はたらく人に聞きました vol.2

世界中に買い物文化を

[卸売・小売業/情報ビジネス業編]

インターネットを武器に、日本人が、世界中に「買い物」の楽しさと、それを通した豊かさを広める開拓者になった。

一見 仁さん

楽天株式会社 楽天市場サービス開発・運用部 プロダクトマネジメントグループ


<1>インターネットでインドネシアに、新しいショッピングの場を作る

——まず、一見さんの仕事を教えてください。

 

グローバル時代の現在、GoogleやFacebookのようなIT企業のグローバル展開も著しいものがあります。ITは世界共通の技術ですから、IT技術で世界を相手にするビジネスを興すなど、世界を駆け回る仕事は夢ではありません。

 

ただ、日本のIT企業で世界進出できている企業は多くはありません。楽天は、日本の数少ないグローバルIT企業と言えるでしょう。インターネット上のショッピングモール運営を中核事業とする楽天は、欧米やアジアの様々な国でネットショッピングを広めようとしています。

 

私自身はアジア展開の中核となるインドネシアでインターネットショッピングモールを作る仕事に携わりました。インドネシアは、人口も多く、経済発展も著しい国です。しかしそれに物流網や販売網の発達が追いつかないため、人々は欲しい商品を信頼できる店からすぐに買いたいと望んでいます。首都のジャカルタでは交通事情が悪く渋滞が慢性的で、買い物に行くのも一苦労です。そんな国だからこそ、楽天はインターネットショッピングを展開したいと考えたのです。

 

現地に合った仕組み作りが、グローバルに成功する鍵

 ——インドネシアで苦労したことはありますか?

グローバルな展開と言っても、世界共通という意味ではありません。大事なことは「国の事情を踏まえる」ことです。

海外に旅行した際、料金メーターがないタクシーに乗ったら高額の料金を請求されたといった話を聞くように、日本と同じようには安心できない国は世界にはたくさんあります。インターネットモールも同様に、モールにお店を開く店舗と、買い物する人の両方が安心して売買できる環境をどう作ったらよいのかに苦労しました。

インドネシアの場合、代金の未払いや商品の未着などのトラブルが起きないように、商品の受け渡しと代金の支払いに楽天が介在するという仕組みを考えました。まず、商品の購入者は代金を楽天に支払います。楽天が代金を受け取ったのを確認してから、店舗が商品を発送します。そして商品が購入者に到着したことを楽天が確認し、楽天が店舗に代金を支払うことにしたのです。

また、インターネットショッピングではクレジットカードでの支払いや銀行振り込みのほかに、宅配時に宅配業者が代金を回収する「代引き」というサービスがあります。日本ではこの仕事を宅配業者が受け持っているのですが、インドネシアでは宅配のドライバーが商品や受け取ったお金を持ち逃げしてしまう心配があるため、これも楽天自身が行うことにしました。この業務設計には、大学時代にしていた運送会社でのアルバイト経験がとても役に立ちました。

日本では、ネット通販ではすでにあるクレジットカード会社と宅配業者を利用しますが、海外では支払いや運送の役割も含めてショッピングの環境を整えることから考え、情報システムもそれに応じて開発する必要があるのです。

これら2つの仕組みは、他の新興国にも応用できるので、次に着手したマレーシアでの事業でも活かされています。