研究

新課程における情報プレイスメントテスト

~学生の能力の実態を把握し、きめ細かな指導につなげる

帝塚山学院大学人間科学部情報メディア学科 高橋参吉先生



高橋参吉先生
高橋参吉先生

文部科学省「大学間連携共同教育推進事業」の「学士力養成のための共通基盤システムを活用した主体的学びの促進」に参加する8大学は、3大学協会(※1)と協力し、大学での基礎情報教育を見直す目的で、新入生を対象に教科「情報」プレイスメントテスト(レベル判定テスト)を行っています(※2)。そのプレイスメントテストの概要ならびに、この8大学の新入生約1000人の結果と比較しながら、帝塚山学院大学の新入生約400人の結果について報告します。

※1 8大学:千歳科学技術大学、山梨大学、愛媛大学、佐賀大学、北星学園大学、創価大学、愛知大学、桜の聖母短期大学、3大学協会:大学eラーニング協議会、日本リメディアル教育学会、日本情報科教育学会
 ※2  「情報」以外には、「英語」「日本語」「数学」「学修観」の3科目・1領域で作成・実施

情報プレイスメントテストの概要


情報プレイスメントテストの問題数は40問、1.~4.の選択肢に「わからない」を加えた5択問題です。学習指導要領(情報教育の3つの観点)に対応した問題数を表1、問題例を表2に示します。

表1 学習領域と問題数

学習領域(目標)

問題数

1.実践的・応用的な学習領域

 (情報活用の実践力)

12

2.系統的・基礎的な学習領域 

 (情報の科学的な理解)

15 

3.社会的・総合的な学習領域  

 (情報社会に参画する態度)

13 

 

表2 情報プレイスメントテストの問題例

問題

選択肢 

情報が持つ性質として,当てはまらないものはどれか. 

1.みんなが知っている情報は価値が高い

2.情報は複製が可能である

3.情報は伝達できる

4.情報は人により価値が異なる

不特定多数に公開するWebサイトを作成する際に注意する点として,最も適切でないものはどれか.

1.作成者の個人情報を明示する

2.定期的に更新する

3.目的に合ったWebサイトを作成する

4.更新年月日を明示する  

パスワードの設定や管理に関する記述のうち,最も適切なものはどれか.

1.管理者から要求があっても教えない

2.文字数はなるべく少なくする

3.氏名や生年月日をパスワードにする

4.忘れないようにメモしてパソコンのモニターに貼っておく

コンピュータウイルスの感染経路に関する説明として,適切でないものはどれか.

1.Webサイトを閲覧するだけでは感染しない

2.USBメモリをコンピュータに差し込むだけで感染することがある

3.添付ファイルがついていない電子メールでも閲覧するだけで感染することがある

4.映像端子を用いてプロジェクタに接続するだけでは感染しない

正答率の低い問題はほとんど変わらない


以下は、参加8大学と帝塚山学院大学で正答率の低かった問題5問と、その5問に対する帝塚山学院大学の学生の選択肢別の解答率です(表3)。

表3  正答率の低い問題(8 大学の例)と解答の分布(本学の例)
*数値は本学約400名の例で,正答率の低い問題は,まったく同じである。

目標

問題

選択肢1(正答)

選択肢2

選択肢3

選択肢4

選択肢5

情報活用の実践力

1 一次情報の収集手段として当てはまらないものはどれか。

新聞や書物による収集

 

29

インタビューによる収集 

 

19

アンケート調査による収集

 

14

実験データの収集

 

 

30

わからない 

 

 

8

情報の科学的な理解


 
 

 


 

2 10進数の42進数で表したものとして,正しいものはどれか。

0100

  

27

0111

  

18

1000

 

22

1111

 

14

わからない

19

3 連続的に変化する量を,離散的な量で表すことを何というか。

ディジタル化 

22

アナログ化 

9 

バイト化 

 

31 

ビット化

 

33 

わからない 

6 

情報社会に参画する態度


 

4 情報科の進展により普及した情報システムの例として,適切でないものはどれか。 

URL

 

18

ETC

 

13

ATM

 

27

POS

 

33

わからない 

9

5 待ち合わせ場所を案内するために,友人に地図情報を伝えたい。その際利用するものとして,最も適切でないものはどれか。

音声電話

 

18 

電子メール 

27

SNS

 

33 

FAX

 

21 

わからない 

1 


 

各大学での実施方法や時期など異なる点もありますが、正答率の低い問題は、大学や学科による大きな差はなく、いわば「どの学生も押しなべてできなかった問題」ということができます。

 

例えば、「十進数の 4 を二進数で表したものとして正しいものは何か」(正解 0100)は、正答率が低いだけでなく、「わからない」と答える学生が各校ともかなりいました。つまり、二進数とは何か、ということがわかっていないということです。この程度は、基礎知識として知っていてほしいと思います。「情報化の進展により普及した情報システムの例として適切ではないものはどれか」(正解 URL)は、「情報システム」の意味が理解できていないから答えられないのかもしれません。

 

このプレイスメントテストは、大学において、学士力に関わる共通基盤的な教育要素、すなわちテスト結果を活用して、教材、モデルシラバス、到達度テストなどの作成や改善のためになされたものです。また、英語で既にプレイスメントテストをもとにしたクラス編成や指導が行われているのと同様、情報においても、習得度に応じたきめ細かい指導のために、今後ますますこのようなプレイスメントテストが必要であると言えます。今回の結果を踏まえながら、プレイスメントテストの内容についても充実させていきたいと思います。


一方、大学の情報教育で、高校入学時レベルの補習教育から始めなければならない部分もあります。プレイスメントテストの結果を高校と共有しつつ、高校での情報科教育の在り方、大学における情報教育の在り方、さらに、高校から大学への接続性について、改めて考えていく必要があると思われます。

 

※本記事は、日本情報科教育学会第6回全国大会(2013年6月29日・30日、東海大学 高輪キャンパスにて)での発表でお話しされた内容です。