですが、若手がベテランの先生を教えたりするような、なかなかいい光景もありました。こうして2015年度は各教員がiPadを持ち、いろいろなことを実践し始める環境が少し整いました。

 

そして今年度4月の新入生からGoogle Apps for Educationのアカウントを渡して、メールのやり取りなどGoogleのシステムを使った教育実践が始まっています。

 

現在は、私がiPad mini2を50台、ほぼ占有する形で授業デザインに使わせてもらっています。もともと私は一斉式の授業に限界や疑問を感じていて、教科書をやめて全部プリントにするとか、いろいろな試行錯誤をしてきましたが、目的として持っていたのは、個に応じた学びの環境を作るということでした。一クラス40人いると、一人ひとりの能力にも差があるので、全員に対して同時に同じ説明をするということに疑問を感じながら授業をしていたところがありました。理解の差があり、実際授業中に頭が働いている、実際に学んでいる時間というのが生徒によって大きく違っていたので、とにかく50分の授業中はフル回転で頭を使うことができないか、といろいろ取り組んでいました。

 

試行錯誤の結果、今年の1月からGoogle Classroomを使うというところに落ち着きまして、これをもう半年近く使っています。今年の4月からは、高校2年生と3年生の物理でこのGoogle Classroomのアプリを使って授業を展開しています。

 

手作りの動画を活用して重要事項を説明。必要に応じてワンポイントセミナーも

具体的な授業の方法です。Google Classroomは生徒と教員が情報交換できる掲示板のようなものです。無料でファイルやスライドの共有ができるので、授業資料を共有するのがとても簡単です。

 

ここに私が授業の単元と教科書の範囲、問題集の範囲を投稿します。さらに、一番下のところにpdfでプリントのデータを貼ったり、その単元に関係あるYouTubeの授業動画にリンクを貼ったりして、生徒がここを見れば授業の単元や内容がわかるようにしています。

 

YouTubeの動画だけではもの足りない部分もあるので、そういう部分に関しては私が授業の動画を撮っています。最初は自分1人で動画を撮っていたのですが、すごくさびしかったので(笑)、ある生徒に「せっかく授業するから、聞きに来ないか?」と声をかけたら、朝早くから学校に来てくれたので、この子に対して授業をしました。明らかに1人でやっている時より動画のクオリティーが上がったのは、ちょっとした発見でした。

 

この動画をGoogle Driveドライブに上げ、先ほどのGoogle Classroomにリンクを貼って、生徒たちが見られるようにしています。これを通常の授業内でも使っています。50分の授業中、生徒たちはそれぞれ動画を見たり、練習問題を解いたりと、一人ひとり違うことをしています。こうして、それぞれがそれぞれのペースで自分の学びたいところ・学べるところを勉強します。

 

私は生徒の間をぐるぐる回って、声をかけたり状況を見たりしながら授業を進めています。たまに「ここがわからない」という子がいて、口頭だけでは説明しきれない時は、移動式の黒板やホワイトボードを図書館に持ち込んで、その子に対して一対一のワンポイントセミナーの指導をしたりもします。

 

一人ひとり活動はバラバラでも、理解や進度を把握できる

多くの生徒がつまづくポイントってありますよね。そういう時は「この問題、説明するぞ」とクラス全体にシェアします。そうすると5、6人出てくるので、その子たちに対して授業をしますが、聞かなくていい子はそれぞれの勉強を続けます。実際の授業中は、プリントを一生懸命解いている子もいれば、問題集を解いている子もいれば、黙々と授業動画を見ている子もいる。教科書を使って自分で勉強している子もいます。

 

それぞれが動画を見るので、イヤホンを推奨しています。あと本人のスマホですね。私が今担当している生徒は130人近くいますが、90%以上がスマホの利用者なので、スマホにGoogle Classroomのアプリを入れていろいろな活用をしています。ペースがバラバラなので、到達度や成果をどう見るかという話ですが、自分が作った授業のノートを写真に撮って、それを提出させるということをしています。Google Classroomを入れておくと、どこからでも提出することができるので、家で勉強した後送ってくる子もいます。

 

この生徒の場合は、プリントがカラーです。学校ではカラーのプリントは配っていないので、たぶん家でプリントアウトして貼っているのでしょう。このようにpdfでプリントを配信すると、カラーで見ることができます。これ一つを取っても大きなメリットがあると思います。

 

Google Classroom 上では、課題の提出状況も一目瞭然です。また、一人ひとりの授業のノートで何を勉強しているかというのを確認することができるので、個人の理解度が把握できるのも利点であると思います。

 

テクノロジーやアプリの知識より、生徒との関係性が重要

ICTを使った授業を作るポイントになるのは、テクノロジーだ、アプリだというよりも、やはり生徒との関係性をきちんと作ることだ、というのを一層感じるようになりました。また他の教科では、例えば今「情報」でもGoogle Classroomを使っていますが、「情報リテラシーに関してドキュメントで提出しなさい」とか「携帯電話、スマホのマナーのキャンペーンポスター作成をPhotoshopで行って提出しなさい」ということも行っています。また、本校は卒業アルバムの最後のページは生徒がPhotoshopで制作しているので、そのための写真をGoogle Driveに集約しています。

 

最後にGEGにつきまして。ICTを使い始めると、やはり仲間が欲しくなります。それで、仲間を作ろうと、昨年12月にGEG Kamakuraを立ち上げました。現在GEGは日本に8カ所あり、鎌倉は日本で3番目のグループです。立ち上げの勉強会は学校の隣の建長寺でさせていただきまして、結構な校数の教員が集まりました。その後、毎月のように鎌倉にある古民家を借りてGoogleの勉強会もしています。

 

現在私が最も力を入れようとしているのは、分野横断型の授業カリキュラムを作り、そこにICTをうまく組み合わせられないか、ということです。これについては、GEG Kamakuraのメンバーや、鎌倉にあるFabLab Kamakuraさんとも協力して作っていきたいと思っています。

 

教職員のこういったコミュニティも、単に勉強会だけでなく、家族ぐるみの交流のようなことも入れて楽しく活動しています。これからももっと教育を面白くするためにいろいろなことをやっていけたらと思っています。

 

 

◆となりの学校ではICT活用どうしてる、何してる

<導入>

羽衣学園高等学校 米田謙三先生

 

<実践報告>

iPadをフル活用して課題探求・グローバル教育の可能性を広げる

山梨英和中学校・高等学校 近藤美和先生

徹底したインフラ構築とオープンソースのシステムとで、ICT利活用の理想郷を作る

佐野日大中等教育学校 ICT教育推進室室長 安藤昇先生

 

<まとめ・質疑応答>

羽衣学園高等学校 米田謙三先生

 

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