【授業事例5】

キャリア教育と「情報」の授業を連携させて、「情報」の活用力を実践させる

横浜清陵総合高等学校 


「産業社会と人間」と情報の授業を連携

横浜清陵総合高等学校
横浜清陵総合高等学校

横浜清陵総合高等学校では、総合学科の必履修科目である1年次の「産業社会と人間」に加えて、2年次に独自科目として「コミュニケーション」、さらに「情報」の授業を絡めることで、職業観を養うと同時にコミュニケーション力を育成する効果的なキャリア教育を行っています。


「産業社会と人間」では、事業所見学や社会人講話などの授業を通して、職業観を養いながら将来の進路について視野を広げていきます。これら体験授業の後には必ずグループ発表を行い、1年の終わりには学年全体での「産人発表会」を開催し、発表力も身につけていきます。ここに、「情報」の授業を連携させ、キャリア教育のみならず、「情報」の授業に意義を持たせ、生徒のモチベーションを高めています。


情報の授業を担当する五十嵐誠先生に、連携について説明していただきました。

 

五十嵐誠先生
五十嵐誠先生

「(平成24年までは)1年生は情報機器の活用が中心の『情報A』か、コンピュータの機能、仕組みまで踏み込む『情報B』のどちらかを選択するのですが、『産業社会と人間』で使う資料やポスター、報告のレポートなどの作成を、この情報の授業と絡めて行います。


例えば事業所見学の授業に際しては、「情報A・B」ともに、事前にはしおり作りを行います。また、事業所見学の報告会の後、プレゼンの振り返りとして、個人発表のビデオクリップから各自のベストシーンを探してキャプチャし、このキャプチャ画像とスライドの画像を使って記録を作ります。


この記録は、校内webで閲覧できるようになっています。このような記録の作成を通してITのスキルを高めるとともに、他の生徒の事業所見学報告を閲覧することで職業観・社会観をひろげることにもなります。

 

さらに、『産業社会と人間』では1年生を3会場に分け、5名ほどのグループ単位で発表しますが、『情報A・B』でもクラス20名の前で個人発表をさせ、生徒のモチベーションを高めて2年次の『コミュニケーション』につなげています。また、発表時には表情も大切だということをわかってもらうため、この発表会では、発表者の表情を映すモニターも設置し、臨場感あふれる会場にしています」

 

情報科目のDTP系科目を履修している生徒が作った学内行事のポスター
情報科目のDTP系科目を履修している生徒が作った学内行事のポスター

情報の授業で演習する機会は多くても、仮想のテーマであったり仮想の問題解決であったりして、リアリティを持たすことがなかなか難しい中、情報で学んだことが実際にどのように役に立つのか実践を通して理解するのに、キャリア教育と連携した授業は大変有効です。自分の進路や将来に関係するテーマですから、生徒の意欲は高く、その中で「情報」の知識やスキルを高めたり、応用させたりする機会を作ることができます。情報の授業になかなか意義を見出せない生徒たちにとって、情報の授業で得た知識やスキルをすぐに活用できることは、授業へのモチベーションにもなるでしょう。情報と他の授業との連携は、総合学科だけでなく普通科でも参考になる事例と言えるでしょう。

 

社会人へのインタビューでコミュニケーション力・プレゼン力を育成する

2年次の「コミュニケーション」は、1年次の「産業社会と人間」の発展科目として設置され、メインは11月に行われるインタビュー実習です。

 

1学期に「聞き方・話し方」の基礎、質問方法や取材内容のまとめ方を学びます。インタビューする社会人は、生徒自身の興味や関心に応じて決め、夏休みの間に電話をかけてアポイントを取ります。


「電話でのアポ取りは、前期に学んだコミュニケーションスキルを実践する最初の関門です。これは夏休み中の課題ですので、私たち教員はサポートしません。生徒は大きな緊張を強いられますが、着実に成長している様子が見られます。インタビュー先はさまざま。たとえば、海上保安庁にインタビューして、真剣に公務員試験をめざすようになった子や、国立科学博物館へのインタビューを通して生物学の面白さにめざめ、東北大学に入った子など、将来の進路を決めるうえでの重要な経験になっているケースも数多く見られます」(五十嵐誠先生)

 

岡崎珠苗校長
岡崎珠苗校長

「2年次にインタビューに行くことで「自分はこの職業に向いていない」と気づくことができるのは、大きな成果だと思います。こういう体験は高校時代にしておくべきだと思います。また、本校の生徒たちは、体験を通して伝えたいことがあるから、どのように伝えるかを自分で考え、その結果としてプレゼン能力が育っているのです」(岡崎珠苗校長)

 

全体発表会の様子
全体発表会の様子

「コミュニケーション」授業のインタビュー実習後は、まずクラス内の報告会で発表し、同級生による投票で選ばれた生徒が学年全体の報告会で発表することになります。発表は1人3分間、パワーポイントもメモも使わず、口頭のみで行います。「口頭のみでの発表は、一番難易度が高いんです。1年次の『産業社会と人間』では基礎的スキルとして模造紙やパワーポイントを使った発表を行い、そこで度胸をつけさせたうえで、この2年次の『コミュニケーション』につなげています」(五十嵐先生)

 

発表した生徒に聞く

●木南友里さん
「コミュニケーション」の授業を受けたことによって自分が成長していると感じます。人前で話すのが小さな頃から苦手だったのですが、清陵では人前で話す機会が本当に多いので、だんだん言いたいことがすんなり言えるようになってきました。
私は保育士になりたいとずっと思っていましたが、インタビューを通して、自分には向いてないかもしれないと思うようになりました。そして、新しく見えた道はキャビンアテンダントです。これまで「英語があるから無理だ」と決めつけていましたが、インタビューをしたことで考え方が変わり、頑張ろうという気持ちが出てきて、前向きに考えられるようになりました。

 


●磯崎航くん
「コミュニケーション」の授業を受けて、言いたいことを言うだけではなく、「こういうふうに言ったときに相手は答えられるのだろうか?」ということも考えるようになれました。インタビューをしたフランス料理店の総料理長は、地元の学校が同じで、小5のときに学校でお話を聞いて以来、憧れていた方でした。その話をしたら「同じ学校だったのか」と感動してくださいました。
これまでは大学に行こうと考えていましたが、インタビューを聞いて、調理師の専門学校に行くことを決めました。やらなければいけないことがわかってきたので、3年生では、「健康ライフ」という栄養学と調理の授業や、野菜について学べる「生活園芸」をとろうと考えています。フランスにも留学したいので、英語はもっと頑張らなければと思っています。

 


●大前智之くん
「コミュニケーション」の授業を受けてから、人前で話すときには「どういう言い方で表現すれば相手にうまく伝わるか」ということを考えるようになりました。先輩からは「コミュニケーションの授業は最初は楽しいけど、レポートを書いたりするのは辛い」と聞いていたんですが、興味のある職業の人に聞いたので、インタビューも報告書も進んでやれました。
僕は、せっかくインタビュー実習という授業があるのなら普通は話せない人に話を聞きたいと考え、埼玉西武ライオンズの長田選手に会いに行きました。長田選手は慶應義塾大学出身。「勉強はすごく大事だ」と言われたことが強く心に残っています。今は部活で精一杯で将来を考える余裕がなく、何をやりたいかはまだ決まっていないのですが、勉強はきちんとしなければいけないと思いました。