【授業事例13】

プレゼンの学習を通して「伝える力」を身につけることが情報教育の大きな柱

暁高等学校 舘 岳彦先生


三重県四日市市に位置する暁高等学校は、幼稚園から大学までを有する総合学園の学校法人暁学園の3年制高校です。学園綱領である「人間たれ」という共通の教育理念のもとに、多くの子供たちが教育を受けています。暁高等学校の生徒数は各学年300名前後で、ほぼ全員が大学などに進学します。

 

モラル、著作権に関する知識と、officeソフトの基本操作を身につける

舘 岳彦先生
舘 岳彦先生


昨年度(2012年度)の2年生の「情報A」の授業展開について紹介いたします。「情報A」では、2時間連続授業を行い、プレゼンテーション能力の育成を大きな柱にしていました。


1学期は座学でモラルや著作権などを、実習ではofficeソフトの基本的な利用方法を教えます。5月の終わりから6月にかけて、1回目のプレゼンを行います。4人くらいのグループに分かれて、テーマを「福祉」「環境」「情報化社会」「国際」「科学技術」「現代の日本社会」の6つから選び、パワーポイントを用いて持ち時間の約5分で発表します。各班でテーマの中で具体的な発表内容(例えば、環境をテーマにしたグループは、原発やエコカーなど)を決め、単なる説明にならないように、伝えたいものを必ず発表するように指導しました。

 

ワードやホームページビルダーの操作を覚えながら、修学旅行の思い出を記録

生徒が作成したプレゼン資料「基地と安保」より抜粋


生徒が作成したプレゼン資料「沖縄の暮らし」より抜粋


2学期は11月に沖縄修学旅行があるため、事前にワードでしおりを作成するほか、「自然」「文化芸能」「暮らし」「抱えている問題」「戦前の歴史」「沖縄戦」「基地と安保」の7つのテーマをもとに、グループごとに発表させていました。


流れとしては、まずは夏休みの宿題として沖縄を題材にした1枚のパンフレットを、各自にワードで作らせます。写真なども貼り付けて、「一目でイメージがつかめるようなものを」と指導しています。これを文化祭で展示し、意識付けをしたうえで、グループごとのプレゼン作業に入っていきます。今回も4人ぐらいの人数で作業しクラス内で発表します。内容が良いグループは、修学旅行前日に行う事前指導の場で、クラス代表として学年全員の前でも発表します。全員が沖縄について2回の発表を聞くことが出来るので平和学習や沖縄についての事前学習としても大変有効なものになっていると思います。

 

旅行を終えたあとは、ホームページビルダーを使って、修学旅行のHPも作成します。あらかじめデジカメをクラスに1台ずつ渡して、班内の情報係を中心に「学園から那覇空港までの様子」等の班ごとに撮影場所を決めておき、このデータをもとにHPを作っていきます。班ごとに撮影者を変えることで、HPに使われる画像に多くの生徒の画像が使われることになります。

 

1年間のがんばりを、親や先生の前でプレゼン

 

3学期の座学では情報化の歴史やネットワークの基本などを教え、実習では総合的な学習の時間と連携し、「保護者会プレゼン」を行いました。高2の1年間の反省や頑張ってきたこと、高3での目標(特に進路目標)などを、自分の親と担任の先生に向けて発表します。このプレゼンは個人ごとに行い、各自3〜5分を使っています。ここでは、文字や数字だけでなく成績推移や学習時間などの「グラフ作成」を指導し、一歩進んだ説得できるプレゼンが出来るように工夫させています。

 

この授業では何よりもまず、「伝える力」を身につけさせたいと考えています。2学期まではグループ作業をしているので、途中段階ではいろんな意見が出ますが、最終的に1つにまとめていく過程を通して、「自分たちは何を伝えたいのか」ということを、掘り下げて考えさせることはできています。ただ、「どのように相手に伝えるか」という点に関しては、現状ではスライド作成にまでしか時間がとれず、プレゼン時に必要な話術の指導には手が回っていないのが現状です。この辺りが今後の課題と考えています。

 


参考:副教材として授業内で使用
・数研出版「これだけ!著作権と情報倫理」
・実教出版「ニュースタンダード情報」
・フリータイピングソフト「Ozawa-Ken」
・自作のプリント、自作のパワーポイント
※「情報モラル」「情報セキュリティ」については、数研出版「これだけ!著作権と情報倫理」を使って、独自プリント・パワーポイントで座学